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【レース感想】ブエルタ・ア・エスパーニャ2021 第13ステージ

ドゥクーニンクは「狼の群れ」である

第13ステージは、2週目に入って初めての平坦ステージ。

 

今大会の平坦ステージのトレンドなのか、この日もカテゴリー山岳は一切なしという事で逃げるメリットが少なく、これまた今大会お馴染みの光景となった3つのプロチームによる逃げ、ブルゴスBH、カハルラル・セグロスRGA、エウスカルテル・エウスカディから1人ずつの計3人の逃げが形成される。

メイン集団はドゥクーニンク・クイックステップ、グルパマFDJ、チームDSMといったスプリントチームがしっかりとコントロールして、逃げに最大でも2分台のリードしか与えない。

 

メイン集団は残り60km辺りで横風分断が発生するけれども大した被害にはならず、しばらくすると再度一つに合流。

その後は特に大きな動きもなく、残り29km辺りで逃げが吸収される。

 

少し意外だったのは、残り12km地点というフィニッシュに近すぎる位置に設定された中間スプリントポイント。

特に先着争いは起こらずにマイヨプントスを着用するファビオ・ヤコブセン(ドゥクーニンク)が先頭で通過しただけではなく、他のスプリンターはポイント入手圏内の5着にも入らない。

…う~ん、ヤコブセンとポイント賞を僅差で争っていたジャスパー・フィリプセン(アルペシン・フェニックス)がリタイアした結果、もうポイント賞争いの差が開きすぎているからか…。

ステージ開始前の時点でヤコブセンが180pt、2位のマグナス・コルト(EFエデュケーション・NIPPO)が114ptで、しかもコルトは平坦ステージでのスプリントはかなり分が悪いだろうからなぁ…。

何にせよ、ヤコブセンは労せずに20ptを獲得して、着々とポイント賞獲得に近づいていく。

 

残り5km辺りから、6枚のアシストを残すドゥクーニンクのトレインが先頭で主導権を握りながらスプリントモードに突入。

アルペシンはエースのフィリプセンを既に失い、グルパマも最終発射台のジャコポ・グアルニエーリが去っていて、ドゥクーニンクの優位を崩せるチームが、正直言って…いない。

ドゥクーニンクの全開牽きが強力すぎて、残り2.8kmのラウンドアバウトを通過した際に、なんと集団が分裂してしまう事態に。

ドゥクーニンクはそのまま猛牽引を続け、残り2.3km辺りでその分裂は決定的な大きさに広がってしまい、先頭は16人に絞られる!!

残り1.8km、先頭は更に絞られ、ドゥクーニンクがエースのヤコブセンを含めて4人、アルペシンがサッシャ・モドロを含めた3人、そしてUAEチームエミレーツのマッテオ・トレンティンと、僅か8人のみ!

「どうあがいたってドゥクーニンクしか勝たん…」みたいな状況だと思ったその直後、なんと残り1.6kmでヤコブセンが踏みを止めている…!?

まさかまさか、ヤコブセンここで失速!?(メカトラとの報道もあったけれども、レース後の本人のコメントで「純粋に脚が残っていなかっただけ」との事)

ただ、もうフィニッシュまで距離が残っていないのでドゥクーニンクはヤコブセンを切り捨てて、そのまま先頭でペースを緩めない!

このヤコブセンとドゥクーニンクの動きで大きな被害を受けたのは、ヤコブセンの後ろに張り付いていたアルペシンの3人。

突如生まれた予期せぬギャップを慌てて埋めにいくけれども、そこでかなりの労力を費やしてしまう事に。

残り1kmを切って、後続も少し追いついてきたけれども、ドゥクーニンクが相変わらず先頭で主導権を握りったままの状態。

残り500m、早めに飛び出したのはアルペシンのアレクサンダー・クリーガー

ただ、後ろにエースのモドロが付いてきていないぞ…?

ドゥクーニンクは、最終アシストとなったベルト・ファンレルベルフのリードアウトから発射されたフロリアン・セネシャルが、このクリーガーの早すぎるアタックの背中を冷静に捉え、その後ろにはトレンティンが張り付いている。

クリーガーは残り200m付近で踏みを止めると同時に後ろを振り返るけれども(やっぱりモドロをリードアウトしているつもりだったか…)、乱戦で力を使い果たしていたモドロはそこにはいない…。

そんなクリーガーをセネシャルとトレンティンが悠々と抜き去り、スプリントを開始!

後方からはアルベルト・ダイネーゼ(DSM)も追いかけてくるけれども、流石にこれは遠すぎて届かない!

トレンティンがセネシャルの横に並んでくる!

セネシャルも前を譲らず、2人が横並びでのフィニッシュ!!

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大荒れのスプリントを制したのは…セネシャル!!

ヤコブセンを直前に失っての「代役」エースながら、実力者のトレンティンを見事に下して見せた!!

何というか、ドゥクーニンクの凄さが改めて分かったスプリントだったと思う。

残り5kmから圧倒的な支配力を見せたチーム力はもちろん、ヤコブセンで勝負ができないと判断してからも素早くプランを立て直す柔軟性と連携力、そして急遽の代役の筈なのにしっかりと勝ち切るセネシャルという「駒」を残せている層の厚さ…。

本当に色々な意味で、ドゥクーニンク恐るべし。

やはりこの「ウルフパック」こそが、最強のスプリントチームだ!