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【レース感想】ジロ・デ・イタリア2022 第21ステージ

2年越しの栄冠

ジロ・デ・イタリア2022、最終第21ステージは17.4kmの個人タイムトライアル。

コーナーが連続するテクニカルなコースを抜け、中盤で距離4.1km・平均勾配5.4%の丘を超え、最後は円形闘技場にフィニッシュする、2019年の最終ステージとほぼ同じレイアウト。

総合上位陣はあまり順位の変動がなさそうなタイム差という状況で、今大会の締めくくりとなるレースがスタートする。

 

序盤に出走した選手の中で好タイムを出したのは、マイケル・ヘップバーン(チーム・バイクエクスチェンジ・ジェイコ)、マグナス・コルト(EFエデュケーション・イージーポスト)、マウロ・シュミット(クイックステップ・アルファヴィニル)といった選手たち。

しかし、それらの選手が出したタイムを霞ませる圧倒的な走りを見せたのが、79番出走のマッテオ・ソブレロ(バイクエクスチェンジ)。

中間計測で圧倒的なタイムを計測したイタリア王者は、後半区間も一切ペースを緩めずにそのままフィニッシュへ!!

なんと暫定首位のシュミットの記録を1分16秒も縮める22分24秒という驚愕のタイムをマーク!!

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イタリア王者のソブレロ、最後の最後まで肉薄する選手すら現れない、圧倒的なタイム差での勝利!!

最も近づいたのが132番出走のティメン・アレンスマン(チームDS)、しかしそのタイム差は23秒という、とても17.4kmの個人タイムトライアルとは思えない大きな差だ…。

エースのサイモン・イェーツを失ったバイクエクスチェンジにとって満足のいく締めくくりであると同時に、最終ステージをイタリア人が勝利するのは、地元のファンにとっても納得のいく結果と言ったところか。

 

2位に入ったアレンスマンも決して悪くはない…いや、ソブレロ以外の選手と比べたらかなりいい走りだった。

こちらもエースのロマン・バルデを失ってからステージ勝利を狙い続けて、残念ながら勝利と言う明確な結果は残せなかったけれども、アレンスマンの奮闘はとても印象に残っている。

タイムトライアルをこなせる大型オールラウンダーとして、覚醒の日はきっと近い。

 

続くステージ3位に入ったのは…マチュー・ファンデルプール(アルペシン・フェニックス)。

9.2kmと超短距離の個人タイムトライアルだった第2ステージでの2位はともかくとして、この日も3位とは…もはや何でもありだな。

しかも、連日あれだけ自由奔放にアタックを仕掛けまくっての最終日にこの走り。

改めてその「怪物」っぷりが現れたリザルトだ…。

 

そして、いよいよ残すは総合上位陣。

まずは総合4位、ヴィンチェンツォ・ニバリ(アスタナ・カザクスタン・チーム)!

今シーズン限りでの引退を表明しているレジェンドは、最後の出場となるジロで総合4位と、驚異のリザルト!

最後の最後まで、地元イタリアのファンを沸かせてくれた!

フィニッシュ後には、その功労を称えての特別表彰も。

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一時代を築いた偉大な選手に相応しい、最高の演出だった。

ニバリは残りのシーズン、ブエルタ・ア・エスパーニャイル・ロンバルディアに出場予定との事。

その走りを、最後の最後まで目に焼き付けたい。

 

総合3位は、ミケル・ランダ(バーレーン・ヴィクトリアス)!!

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26秒差まで迫っていた総合2位には届かなかったけれども、2015年ジロ以来となる自身2度目のグランツール総合表彰台の座を掴み取った!!

やはりその登坂力は一級品である事が証明できたと思うので、また次の機会でもその力を発揮して欲しい。

 

総合2位は、リチャル・カラパス(イネオス・グレナディアーズ)!!

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大逆転を喫してしまった前日は焦燥したような表情を見せていたけれども、この日のフィニッシュ後は穏やかな笑顔を見せてくれたカラパス。

あと一歩のところで2度目の栄冠を逃してしまったのは、もちろん相当悔しいだろう。

それでも、2019年のジロ制覇以降毎年グランツールの総合表彰台に登るその安定感は、間違いなく現役屈指だ。

この総合2位というリザルトを誇って欲しい。

 

そしてジロ・デ・イタリア2022の覇者は…ジャイ・ヒンドレー(ボーラ・ハンスグローエ)!!

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2020年のジロ最終ステージ、0秒差で迎えた個人タイムトライアルで敗れた悔しさを、見事に晴らしてみせた!!

 

改めて、栄冠を掴み取った原動力はその登坂力。

今大会中で最も安定感があっただけでなく、第20ステージで見せた圧巻の走り。

カラパスがバッドデイだったとか関係なく、あの日のヒンドレーはひたすらに強かった!!

恐らく、カラパスがバッドデイでなかったとしても、十数秒~数十秒ほどのタイム差をもぎ取っていたと思う。

そのぐらい、あの登坂は凄かった!!

そして課題と言われていたタイムトライアルも、第2ステージ32位(カラパスから4遅れ)に第21ステージ15位(カラパスから7秒遅れ)と、かなり上手く纏めた事で文句なしの総合優勝となった!

