初心者ロードレース観戦日和

初心者でもいいじゃない!ロードレース観戦を楽しもう!

世代交代はどのぐらい進んでいるのか?

感覚的には「進んでいる」気がするけれども…?

ここ数年、ロードレース界でよく耳にするのが「世代交代」という言葉。

具体的には、エガン・ベルナルが22歳でツール・ド・フランスを制し、更にタデイ・ポガチャルが21歳、レムコ・エヴェネプールが19歳でワールドチームデビューを飾った2019年辺りから、頻繁に用いられるフレーズだと思う。

より正確に表現すれば、「世代交代」というよりも「活躍する年齢層の若年化」になるのかな?

自分はちょうどその2019年から観戦を開始しているので、実は少しピンと来ていなかったりするけれども、ざっとグランツールのリザルトなんかを調べてみると、確かにその直前までは「ベテランが幅を利かせる」ようなリザルトが続いていたように感じる。

で、「感じる」ではフワッとしていて嫌だったので、ちょっと表やグラフなんかを作って具体化してみようかなと…。

 

今回調べてみたのは、過去10年間におけるグランツールとモニュメント、そのトップ3の年齢。

果たして、若年化は数字で見て明らかに進んでいるのか。

意外とこういった内容の記事を読んだ記憶が無いので、気になる方は是非お付き合い頂ければ。

 

(※今回の年齢表記は、当該レース開催の瞬間のものではなく、その年の12/31時点の年齢)

 

グランツール

「総合争いには経験が不可欠」みたいに語られがちだけれども…?

あまり前置きが長くなっても仕方が無いので、早速いってみよう。

 

ツール・ド・フランス

まずはツール、10年分の総合トップ3の一覧と年齢がこちら。

(※色が濃くなっている部分は35歳以上、逆に白い部分は25歳以下)

明らかに目立つ2019年以降の白い部分…、つまり若い世代の台頭。

2017年以前の5年間で3回しかなかった25歳以下のトップ3入りが、2018年以降の5年間で5回もあるのだから、確かにこれは若年化が進んでいると表現して差し支えないと思う。

と言うか、要するにクリス・フルームの時代」が2018年で終わったという事か…。

その一方で、濃い部分…35歳以上のトップ3入りは、2015年・2020年・2022年の3回と、2019年以降に2回登場。

ベテランが活躍する余地もまだ残されていると、読み取れなくもない…?

 

順位ごとの平均を見ると、2019年~2021年の若手3連発が大きく影響して、総合優勝が27.6歳で一番若いという結果に。

逆に、3例あったベテランが全て3位だったので、総合3位は31歳と少し高めに。

全体平均は28.93歳で、「30歳前後が総合争いにおけるピーク」という一般的な認識と、まあ大体一致する感じではある。

 

ジロ・デ・イタリア

続いて、ジロ・デ・イタリア

…ん?

ツールほど明確な感じではない…?

前半5年で若手3・ベテラン2、後半5年で若手4・ベテラン1だから、傾向としては若干あると言えなくもないけれども、このぐらいは誤差な気もする。

2014年はトップ3の平均が25歳と、極端に若い年が前半にあるのもなかなか興味深いところ。

あと、ツールと違って「ベテランと若手のトップ3入りが被らない」のも不思議なポイント(ただの偶然な気もするけれども)。

 

順位ごとの平均は、ツールと同じく総合優勝(27.9歳)が一番若くて、総合3位(30歳)が最も高いという結果に。

…ベテランは勝ちきれないのか?

そして全体平均は28.67歳と、ツールとほぼ同じぐらいに。

 

ブエルタ・ア・エスパーニャ

最後に、ブエルタ・ア・エスパーニャ

これまた極端な…。

まず2013年、42歳のクリス・ホーナーが総合優勝した結果、トップ3の平均は34.67歳ととんでもない高さになっている。

かと思えば、2018年と2022年にはトップ3に2人若手が入り込み、トップ3の平均が25歳以下に。

まるでブエルタのコースプロフィールを表したような乱高下を、どう評価していいのやら…。

ただ、一応前半5年が若手1・ベテラン2、後半5年が若手5・ベテラン1なので、傾向としては若年化が進んでいると言っていい…はず。

 

順位ごとの平均は、総合3位が26.6歳で断トツに若いという、ツールやジロとは違った結果に。

ただ、全体の平均は28.8歳と、ほぼ同じぐらいの数字に落ち着いている。

やはり、グランツールの総合争いにおいては、このぐらいの年齢がピークな事は間違いなさそうだ。

 

グランツールまとめ

最後に、総合優勝の年齢推移と、トップ3平均の年齢推移をグラフで。

まずは総合優勝。

ツールは前述の通り、2018年でフルーム(と周辺世代)の時代が終わった事が一目瞭然。

ジロも、乱高下傾向にあったのが落ち着き、2019年以降は最高で26歳と低めで安定してきている。

ブエルタは…なんだこれ(困惑)。

2013年のホーナー(42歳)と2022年のエヴェネプール(22歳)の影響で、全体が下がっているようにも見えるけれども、その2年以外は意外と狭い範囲に纏まっている?

 

続いて、総合トップ3平均。

ツールは、総合優勝ほど分かりやすくはないけれども、やはり2018年をピークに下がっていく傾向に見える。

ジロは…上下動しつつ、トータルではあまり変化はない感じ?

ブエルタは、2018年に「谷」が出来ていて一見分かりにくいけれども、実はトップ3平均では明確に若年化が進んでいる?

 

一応、グランツール全体としては…若年化が進んでいると言っていいと思う

グラフで見ると、多少ブレる部分はあっても傾向としては現れている…と結論付けていいよね??

