ポイント賞をその手に
3週目の初日となる第16ステージは、今大会最後の集団スプリントになるかもしれない平坦ステージ。
スタート直後にいきなり落車が発生して、ジュリオ・チッコーネ(トレック・セガフレード)、セップ・ファンマルク(イスラエル・スタートアップネーション)、ルディ・モラール(グルパマFDJ)の3人がリタイアとなってしまう…。
グランツールに初めて単独エースとして出場して総合12位にランクインしていたチッコーネ、期待していただけにちょっと残念だなぁ。
というか、チッコーネはこれでグランツールに8回出場して4度目の途中リタイアなのか…。
いきなりのトラブルもありつつ、この日の平坦ステージでの逃げを選択したのは5人の選手たち。
しばらくすると更に1人が追走を仕掛けて合流し、最終的に6人の逃げ集団が形成される事に。
メイン集団はドゥクーニンク・クイックステップ、グルパマFDJ、チームDSMといったスプリントでの勝利を狙うチームが牽引して、逃げとのタイム差を2分以内にコントロールしながらレースは進んでいく。
このまま平穏にスプリントに向かうのかと思っていたら、残り55km辺りのカテゴリーの付いていない登りで、UAEチームエミレーツがペースアップを敢行!
集団は2つに分裂し、なんとポイント賞ジャージを着用するファビオ・ヤコブセン(ドゥクーニンク)が後方に取り残されている!?
ドゥクーニンクはアシストの猛牽引でこの30秒のギャップをすぐさまに埋めて事なきを得たけれども、PCSのテキスト速報では平穏な状態だと思っていたのに、J SPORTSの中継開始直後にいきなり集団が分裂する映像が映し出されたので、まぁ驚いたよね。
残り15kmを切ってメイン集団が逃げの20秒程後方まで近づくと、逃げ集団から最後の抵抗で飛び出そうとする動きが起こったりはしたけれども、そして小さな起伏のおかげで思ったよりも粘ったけれども、残り4.5km辺りで逃げは全て吸収される事に。
集団の先頭はグルパマなんだけれども、細かいコーナーが連続するテクニカルなレイアウトの影響で、主導権は激しく入れ替わる…というか、はっきりと主導権を握れているチームがなかなかいないような展開に。
残り3.3kmからはボーラ・ハンスグローエ、残り2.5kmからはチーム・バイクエクスチェンジ、そして残り2kmからは遂にドゥクーニンクが先頭に出てくる。
ドゥクーニンクはアシストを3枚揃え、ヤコブセンをしっかりと連れてきている。
ドゥクーニンクの動きに合わせてEFエデュケーション・NIPPOのトレインも前方に上がってきたけれども、残り1.7km地点でアシストがパンクして無念の失速。
混戦模様ながら、残り1km地点で最もいい形勢なのはやはりドゥクーニンクか。
しかしそこからコーナーが連続し、更には減速帯も出現するという非常に複雑なレイアウトの影響で、各チームの隊列は入り乱れてまともなトレインを組めているチームがいないような、とても混沌とした状況に。
ドゥクーニンクの発射台役であったはずのベルト・ファンレルベルフも、エースが背中から離れた状態で1人で飛び出すような格好になってしまい、その役割を十分に果たせていない。
ファンレルベルフの後方に位置していたアレクサンダー・クリーガー(アルペシン・フェニックス)が残り300m辺りから加速すると、その背中を捉えていたジョルディ・メーウス(ボーラ)が残り150mの最終コーナーの立ち上がりと同時にスプリントを開始!
その背中にはヤコブセンが張り付き、横からはマッテオ・トレンティン(UAE)も並んできた!
トレンティンとメーウスとの狭い隙間をすり抜け、ヤコブセンが前に出る!
今大会最強の証であるその緑色のジャージは、その圧倒的な力で前を譲らない!
ヤコブセン、ポイント賞獲得を確実なものにする今大会3勝目!
自らの誕生日を勝利と言う最高の形で祝福し、「どうだ!」と言わんばかりのこのガッツポーズ!!
これでスプリントポイントを250ptにまで伸ばし、2位のトレンティンは123ptとダブルスコア!
逆転の可能性は数字上はゼロではないけれども、どう考えてもありえないという状況。
ヤコブセンは、あとは最後まで走り切ればブエルタのポイント賞獲得が実質確定!
一年前は命の危機すらあるような状態だったのに、なんという復活劇だろうか!