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【レース感想】パリ~ニース2021

強者の矜持、そして気高き敗者

ヨーロッパの本格的なレースシーズン幕開けを告げる「太陽へ向かうレース」、パリ~ニースが開幕!

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「ミニ・ツール」とも呼ばれ、ツール・ド・フランスを占う上でも重要なこのレース、自分の総合予想は…何と第1ステージ前にTweetするのを忘れている(汗

第2ステージ前に気づいて改めてTweetしているので、紹介はまた後ほど…。

 

何はともあれ、やはり豪華なメンバーが集まっているこのレース、全8ステージの行程がスタート!

※事前の注目選手紹介はこちら

www.kiwaroadrace.com

 

第1ステージ

平坦カテゴリーのステージながら、3級山岳が4つとそれなりのアップダウン、そしてほんのり登り勾配のフィニッシュと、一筋縄ではいかなそうな第1ステージ。

自分の予想はこんな感じ。

綺麗なスプリントにならないような展開と、そして登り勾配の集団スプリント、そのどちらのパターンでもありえそうなマイケル・マシューズ(チーム・バイクエクスチェンジ)という、無難と言うか弱気な予想…。

 

この日の逃げはファビアン・ドゥベ(トタルディレクトエネルジー)1人で、 ドゥベは山岳ポイントを3度先頭通過して、この日の山岳賞が確定。

残り55km辺りで、メイン集団からはフィリップ・ジルベール(ロット・スーダル)などが飛び出して先頭のドゥベと合流、先頭は一時最大で5人に(すぐに脱落したトタルのクリス・ローレスの動きは何だったの…?)。

 

残り33km辺り、メイン集団ではリッチー・ポート(イネオス・グレナディアーズ)が落車してしまう…!

一旦はレースに復帰するも、しばらくするとリタイアを選択する事に。

イネオスに復帰、そしてエースナンバーを背負って出場した今回のレースでも「エースを務めると落車しやすい」という不幸体質が発揮されてしまった…。

幸い、骨折などの大事には至らなかったようなので、しかっり回復させてまた元気な姿を見せてくれ~。

 

残り27km辺りで逃げを吸収したメイン集団は、残り15.5km地点の中間スプリントポイントを目指して活性化。

マシューズ、ティシュ・ベノート(チームDSM)、ジャスパー・ストウィベン(トレック・セガフレード)の順で中間ポイントを通過し、その後しばらくはアタックと吸収が繰り返される目まぐるしい展開になるも、残り11km辺りで再びメイン集団がこれらの動きを吸収し、勝負は集団スプリントの展開に。

新城幸也バーレーン・ヴィクトリアス)が集団を牽引する姿も見せる中、残り4km辺りからはグルパマFDJがアルノー・デマールでの勝利を狙って主導権を握る。

しかし、グルパマは動くタイミングを誤ったのか早々にアシストを減らしていき、残すは最終発射台のジャコポ・グアルニエーリのみとなってしまい、リードアウトのスピードが上がり切らない。

残り1kmで落車もあり混沌とする状況の中、肝心のデマールがストゥイベンとの位置取り争いに手間取る一方、後方から位置を上げてきたのはボーラ・ハンスグローエのジョルディ・メーウス、もちろん後ろにはパスカル・アッカーマンを引き連れている。

アッカーマンは絶好の位置でスプリントを開始するも…イマイチ伸びが弱く、そのアッカーマンの後方から飛び出してきたのはサム・ベネット(ドゥクーニンク・クイックステップ)!

そのまま最後まで突き抜け、余裕のフィニッシュ!!

