最後まで分からない、息をのむような逃走劇
第19ステージは、序盤に3つのカテゴリー山岳が登場して、逃げ切りになるか集団スプリントになるかなんとも判断が難しいレイアウト。
この日の逃げは、まずはスタートから20km地点にある3級山岳でアタックが掛かり、直後の2級山岳でセレクションが行われて、最終的には18人に。
ここまでステージ2勝のマグナス・コルト(EFエデュケーション・NIPPO)、ドゥクーニンク・クイックステップ期待の俊英アンドレア・バジョーリ、今大会限りで引退を表明しているファビオ・アル(チーム・クベカ・ネクストハッシュ)、弱冠20歳のアメリカの新鋭クイン・シモンズ(トレック・セガフレード)など、これまたなかなかいいメンバーが揃っている。
メイン集団は、ここまでスプリントで3勝を挙げているファビオ・ヤコブセン(ドゥクーニンク)が早々に遅れ始めた事で、チーム・バイクエクスチェンジやチームDSMといったスプリント勝利を狙いたいチームが牽引して、逃げ集団とのタイム差を1分台でコントロール。
このタイム差なら集団スプリントの流れかなと、この時点では思っていた。
残り43km辺り、メイン集団で落車が発生。
倒れているのは…ルイス・メインチェス(アンテルマルシェ・ワンティゴベールマテリオ)だ…。
メインチェスは頭を打ったのか、それとも首の痛みを訴えているのか、首を固定された状態で搬送されていく。
せっかく前日の超級山岳で勝負を仕掛けて総合10位に順位を上げていただけに、あまりにも無念すぎるリタイアとなってしまった…。
逃げ集団で大きな動きがあったのは残り34km地点。
ここまでも積極的な動きを見せていたシモンズがアタックして抜け出すと、この動きにルイ・オリヴェイラ(UAEチームエミレーツ)が反応。
更に、残り26km辺りでコルトとローソン・クラドックのEFコンビ、バジョーリ、アントニー・ルー(グルパマFDJ)、アンドレアス・クロン(ロット・スーダル)が合流して、合計7人の新たな先頭集団が形成される。
この時点で、先頭とメイン集団の差は約30秒。
捕まるのは時間の問題かなと思っていたら、ここから逃げの7人が驚異の粘りを見せ始める!
と言うか、バイクエクスチェンジが頑張ってメイン集団を牽いているんだけれども、他のチームがほとんど手を(脚を?)貸してくれない…。
タイム差は残り20kmで32秒、残り15kmで28秒、ここからまたDSMが協力してくれて…残り10kmで22秒。
このまま縮まるのかと思いきや、何故かここからタイム差は広がり…残り5kmで33秒差!!
これはこのまま逃げ切るぞ!!
逃げの7人は協調体制を崩さず、残り3kmを通過!
メイン集団とのタイム差は未だ30秒、これはもう逃げ切りで間違いなさそうだ!
残り1kmのアーチも26秒のタイム差をキープしたまま通過、先頭を牽くのはクラドック。
クラドックはコルトのスプリントで勝負するため、ライバルの早駆けを封じようと最後の力を振り絞って高速で牽引!!
このクラドックの全開牽きに抗って飛び出せる選手はいない!
最終コーナーを抜けて残り200m、真っ先にスプリントを仕掛けたのはシモンズ!
しかしその背中にはコルトが張り付き、コルトは残り100m辺りでシモンズの背中から飛び出して先頭へ!
他のライバルも当然全力でもがくけれども、コルトのスプリント力が圧倒的だ!!
しっかりとスプリントを制したコルト、今大会3勝目!!
激坂フィニッシュを逃げ切っての1勝目、ピュアスプリンターが脱落した状況下で奇襲気味のスプリントを仕掛けた2勝目、そして逃げからの小集団スプリントで違いを見せつけた3勝目と、コルトの多彩さには本当に驚かされる!!
そして、残り1kmから全身全霊でのアシストを見せたクラドックの働きもお見事!!
EFはヒュー・カーシー、サイモン・カー、ヨナタン・カイセドと、総合エースを含む3人の選手を失いながら、抜群のコンビネーションを披露してのステージ3勝なら大成功と言っていいはずだ!
今シーズンから日本企業のNIPPOがスポンサードしてEFエデュケーション・NIPPOと名前を変えたこのチームは、その魅力的な走りが本当に素晴らしくて、日本人としては嬉しい限りだ。