驚愕の87km独走!!
2週目の最終日となる第15ステージは、1級・2級・1級・3級と4つのカテゴリー山岳を超えていく、獲得標高3640mの山岳ステージ。
2つ目の1級山岳の厳しさがそこまででもなく(長いけど)、そしてフィニッシュまで38kmの距離を残した位置に設定されているため、かなり逃げ向きでもあるこの日は、スタート直後から激しすぎるアタック合戦が繰り広げられる事に。
セップ・クス(チーム・ユンボ・ヴィスマ)、パヴェル・シヴァコフ(イネオス・グレナディアーズ)、ダヴィ・デラクルス(UAEチームエミレーツ)、ロマン・バルデ(チームDSM)、マグナス・コルト(EFエデュケーション・NIPPO)などなど、かなり有力な選手が逃げようと試みた結果、当然ながらメイン集団はこの強烈な逃げが成立する事を嫌って猛追走をかける。
結局、1つ目の1級山岳に入る前に全ての選手が吸収されて、レースは一旦振り出しに。
そして1級山岳の登坂で飛び出したのは、ラファウ・マイカ(UAE)、ファビオ・アル(チーム・クベカ・ネクストハッシュ)、マキシム・ファンヒルス(ロット・スーダル)の3人。
ファンヒルスはしばらくすると後退(メカトラ?)して先頭はマイカとアルの2人に、そしてその少し後方にはファンヒルスを含む21人の追走集団が形成されている。
先頭の2人は快調に登りをこなして、追走集団に1分30秒ほどのタイム差を付けて1級山岳の山頂を通過。
メイン集団は先頭から3分ほど離れた位置を走っていて、総合系の有力チームがその気になって牽けばすぐに追いつく気もするけれども、集団を牽引しているのは総合リーダーのオッドクリティアン・エイキングを抱えるアンテルマルシェ・ワンティゴベールマテリオ。
アンテルマルシェとしては、このままエイキングでも生き残れる緩いペースを刻み続けて、なんとかマイヨロホを守ろうという狙いか。
続いての2級山岳では、山頂まで残り3.5kmの地点で先頭からアルが脱落して、マイカが一人旅を開始。
フィニッシュまでは残り87km、追走とのタイム差は1分、メイン集団とのタイム差は4分半ほど。
マイカはこのまま独走を狙うのか、それとも敢えて追走を待つのか。
追走からは数名の選手が抜け出し、更にそこからステフェン・クライスヴァイク(ユンボ)がペースを上げて単独でマイカを追いかける格好に。
ワウト・プールス(バーレーン・ヴィクトリアス)やジョフリー・ブシャール(AG2Rシトロエン)といった登坂強者を振り切ったクライスヴァイクのペースは悪くないはずだけれども…マイカとの差が詰まらない。
マイカは1級山岳でもペースを崩さず、クライスヴァイクに対して1分30秒~1分40秒ほどのリードを保ち続け、山頂通過後のダウンヒルでもその差は変わらないまま。
これは…マイカがこのまま行ってしまいそうだ!!
残り5km地点の3級山岳でも、マイカのペースは崩れない!
最後は少し脚を緩め、天を指さしながらのフィニッシュ!!
87kmの一人旅を見事完遂し、驚愕の逃げ切り勝利!!
マイカはこれでグランツール通算5勝目、そして過去にはツール・ド・フランスの山岳賞を2回も獲得しているように、相当強い選手だとは分かっていたけれども、それでもこの独走劇には驚いた!!
アシストとして働く事を受け入れてUAEに移籍し、今年のツールではタデイ・ポガチャルの総合優勝を見事に支えたマイカ。
その献身が報われると同時に、マイカの意地と言うか矜持と言うか…、メンタル面も含めたその強さがよく表れた勝利だったと思う。
本当におめでとう、マイカ!
マイカの約3分後方のメイン集団では、最後の3級山岳でアダム・イェーツ(イネオス・グレナディアーズ)がアタック。
アダム・イェーツはそのままメイン集団から15秒先行してフィニッシュした事で、僅かながら総合のタイム差を縮める事に成功する。
総合首位のエイキングはメイン集団内でフィニッシュして、無事にマイヨロホをキープ。
3週目の厳しい山岳ステージでジャージを守るのは流石に難しいと思うけれども、果たしてどこまで頑張れるか。
2週目は総合にあまり大きな動きが無く、結局プリモシュ・ログリッチ(チーム・ユンボ・ヴィスマ)の優位は崩れないまま3週目に突入していく事に。
ログリッチが3連覇に向けて邁進するのか、モビスター・チームのダブルエース体制が機能するのか、それともここまで不完全燃焼なイネオスの逆襲はあるのか。
決戦の舞台は、第17・第18ステージの難関山岳ステージ、そして最終日の個人TT。
一体どんなドラマが待ち受けているのか、楽しみにしていたい。