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サム・ベネット、やはり強し。

ドゥクーニンクのトレインがイマイチ機能しなくても、やはりこの男は強い。

トレインに頼りきりでは無く、こういう勝ち方もできるのがサム・ベネットの強みだなと、改めて感じるようなレースだった。

 

そして心配なのはアッカーマン。

あの絶好の位置からのスプリント、番手にいたベネットに差されるのは、まぁありえる話だと思うけれども、そのまま失速して6位って…。

調子の上がり切らない今シーズン、何とか立て直して早いところ今シーズン初勝利を挙げたいところ。

 

第2ステージ

ド平坦なレイアウトで、第1ステージと同様に集団スプリントスプリントが期待される第2ステージ。

自分の予想がこちら。

高低差だけを見て「難しい展開にはならなそう」とか言ってしまっているけど、この日のフィニッシュ手前はヘアピンコーナーが続出するかなりトリッキーなレイアウトだと後で気づく…。

 

そして、初日に忘れていた総合予想もこのタイミングでTweet

嗚呼、ポートよ、何故いなくなってしまったのだ…。

 

この日の逃げは2人…だったんだけれども、残り97km地点の中間スプリントポイントを目指してメイン集団がペースアップして、逃げを吸収してしまう。

そして中間スプリントは、前日もトップ通過したマシューズがまたしても先着して、スプリントポイントとボーナスタイムを獲得。

そこからしばらくはティム・デクレルク(ドゥクーニンク)とトニー・マルティン(チーム・ユンボ・ヴィスマ)というプロトン有数の牽引職人がペース作りに励み、新たな逃げが生まれない展開に。

その後、ドゥクーニンクが中心となって横風分断が発生はしたものの、結局集団は一つに纏まったままレースは進行していく。

 

残り33.9km地点、この日2つ目の中間スプリントポイントを積極的に狙ってきたのは、またしてもマシューズ!

最後はアンドレ・グライペルに抜かれたものの2位で通過して、マシューズはこの日だけで5秒のボーナスタイムを獲得し、これが後々大きな意味を持つことに…。

 

この中間スプリントポイントの直後、ニュージーランド・チャンピオンジャージ(まだ見慣れなくて判別しずらい!)を身に纏ったジョージ・ベネット(ユンボ)が落車、それもヘルメットが割れる程の落車をしてしまう…。

少しふらついた様子のジョージ・ベネットは、なんとそのままレースを続行!?

頭を打ったなら、脳震盪の診断プロトコルを受けなければいけないはずで、その様子が中継では映っていなかったように見えたけど…?

う~ん、脳震盪は後になって影響が出てくるケースもあるので、少し心配。

というか、今回のパリ~ニース、少し落車が多くない?

この直後にはアレクシー・ヴュイエルモ(トタル)が落車してリタイアしてしまったし…。

ここまで例年よりレース数が少ない、そしてこなしてきたレース数に差がある状況の影響だったりするんだろうか…。

 

レースはその後大きな動きが無くフィニッシュのスプリントへ。

トレックやボーラが良い形を作っているように見える中、やはり残り1.7kmのヘアピンカーブで各チームの隊列が乱れる事に。

その状況下で良い形を作ったのはチームDSM、そして残り500mのコーナーを抜けて一番いい形だったのはトレック。

トレックのリードアウト役ストゥイベンが先頭、その後ろにはしっかりとエースのマッズ・ピーダスンが控え、その後ろにはブライアン・コカール(B&Bホテルズ)、ケース・ボル(DSM)と続く。

ストゥイベンの背後からスプリントを開始するマッズ・ピーダスン、その後ろに付いていくコカール、そしてその2人とは反対側から飛び出したボル!

強烈な加速で先頭に立ったのはボル!

そのまましっかりと良い伸びを見せ、先頭でフィニッシュ!!

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期待の若手スプリンターのボル、2年ぶりとなるワールドツアー2勝目!

最終局面では単騎ながら、そこまでしっかりと運んだDSMのチーム力、そして素晴らしい伸びを見せたボル、お見事!

 

そして2位はマッズ・ピーダスン、3位にはマシューズ。

マシューズはフィニッシュ順位でもボーナスタイムを獲得する事に成功し、マッズ・ピーダスンに4秒差を付けての総合首位に浮上!

初日からやたらと中間スプリントに意欲を出しているとは思っていたけれども、まさかここでしっかりリーダージャージを獲得するとは!

翌日は個人TT、マシューズは結構TTが得意なはずだから、もしかしたらもう1日総合首位を守る可能性も…?