 

モニュメント

ここまでの内容で記事を終わらせてもよかったんだけれども…、思いついたからにはモニュメントもやってみる。

5つあるのでサクサクっといこう。

 

ミラノ~サンレモ

まずは「スプリンターズ・クラシック」、ミラノ~サンレモ。

…若い!

ベテランがいない、そして全体の平均も27.7歳と、グランツールと比べて明確に若い。

その上で、若手は5人のみと、決して若手に偏った訳ではないのは相当興味深い。

その辺りの考察は、また後ほど…。

 

ロンド・ファン・フラーンデレン

「クラシックの王様」こと、ロンド・ファン・フラーンデレン

今度は一転、全体の平均が29.27歳とここまでで最高の数字に。

ベテランが4人というのは決して多くは無いけれども、若手が4人は明確に少ない…。

石畳は経験が必須…と結論付けるにはまだ早いか。

 

パリ~ルーベ

さて、「クラシックの女王」パリ~ルーベはどうか。

29.74歳と、数字がさらに上がる!

若手がロンドと同じく4人なのにこの数字…、つまり満遍なく高めの傾向にあるという事か。

やはり、石畳には経験が必須?

 

リエージュ~バストーニュ~リエージュ

アルデンヌクラシックの最高峰「ラ・ドワイエンヌ」ことリエージュ~バストーニュ~リエージュは…?

石畳系の2つよりは低いけれども、ミラノ~サンレモよりは明確に高い。

若手が8人も入っていてこの数字は、相当面白い。

そして、ベテランは前半5年に集中、後半5年は15枠のうち若手が6人と、これは…。

 

イル・ロンバルディア

最後は「クライマーズ・クラシック」イル・ロンバルディア(緑がリエージュと被ったので青に…)。

若手8・ベテラン2という全体の傾向、そして平均年齢28.97歳という数字は、かなりリエージュ~バストーニュ~リエージュに近い印象。

しかし、若手は満遍なく分布しているのに対して、ベテランは2019年・2020年のみと、若年化が進んでいるかと言うと…?

ただ、直近2年はポガチャルが優勝しているのでなんとも言いにくい…。

 

モニュメントまとめ

グランツール同様、まずは優勝者の年齢推移。

全体的に乱高下気味で、傾向が読みにくいけれども…。

一応、ロンドは2019年以降、リエージュロンバルディアは2021年以降、低めで安定しているとは言える…?

 

続いて、トップ3の平均。

こっちのグラフだと、リエージュは明確に数字が下がっていっている。

あとは…なんとも言えないというのが正直なところ。

とりあえず、ミラノ~サンレモが驚きの安定感を披露している。

 

おまけ、シャンゼリゼのスプリントは?

ミラノ~サンレモの平均が、明確に他のレースより数字が低い理由について…、一つ仮説を立ててみた。

ずばり、「スプリント力は若さがものを言う」

ここ数年はスプリントでの決着になっていないミラノ~サンレモだけれども、それでも他のモニュメントに比べたらやはりスプリント力の比重が大きいのは間違いない。

で、ロードレースに限らず単純な瞬発力のピークは20台前半らしいので(陸上短距離の記録なんかを見ると分かりやすい)、その影響ではないかと…(必ずしも「瞬発力=スプリント力」ではないけれども…)。

という事で、仮説が合っているか検証する為に、もう一つだけ調べてみる。

世界最高峰の選手が集うスプリント、ツール・ド・フランス第21ステージ、シャンゼリゼのリザルトだ。

…ん?

…。

これまた微妙な…。

一応、平均年齢はミラノ~サンレモ以外のモニュメントよりは低い、28.27歳という数字に。

ただ、ミラノ~サンレモの27.7歳と比べると、少し(「同じぐらい」とはいえない程度には)高いかなぁ。

順位ごとの平均を見てみると…、3位が29.5位と飛び抜けて高いのか。

…あ、2021年のマーク・カヴェンディッシュ(36歳)、2022年のアレクサンダー・クリストフ(35歳)、この2人の影響だな…。

 

総まとめ

最後に、改めてまとめ的な事を書こうかな。

 

グランツールの総合争いは、明確に若年化が進んでいる

・特にツールではそれが顕著で、2019年以降は完全に若手中心の争いに

・一応、トップ3入りの回数を見る限りでは、ベテランに活躍の余地が全く無い訳ではない(10年間で9例)

・ただし、35歳以上での総合優勝は僅か1例のみと、かなり厳しい状況

 

モニュメントにおいては、リエージュ~バストーニュ~リエージュは明確に若年化が進んでいる

リエージュは登坂力が求められるレースという事で、グランツール総合争いの若年化がそのままこちらの結果にも出ている可能性がある

ロンド・ファン・フラーンデレンやパリ~ルーベといった石畳系のレースは、その高い難易度から経験が求められるのか、活躍する年齢層が高めの傾向にある

・ミラノ~サンレモは、モニュメントの中で明確にトップ3の年齢が若い(スプリント力と若さにはある程度の相関がある可能性も?)

 

大体こんなところかな。

一応、「グランツールは若年化が進んでいる」という結論になって、一安心?

ただ、あくまでこの10年間の傾向なので、5年後とかにもう一度やってみるとどうなっているかは全く分からないと言うのが正直なところ。

例えば、ポガチャル、ヴィンゲゴー、ベルナル、エヴェネプール辺りが5年後も総合争いの中心で、下の世代の突き上げが少なかったりすると…?

今回の結果が、「ただベルナル周辺の世代が強すぎただけ」という事になるのかもしれない。

 

来シーズン以降、この世代が更に幅を利かせるのか、それともベテランの反逆があるのか、はたまた更なる若手の台頭があるのか。

そんな部分にも注目しながら、レース観戦を楽しんでいこう!

それでは、また!