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【レース感想】ブエルタ・ア・エスパーニャ2021 第12ステージ

ブエルタらしい、予想外のレース展開

第12ステージは、レース終盤に3級山岳と2級山岳が登場する丘陵ステージ。

残り17.2km地点に登場する2級山岳は、アルト・デル・14%(日本語で「14%峠」)という独特な名前の通り、山頂手前1.5km辺りから14%の勾配が続くという、なかなかの厳しさ。

ピュアスプリンターはまず間違いなく生き残れないから、普通に考えれば逃げ切り、もしくは山岳での抜け出しもありえるかな…と言ったところか。

 

この日は逃げがなかなか決まらず、レースも折り返しまで進んだ辺りでやっと8人の逃げが形成される。

一方のメイン集団は、3級山岳の平坦区間のコーナーで落車が発生。

プリモシュ・ログリッチ(チーム・ユンボ・ヴィスマ)、ロベルト・ヘーシンク(ユンボ)、アダム・イェーツ(イネオス・グレナディアーズ)、ディラン・ファンバーレ(イネオス)、サルバトーレ・プッチョ(イネオス)、ネルソン・オリヴェイラ(モビスター・チーム)といった、総合争いの重要人物が落車しているという事は、メイン集団の結構前方で落車があったのか…。

ただ、総合優勝を争っているログリッチとアダム・イェーツは無事にメイン集団に復帰を果たし、激しく痛んでいたように見えたファンバーレとオリヴェイラも遅れながらもステージをしっかり完走と、とりあえず大事には至らなかったのは不幸中の幸いか。

 

逃げ集団はメイン集団からあまり大きなタイム差を許してもらえず(最大でも1分台?)、件の2級山岳「14%峠」に突入すると全て吸収されてしまう。

そしてそのカウンターでジェイ・ヴァイン(アルペシン・フェニックス)とジュリオ・チッコーネ(トレック・セガフレード)が飛び出し、さらにロマン・バルデ(チームDSM)とセルヒオ・エナオ(チーム・クベカ・ネクストハッシュ)の2人も合流して、計4人のなかなか豪華なメンバーの新たな先頭集団が形成される事に。

そして山岳賞ランキングで2位のバルデが先頭で山頂を通過して、そのまま4人でダウンヒルに突入していく。

 

先頭の4人はテクニカルなダウンヒルを利用してメイン集団との差を30秒弱にまで広げる事に成功。

一方のメイン集団は、ヨン・イサギレ(アスタナ・プレミアテック)とマッテオ・トレンティン(UAEチームエミレーツ)の2人が一旦抜け出しを図るけれども、スプリンターのマイケル・マシューズを残す事に成功したチーム・バイクエクスチェンジが全開で牽引を行って2人を吸収してみせる。

バイクエクスチェンジはもちろんそもまま牽引を続行して、先頭集団とのタイム差も詰めに行く!

途中からUAEも牽引に加わった事もあり、残り5kmで20秒差、残り3kmで11秒差と、先頭が捕まるのは時間の問題か。

メイン集団が追いつく直前、残り1.3km地点のラウンドアバウトを利用して先頭からヴァインがアタック!

このヴァインの最後の抵抗も残り700mで捕まる…というその瞬間、EFエデュケーション・NIPPOの選手が2人猛然と加速して、メイン集団の主導権をバイクエクスチェンジから奪って先頭に躍り出る!!

先頭を牽くのはイェンス・クークレール、そしてその背中に控えてスプリントに備えているのは…第6ステージの激坂フィニッシュを制し、前日の第11ステージでも最後まで逃げていたマグナス・コルトだ!

このEFの「奇襲」に即座に反応して飛び乗れたのはアンドレア・バジョーリ(ドゥクーニンク・クイックステップ)のみで、ここまでチームの総力を挙げて主導権を握ってきたバイクエクスチェンジは、若干のギャップを作られてしまう…!

最終コーナーを抜け、コルトが発射!!

バジョーリも食らいついて横に並んでスプリント、そしてマシューズは…2人の背中から出る事が出来ない!

コルトとバジョーリ、2人が横並びでハンドルを投げる!!

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雄叫びを上げながらガッツポーズを見せたのはコルト!!

コルトは第6ステージに続いて今大会2勝目!!

逃げてよし、スプリントしてもよし、コルトの万能性は本当に凄い!

そしてそのコルトの勝利を演出したクークレールのリードアウトも、痺れるようなカッコ良さ!

総合エースのヒュー・カーシーを失いながらもしっかりと結果を残すEF、本当に素晴らしい!

 

いや~しかし、かなり面白い展開のスプリント…と言うか、こんな展開の末にスプリントになるとは!

こういう意味での「波乱」と言うか、読めないレース展開は大歓迎だね。

ただ、バイクエクスチェンジにとっては…なかなか悔しい、そして厳しい展開だった…。

バイクエクスチェンジは2級山岳を超えてからの牽引でかなり消耗していた上で、残り1.3kmからのヴァインの「最後の抵抗」で更に削られて(捕まえるのに結構手間取っていたよね…)、更には集団の前を牽いていたのでEFの死角からの「奇襲」が見えず、反応がワンテンポ遅れてしまったかな…。

その遅れによる僅かなギャップは最高速に乗っている最終局面では致命的で、マシューズはもうどうしようもなかった気がする。

マシューズは、個人的には今大会のポイント賞に予想したぐらい期待しているから、なんとか頑張って欲しいところ。

頑張れマシューズ!