 

2年前、新型コロナウィルスの影響で荒れに荒れたジロでの総合2位という結果を懐疑的な目で見る層が、ヒンドレーの実力を疑っている人が一定数いたのは事実だと思う。

個人的には、あのとき総合優勝したテイオ・ゲイガンハート(イネオス・グレナディアーズ)とヒンドレーは確かにそれまでの実績が少なかったけれども、グランツール総合表彰台はフロックで掴めるものではないと考えていたから、2人の隠れていた実力が発揮されたのだと受け止めていた。

何より、あの時繰り広げられた激熱な山岳決戦がフロックなんかだとは思いたくなかった。

ヒンドレーとゲイガンハートが見せてくれた走りは、間違いなく本物だと感じていた。

翌2021年、ヒンドレーの調子が上がらなかったのは…なんだか悔しかった。

「やっぱり一発屋だったのか」なんて声が(少数とは言え)聞こえてくるのは、2020年の走りに心を揺さぶられた身としては、本当に歯がゆかった。

そして見せてくれた、今大会の走り。

見よ、これがヒンドレーだ。

これがヒンドレーの実力だ。

そうアピールするのに、十分すぎる走りだった。

 

総合優勝おめでとう、ヒンドレー!!

総合に舵を切ったボーラの新たなエースの1人として、今後の活躍に大いに期待しているぞ!

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激闘の3週間を終えて…

改めて、最終成績を確認。

  • 総合優勝:ジャイ・ヒンドレー(ボーラ・ハンスグローエ)
  • 総合2位:リチャル・カラパス(イネオス・グレナディアーズ
  • 総合3位:ミケル・ランダ(バーレーン・ヴィクトリアス
  • ポイント賞:アルノー・デマール(グルパマFDJ)
  • 山岳賞:クーン・ボウマン(チーム・ユンボ・ヴィスマ)
  • ヤングライダー賞:フアン・ロペス(トレック・セガフレード
  • 総合敢闘賞:マチュー・ファンデルプール(アルペシン・フェニックス)
  • チーム総合賞:バーレーン・ヴィクトリアス

 

総合優勝はヒンドレー!!

その登坂力で、2年越しの悲願達成!!

第20ステージの走りには、本当に痺れた!

もうフロックなんて言わせない!

 

総合2位はカラパス!

悔しい逆転負けかもしれないけれども、4年連続でグランツール総合表彰台は素晴らしい!

胸を張って、また戻ってきて欲しい。

 

総合3位はランダ!

実に7年振りとなるグランツール総合表彰台!

苦労人のランダが少しでも報われるのは、なんだか見ているこちら側も嬉しくなる。

 

ポイント賞はデマール!!

ワールドツアーで2年間未勝利と長いトンネルに入っていたデマールが、今大会3勝と大爆発!

2位に大差を付けてのマリア・チクラミーノ獲得となった!

 

山岳賞はボウマン!!

エースのトム・デュムランを失ったチームに光をもたらす、アシスト役であるボウマンの躍進!

ステージ2勝と合わせて、見事な走りだった!

 

ヤングライダー賞はフアン・ロペス!!

今大会最大のサプライズとも言えるのがこのフアン・ロペスの活躍!

マリア・ローザを10日間着用しての総合10位という結果には、期待感しかないぞ!

 

総合敢闘賞はファンデルプール!!

これぞ「怪物」という走りを、3週間にわたって披露!

その自由奔放で積極的過ぎるアタックは、常にレースを盛り上げてくれた!

 

チーム総合賞はバーレーン・ヴィクトリアス!!

2位ボーラとの差は僅か4分7秒という接戦を制しての受賞に。

これでバーレーンは、昨年のツール以降3大会連続でのチーム総合賞獲得。

ここ数年の活躍が目覚ましいバーレーン、やはり「チーム力」では随一の安定感だ。

 

開幕前から「力が拮抗している」と評されていた今大会の総合争いは、実際に最後の最後までどうなるか分からない、本当に拮抗した力を持つもの同士のぶつかり合いだった。

ヒンドレー、カラパス、ランダの3人は、第20ステージ以外ではほぼ離れる事が無く、誰がアタックしても抜け出せない、そして脱落する事もないという、稀に見る接戦だった。

それを「動きが無くてつまらない」と受け止める事もできるだろうけれども…あの手に汗握るような緊迫感も、なかなか味わえない貴重なものだと思う。

サイモン・イェーツ(バイクエクスチェンジ)、ロマン・バルデ(DSM)、ジョアン・アルメイダ(UAEチームエミレーツ)、トム・デュムラン(ユンボ)といった「主役級」がトラブルで離脱してしまったのは確かに残念ではあったけれども…。

 

いずれにしても、やはりグランツールは面白くて、そしてジロは過酷であり、美しい。

そんな当たり前の事を改めて実感できる、素晴らしい2022年のグランツールシーズンの幕開けだったと思う。

 

さあ、次はツールだ。

最高の舞台で一体どんな走りが繰り広げられるのか、楽しみにしていきたい。

それでは、また!!

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