 

第3ステージ

今大会唯一の個人TTステージは、距離14.4km、そしてフィニッシュ手前に短いながら少し厄介な勾配のあるレイアウト。

 

優勝候補の本命は当然プリモシュ・ログリッチユンボ)…と思いながらの自分の予想がこちら。

フランス個人TT王者「クレルモンフェランTGV」ことレミ・カヴァニャを、昨年のツール第20ステージで登りフィニッシュの個人TTでもいい結果を残している事もあり、期待も込めてチョイス。

 

開始早々、断トツなトップタイムを叩き出したのは、世界選手権個人TT2連覇のローハン・デニス(イネオス)。

流石は現役屈指のTTスペシャリストといったところか。

 

このデニスのタイムを上回ったのは、昨年のパリ~ニース個人TTステージ勝者であるセーアン・クラーウアナスン(DSM)。

今回ぐらいの長すぎないTTステージは、宮本あさかさんも触れている(セーアン・クラーウアナスン | 注目選手 2021年 | サイクルロードレース | J SPORTS【公式】)ように、やはり彼の脚質にはドンピシャな模様。

 

これを更に上回ったのは、この日の、そして今大会の大本命であるログリッチ

中間計測ではクラーウアナスンより2秒遅れるも、最終的にトップタイムを4秒更新する快走を披露!

最後の登りはその他のTTが得意な選手よりも明らかに軽快で、流石と言ったところか。

 

しかし、直後にそのタイムを塗り替えたのは、自分が(そして解説の浅田監督も)予想に挙げたカヴァニャ!

まずは中間計測でクラーウアナスンを3秒上回り、そして後半もそのペースは落ちない!

そのままログリッチを6秒上回り、暫定首位の座へ!

 

このままカヴァニャがステージ勝利かと思われたけれども、その4人後に出走したスイスの新鋭シュテファン・ビッセガー(EFエデュケーション・NIPPO)が良い走り…とううかカヴァニャの中間タイムを3秒上回る驚きの走りを見せている!?

実際は「走りを見せている」という表現は正確では無くて、ビッセガーにはカメラバイクが随伴していないようでその映像は全然入ってこないんだけど…、どうやらハイペースを維持したままフィニッシュに向かっている。

そしてフィニッシュ手前、固定カメラで映し出されるビッセガー!

画面表示のタイム差はかなり際どいぞ…、カヴァニャとのタイム差はどうなる…!?

タイム差0.83秒、僅差で勝利したのはビッセガー!

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伏兵ビッセガー、周囲の予想を覆すワールドツアー初勝利!!

というか、UAEツアーであのフィリッポ・ガンナ(イネオス)に次ぐ2位に入っていた選手に「伏兵」は失礼か。

そして最終走者のマシューズがビッセガーから23秒遅れの17位に終わった事で、ビッセガーはなんと総合リーダーの座に!

またもやスイスから現れた新星、その快進撃はもう始まっているのかもしれない。

 

この日のJ SPORTSの中継で印象的だったのが、解説の浅田顕監督。

個人TTなので予想では無く分析」と発言し、しかもその内容が恐ろしいほど的確で、1位カヴァニャ、2位ビッセガーと予想(しかも、カヴァニャ1位は私情が入っているから当たらないとコメント)するという…。

「近年の個人TTはトップ選手のアベレージが55km/hぐらい、そこから天候や地形などの条件を考慮して速度を差し引く」という手法で事前にトップタイムを予想、そうして導き出した予想タイムは17分30秒、そして優勝したビッセガーのタイムは17分34秒!

誤差たったの4秒という、驚きの精度!

さすがは全日本ロード男子の監督と言ったところか…。

そして、「走りが好き」と語るカヴァニャを応援する姿、とても面白かったです(笑)

 

第4ステージ

6つの2級山岳を超え、最後に1級山岳でフィニッシュとなる第4ステージ。

フィニッシュの1級山岳は、登り始めに急勾配がありつつ最後は緩めの勾配という少しトリッキーなレイアウトで、ここで総合勢がどう動くか。

自分の予想はこんな感じ。

ウラソフの登坂力に期待も込めての予想。

 

この日の逃げは6人、その中で山岳賞獲得に向けて積極的に動いたのはアントニー・ペレス(コフィディス)。

5つの山岳ポイントを先頭通過し、この日だけで27ポイントを獲得する荒稼ぎで一気に山岳賞トップに躍り出た。

 

