「登れるスプリンター」にもほどがある
4つの3級山岳を越えてからフィニッシュ直前に2級山岳と、絶えずアップダウンを繰り返す逃げ向きなステージ。
また、最後の2級山岳は登坂距離3km・平均勾配10.2%とかなりの傾斜なので、総合勢の動きもあるかも。
アクチュアルスタート直後から活発にアタックが掛かる、予想通りの流れ…と思っていたら、なんと最初の3級山岳でタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)がアタック!?
その結果、プリモシュ・ログリッチ(チーム・ユンボ・ヴィスマ)を含む40人前後が早くも遅れている…?
…えぇ、なんじゃそりゃ?
流石にその後は一旦落ち着いて、遅れていたグループも合流したけれども、いきなりかなり驚かされた…。
その間に、逃げ集団を形成したのは23人。
ボーラ・ハンスグローエ、EFエデュケーション・イージーポストの2チームは、なかなかいい選手を3人も送り込む事に成功。
その他にも、マイケル・マシューズ(チーム・バイクエクスチェンジ・ジェイコ)、ティボー・ピノ(グルパマFDJ)、そして今大会ここまで調子が上がっていないダニエル・マルティネス(イネオス・グレナディアーズ)など、相当面白い選手が逃げに入っている。
逃げた選手で最も総合タイムが良いのがルイス・メインチェス(15分46秒遅れ)だったので、メイン集団をコントロールするユンボは、完全に逃げ切りを容認。
最序盤は慌ただしかったけれども、結局は大方の予想通り逃げ切りの展開になった。
残り52.8kmと早いタイミングで仕掛けたのは、逃げた選手の中では断トツでスプリント力があるマシューズ!
これは…マシューズは「耐えてからのスプリント狙い」だと思っていたから、正直なところかなり意外だ…。
このマシューズに遅れて合流したのは、ルイスレオン・サンチェス(バーレーン・ヴィクトリアス)、アンドレアス・クロン(ロット・スーダル)、フェリックス・グロスシャートナー(ボーラ)の3人。
後続に最大で45秒ほどの差を付けたこの新たな先頭集団は、クロンがパンクにより脱落して3人になり、最後の2級山岳突入時には追走集団とのタイム差は20秒前後。
先頭にも追走にもチャンスがある、まだまだ分からない状況で勝負所の登坂に入っていく事に。
先頭で仕掛けたのは、またしてもマシューズ!!
残り4kmを切った辺りから加速すると、グロスシャートナーとサンチェスを引き離す!!
そんなマシューズに後方から追いついてきたのは、アルベルト・ベッティオール(EF)。
残り2.7km、ベッティオールがアタックを仕掛けると、マシューズは一旦離されかけたけれども、驚異の粘りを見せて追いつく事に成功!
それどころか、マシューズは追いついた直後にそのままアタック!!
なんとなんと、ベッティオールを突き放して独走を開始!!
そのまま山頂を越えて、残すは1.6kmの平坦区間、タイム差は10秒以上!
これは…逃げ切れる!!
最終コーナーを抜けて、マシューズは勝利を確信!
喜びを爆発させながら、フィニッシュラインへ向かう!!
もはや「登れるスプリンター」の枠を飛び出すほどの登坂力!
マシューズ、5年振りとなるツールのステージ勝利!!
今大会ここまで、ステージ2位が2度あっただけに、これは相当嬉しい勝利だ…!
しかし、「登れる」にもほどがあると言うか、もはやスプリンターと呼んでいいのか分からないぐらいの登坂力な気もする。
この日のような走り方を今後も見せられるなら、もしかしたらマシューズの可能性はもっと広がっていくのかもしれない。
そしてマシューズから10分以上遅れて、メイン集団も2級山岳へ。
この日も、逆転の為にタイム差を奪おうとアタックをするポガチャル、しっかりと対応して離されないヨナス・ヴィンゲゴー(ユンボ)という構図は変わらず。
ただ、今回はゲラント・トーマス(イネオス)が17秒、ロマン・バルデ(チームDSM)が26秒のタイムを失う事に。
やはり、飛び抜けた力を持った2人の争いとなるのか。
3週目の総合争い、見応えのある戦いを期待したい。