フランスの星、復活の狼煙
残り68km地点のとんでもない激坂(距離2.9km・平均勾配13.5%)を超えて、最後は1級山岳フィニッシュとなる第14ステージ。
ただ、最後の1級山岳のレイアウトが意外と緩いので(距離14.4km・平均勾配6.3%)、山頂フィニッシュの山岳ステージの割にはあまり総合が動かない可能性も…?
この日の逃げは18人とまずまずの人数、そして結構いいメンバーも入っている。
ロマン・バルデ(チームDSM)、トム・ピドコック(イネオス・グレナディアーズ)、クレモン・シャンプッサン(AG2Rシトロエン)、マシュー・ホームズ(ロット・スーダル)、ヘスス・エラダ(コフィディス)といった登れる選手に加えて…何故かアルノー・デマール(グルパマFDJ)の姿も。
デマールは1級山岳を超えた後の中間スプリントポイント狙いか?
メイン集団を牽引するチーム・ユンボ・ヴィスマは緩いペースを刻み、逃げに早々に10分以上のタイム差を与えて完全に逃げ切り容認モードに。
その厳しさで注目を集めていた残り68km地点の1級山岳は、意外にも…と言うかやっぱりフィニッシュまで遠すぎたせいか、逃げ集団もメイン集団も大きな影響を受けることないまま通過していく事に。
この1級山岳と手前の3級山岳は、どちらもバルデが先頭で通過して山岳ポイントの獲得に成功。
バルデはダミアーノ・カルーゾ(バーレーン・ヴィクトリアス)を抜いて、山岳賞争いのトップに躍り出た!
バーレーンはカルーゾを逃げに乗せなかったという事は、総合6位につけているジャック・ヘイグを守る事を優先させたという事か。
まぁ、総合にガチなメンバーで挑んでいるバーレーンとしては、当然と言えば当然の判断な気はする。
長いダウンヒルを終え、中間スプリントポイントではなんとか生き残っていたデマールが4位通過して、13ptを獲得。
この先は先頭から遅れていく事になったデマールだけれども、1級山岳も意外と頑張って登り、メイン集団より前の15位でフィニッシュ地点まで帰ってきた(ここでも1pt獲得した)のは結構驚かされた。
最後の1級山岳に突入する前のアップダウン区間で、逃げ集団では色々と動きが発生。
ニコラス・プリュドム(AG2Rシトロエン)とダニエル・ナバーロ(ブルゴスBH)の2人が少し飛び出す中、追走集団でジェイ・ヴァイン(アルペシン・フェニックス)が補給の際にチームカーと接触して転倒してしまう…。
膝のあたりがかなり傷んでいた様子のヴァインだったけれども、意外にもすぐさまレースに復帰して…大丈夫なのか?
残り30km辺りでホームズとセップ・ファンマルク(イスラエル・スタートアップネーション)が追いつき先頭は4人に。
残り27kmで一旦追走が先頭に追い付くけれども、カウンターでプリュドム、ナバーロ、ファンマルクの3人が飛び出して再び少しギャップを作る事に成功。
しかしその直後、オーバースピードでコーナーに入っていったナバーロが曲がり切れずにファンマルクと接触してしまい、2人は落車…。
幸い、2人はそこまで大きなダメージではなかったけれども、先頭はプリュドム単独になる。
プリュドムそのまま単独で最後の1級山岳の入り口に到着し、追走とのタイム差は1分10秒ほど、メイン集団は13分以上後方になっている。
追走は1級山岳に入ると脱落者も出しながら、まずはアンドレイ・ツェイツの抜け出し、その後方でバルデとピドコックのアタック合戦、そしてなんとそこに落車で遅れていたヴァインが驚きの合流を果たす!
ヴァインは合流しただけでも驚きなのに、アタックも見せるなどもの凄いタフさを披露!
ケガの具合が心配ではあるけれども、凄いな…。
残り7.4kmでピドコックがアタックを仕掛けると、直後にバルデがカウンターアタックを仕掛けて、抜け出しに成功!
バルデはもの凄い勢いで前との差を縮めていき、ツェイツが先頭のプリュドムに追いつこうかというタイミングでバルデもそこに追いつき、そしてそのまま抜き去って独走を開始!!
快調に1級山岳を駆け上がるバルデと対照的にプリュドムとツェイツは失速して、2人は追走のエラダとヴァインに追いつかれてしまっている。
バルデはそのまま頂上まで快走!!
最後は右腕を高々と掲げながら笑顔でフィニッシュ!!
バルデ、自身初となるブエルタでのステージ勝利!!
ステージを争っていたライバルに格の違いを見せつける、その強さ!
強いバルデが帰ってきた!
今年のジロ・デ・イタリアでも総合7位と復調の兆しは見えていた中で挑んだ今回のブエルタは、残念ながら序盤の落車でタイムを大きく失い、総合争いからは早々に脱落してしまっていた。
それでもしっかりと目標を切り替え、山岳ステージで強さを見せつけてのステージ勝利!
そしてこれで山岳ポイントを50ptまで伸ばして、2位のカルーゾに19pt差を付けての山岳賞首位に!
更に、チームDSMとしてもこれで今大会ステージ3勝目!
快進撃は止まらない!
10分以上後方のメイン集団は、ギヨーム・マルタンによるマイヨロホ獲得を目論むコフィディスや、ジュリオ・チッコーネのジャンプアップを狙うトレック・セガフレードが仕掛けたりはしたけれども、これらの動きはユンボがしっかりと封殺。
残り3km辺りからは総合5位のミゲルアンヘル・ロペス(モビスター・チーム)が飛び出して、一時は20秒程のタイム差を稼いだようにも見えたけれども、ユンボはしっかりとペース走法でその差を詰めていき、結局フィニッシュ地点でロペスが稼げたタイムは僅か4秒と、アタックは実質不発に終わってしまった。
ただ、このロペスを追いかけたユンボ(と言うかアシストのセップ・クス)のペースはかなり速かったみたいで、ロペスの4秒後にフィニッシュできたのはプリモシュ・ログリッチ(ユンボ)、エンリク・マス(モビスター)、エガン・ベルナル(イネオス)、ヘイグの僅か4人のみ。
このログリッチたちのグループから、12秒遅れでアダム・イェーツ(イネオス)、16秒遅れでアレクサンドル・ウラソフ(アスタナ・プレミアテック)とチッコーネとマルタン、そして20秒遅れでマイヨロホのオッドクリティアン・エイキング(アンテルマルシェ・ワンティゴベールマテリオ)がフィニッシュ。
エイキングは少しタイムを失いながらも、なんとか粘ってマイヨロホの防衛には成功している。
2週目の最終日となる第15ステージは、中盤以降に1級・2級・1級・3級とカテゴリー山岳が登場する山岳ステージ。
総合争いだけでなく、ステージ争いや山岳賞争いも絡んだ激戦になるかもしれないので、楽しみだ。
更に言えば、ベルナルも少し調子を取り戻してきているみたいで…楽しみだ。