残り20km手前、6つ目の2級山岳で逃げ集団からジュリアン・ベルナール(トレック・セガフレード)が飛び出して一人旅を開始。

一方メイン集団では、この山岳の下りでテイオ・ゲイガンハート(イネオス)とダヴィド・ゴデュ(グルパマ)の2人が落車してしまう…。

ゴデュはチームメイトの助けも借りて集団に復帰し、特に問題はなさそうな走りを見せている。

しかし、ゲイガンハートは一旦再スタートはしたものの、そのままリタイアとなってしまった。

幸い、重症では無く大事を取ってのリタイアみたいだけれども、これでイネオスは第1ステージのポートに続くエース級のリタイアという、かなり苦しい展開に。

昨年のパリ~ニースでは実現しなかったユンボ対イネオス、期待していたんだけどなぁ…。

 

残り15km、メイン集団からカヴァニャがアタック、その動きにルイスレオン・サンチェス(アスタナ・プレミアテック)が付いていき、唯一逃げ続けるベルナールを2人で追いかける形に。

最後の登坂に入り、そろそろベルナールに追いつく…というタイミングで、なんとカヴァニャがメカトラでストップしてしまう。

前日の個人TTに続いて、今回のパリ~ニースでは「持ってない」感が続くカヴァニャ…。

サンチェスはそのままベルナールに追いつき、そして追い抜いて単独先頭に。

 

メイン集団では、残り4km辺りの激坂区間でピエール・ラトゥール(トタルディレクトエネルジー)がアタックを仕掛けるも決まり切らず。

ラトゥールは残り3km辺りでまたアタックを繰り出し、そしてそれに反応したのは…なんとログリッチ

ラトゥールを追い抜き、追走してきたヨン・イサギレ(アスタナ)を振り切り、そして先頭のサンチェスも軽々と抜き去り、そのまま独走を開始!!

もちろん中間ポイントのボーナスタイムも獲得、そしてメイン集団に12秒の差を付けてフィニッシュ!

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文字通り他の追随を許さない、圧巻のステージ勝利!!

強い。

いや、強すぎる。

山頂フィニッシュも圧倒的な勝利をしてしまうTT型のオールラウンダーとか、どうやって止めればいいんだろうか。

これで、前年優勝のマクシミリアン・シャフマン(ボーラ)に35秒差を付けての総合首位に立ったログリッチ

もう、そのままリーダージャージをキープし続けるイメージしか湧かない。

 

第5ステージ

終盤に2つの起伏はありつつも、今大会最後の集団スプリントになりそうな平坦ステージ。

自分の予想はこんな感じ。

ここまではあまりトレインが機能していない(前に出るのが早すぎる?)グルパマの復調に期待。

 

この日の逃げは、なんと…無し!

向かい風基調の平坦ステージという逃げには向かない条件だけれども、これは珍しい(とか言いつつ、昨年のツールでもあったな…)。

これについて、J SPORTS解説の飯島誠さんが「今年はツール出場チームが既に決まっているから、ツール主催者である(そしてパリ~ニースの主催者でもある)ASOにアピールする必要が無い事も影響しているのでは」とコメント。

なるほど…、なんともロードレースらしい理由だ。

残り72km、オリバー・ナーセン(AG2Rシトロエン)のアタックによって11人の逃げ、しかも何故かベルギー人のみという逃げが一旦形成されるも、これも程なくして吸収され、レースは淡々と進んでいく。

 

残り35km、集団で落車が発生。

ユンボの選手がかなり巻き込まれている…というかユンボの選手ばかり転んだこの落車で、トニー・マルティンがリタイアとなってしまう。

エースのログリッチにダメージが無かったのはユンボにとって不幸中の幸いかもしれないけれども、最強の牽引役であるトニー・マルティンの離脱は痛すぎる…。

 

2度目の中間スプリントで少し動きはありつつ(シャフマンがこの日2回目の2位通過で合計4秒のボーナスタイム獲得)、レースは集団スプリントへ。

残り3km辺りではトレック、残り2km辺りではグルパマが先頭で主導権を握ろうとするも、残り1km通過時に先頭を固めているのはやはりドゥクーニンクのトレイン。

そのまま高速牽引で他のチームの動きを封じ、唯一横に並ぼうとしてきたアルケア・サムシックのトレインも、モルコフとサム・ベネットの黄金コンビの前には全く歯が立たない!!

