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【レース感想】ツール・ド・フランス2021 第11ステージ

ファンアールトという脚質

ツール・ド・フランスを象徴する名峰の一つ、「プロヴァンスの巨人」ことモン・ヴァントゥ。

第11ステージは、この「死の山」や「魔の山」とも称される険しい山をなんと2回も登るという、今大会の目玉ステージ。

 

2回のモン・ヴァントゥの前にも4級山岳が2つと1級山岳が1つ登場する厳しいレイアウトに対して、先陣を切って立ち向かっていったのは世界王者ジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ)。

山岳ポイントを稼ぎたいナイロ・キンタナ(アルケア・サムシック)を振り切り、4級山岳と中間スプリントポイントを先頭通過していく。

2つ目の4級山岳ではダニエル・マーティンイスラエル・スタートアップネーション)、アントニー・ペレス(コフィディス)、ピエール・ローラン(B&Bホテルス P/B KTM)がアラフィリップに合流。

1級山岳を超えて1回目のモン・ヴァントゥの手前では、更に追走が13人追いついてきて、先頭は17人に膨れ上がる。

 

メイン集団から5分ほどの猶予をもらった先頭集団は、モン・ヴァントゥに突入するとたちまち人数を減らしていく。

1回目の「死の山」を先頭で生き残ったのは、アラフィリップ、ペレス、ケニー・エリッソンド(トレック・セガフレード)、ジュリアン・ベルナール(トレック)、ワウト・ファンアールト(チーム・ユンボ・ヴィスマ)、ルーク・ダーブリッジ(チーム・バイクエクスチェンジ)、クサンドロ・ムーリッセ(アルペシン・フェニックス)の7人のみ。

 

2回目のモン・ヴァントゥの登坂では、早々にダーブリッジ、ペレス、ムーリッセが脱落、そして追走集団からバウケ・モレマ(トレック)が合流して、トレックはエリッソンド、ベルナール、モレマの3人を先頭に揃える事に。

トレックはその数の利を活かして、ベルナールによる全力牽引からエリッソンドがアタックを仕掛けて、独走を開始!

2013年にはブエルタ・ア・エスパーニャの名峰「アングリル」を制した小柄なクライマーが、ツールの名峰にもその名を刻もうとひた走る!

 

エリッソンドの独走に「待った」を掛けたのは、なんと前日のスプリントステージで2位に入っているファンアールト。

アラフィリップとモレマという実績十分な登坂強者をマイペース走法で静かに突き放し、あっと言う間にエリッソンドに合流。

ファンアールトはそのままハイペースを維持、追いつかれたエリッソンドは後方にモレマが残っているという大義名分で、頑なに前に出ずにファンアールトの背中に張り付く。

「力を温存したエリッソンドがどこで仕掛けるかな…」なんて思いながら見ていると、フィニッシュまで残り33.1km、山頂まで11.2kmも残した地点で、なんとファンアールトがエリッソンドを突き放して独走を開始…!?

一昨年・昨年とツールでスプリント勝利を上げた大柄な選手が、モン・ヴァントゥの勾配が厳しい区間で小柄なピュアクライマーを突き放していくという、異常事態。

「脚質ファンアールト」、ここに極まれり。

ファンアールトはそのままTT巧者らしく、淡々との自分のペースで登り続ける。

対するエリッソンドは、アラフィリップを突き放したモレマと合流して2人での登坂になるけれども、徐々にファンアールトとの差は広がっていく。

 

一方、先頭から4分以上後方のメイン集団は、イネオス・グレナディアーズの牽引でかなり人数を減らしている状況。

第9ステージの大逃げで総合2位にジャンプアップしたベン・オコーナー(AG2Rシトロエン)は山頂まで残り9km地点で遅れ始め、その直後にはギヨーム・マルタンコフィディス)も遅れてしまう。

この時点でメイン集団に残っているのは、イネオス勢がリチャル・カラパス、ミハウ・クフィアトコフスキ、リッチー・ポートの3人、総合リーダーのタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)はラファウ・マイカがなんとか残ってくれているのみ、そして他の総合エース達…ウィルコ・ケルデルマン(ボーラ・ハンスグローエ)、アレクセイ・ルツェンコ(アスタナ・プレミアテック)、エンリク・マス(モビスター・チーム)、リゴベルト・ウラン(EFエデュケーション・NIPPO)、ヨナス・ヴィンゲゴー(ユンボ)は、既に単騎になってしまっている。

 

ポート、マイカ、そして最後まで全力で先頭を牽き続けたクフィアトコフスキと、アシストも順次姿を消していき…クフィアトコフスキとほぼ同時に遂にマスまでも遅れ始める。

いよいよサバイバルな展開になってきて山頂まで残り2km、ここでアタックを仕掛けたのはヴィンゲゴー!

すぐさまポガチャルが反応、少し遅れてカラパスとウランが追いかける、そしてケルデルマンとルツェルンコは動けない…!

ヴィンゲゴーとポガチャルはそのまま快調に登り続け、このまま山頂まで2人で行くかと思った矢先、なんと山頂まで約1kmを残してポガチャルがヴィンゲゴーから離されていく!?

今大会ここまで圧倒的な強さを見せていたポガチャルが、初めてライバルから遅れを喫している!!

ただ、ポガチャルはヴィンゲゴーから30秒遅れ程に留め、カラパスとウランが山頂までにポガチャル追いつけない…という事は、ヴィンゲゴーがもの凄く強いという事か。

 

山頂は、独走しているファンアールトが先頭、1分15秒遅れてエリッソンドとモレマ、そこから30秒離れてヴィンゲゴー、更に30秒遅れてポガチャル、そしてその数秒後方にカラパスとウラン、という順番で通過。

そこからフィニッシュまで23kmのダウンヒル、先頭のファンアールトと追いかけるトレックの2人の差は、殆ど動かないまま推移していく。

ファンアールトはそのまま危なげなくフィニッシュ地点までたどり着き、立漕ぎのまま両手でガッツポーズしてフィニッシュ!!

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ファンアールト、まさかまさかの「モン・ヴァントゥ」ステージ制覇!!
2019年・2020年のツールではスプリントで勝利を上げ、個人TTのベルギー王者になり、そしてモン・ヴァントゥを制するとは…!

改めて、意味が分からない。

その異次元の万能性を誇る脚質は、まさに唯一無二の存在だ!

 

一方の総合争いは、まずはポガチャルが落ち着いてカラパスとウランを待ち、3人でヴィンゲゴーを追いかけ始める。

ヴィンゲゴーと3人のタイム差はじわじわと縮まっていき、結局4人が同タイムでのフィニッシュに。

ただ、この日ヴィンゲゴーが見せた可能性、そしてポガチャルが見せた隙は、今後の展開を面白くしてくれる要素なのは間違いない。

ツールもやっと折り返し、後半もきっと面白くなる。