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これぞ最強チームによる王者のスプリント!!

リードアウト役のモルコフも早々に勝利を確信して手を上げるほどのサム・ベネットの圧勝!!

正直言って、ドゥクーニンクの支配力、そしてサム・ベネットの勝ち切る力が頭一つ抜けているように見える。

適切なタイミングで前に上がってくるチームとしての判断力、残り1.5kmで前に割り込まれるもしっかり横から前に上がるサム・ベネットの対応力、他チームのトレインが追い縋れないほどの牽引を見せるモルコフのリードアウト、そしてそこからしっかり発射されるサムベネットのスプリント力。

もはや手が付けられない状態。

今年もウルフパックは勝利を量産しそうだ。

 

第6ステージ

1級を含む5つの山岳、そしてラストも緩いながら登り勾配と、逃げ向きなレイアウトの(気がする)第6ステージ。

自分の予想はこちら。

なんという安直な予想、そして逃げに乗らないトーマス・デヘント(ロット)。

「逃げ王」デヘントが逃げないという事は、実は逃げ切りが難しいレイアウトなのかも…?

 

この日の逃げは6人、山岳賞トップのペレス、ケニー・エリッソンド(トレック)、アレクセイ・ルツェンコ(アスタナ)、ヴィクトール・カンペナールツ(クベカ・アソス)、ジュリアン・エルファレス(EFエデュケーションNIPPO)、ジョナタン・イヴェール(B&Bホテルズ KTM)という、なかなか強力なメンバー。

しかし、意外とメイン集団とのタイム差が離れない…最大で4分も開かないのは、総合から2分24秒遅れのエリッソンドがいるからか…。

ペレスはこの日も4つの山岳ポイントを先頭通過して、山岳賞ほぼ確定といったところ。

目的を果たしたペレスは残り58km辺りで逃げから脱落(というか離脱か)、その後他の選手もポロポロと零れ落ちていき、残り20km辺りからはエリッソンドの一人旅に。

 

残り14km辺り、エリッソンドまで約10秒のところまで迫っていたメイン集団からヨナス・ルッチ(EF)が飛び出してエリッソンドと合流、ルッチが積極的に前を牽き(というかエリッソンドに余力が無い?)メイン集団とのタイム差は一時的に20秒まで広がる形に。

残り3.4km辺りでルッチはエリッソンドを突き放して独走を開始するも、メイン集団は残り1kmでこれを捕まえる。

平均5%の勾配でサム・ベネットなどのピュアスプリンターが遅れる中、残り500mで先頭で加速したのはギヨーム・マルタンコフィディス)、その背後にはログリッチ、そしてさらに後方にクリストフ・ラポルトコフィディス)やマシューズといった「登れるスプリンター」が続く。

マルタンラポルトのための動きのようにも見えたけれども、この勾配での先導はラポルトには有利に働かず、背後にいたログリッチがそのまま先頭に飛び出し、そしてそのまま誰も並ばせない!

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リーダージャージ着用のログリッチ、今大会2勝目!!

そしてボーナスタイムも獲得して総合首位の座をガッチリ固めていく!

ステージ2位にラポルテ、3位にマシューズという「登れるスプリンター」が入っているので、フィニッシュのレイアウト的には「そういう」ステージだったはずなんだけれども、相変わらず総合系らしからぬパンチ力を見せるログリッチ

昨年のブエルタでもそうやって稼いだボーナスタイムが最後に結果を左右したので、やはり今年もそのスタイルで積極的にステージを狙うのだろう。

これで総合2位シャフマンとの差は41秒。

翌日がクイーンステージとはいえ、これでほぼ決まりかな…。

 

第7ステージ

新型コロナウィルスの影響でコース変更があり序盤の難易度が下がったとはいえ、昨年同様コルミアーヌ峠を登るクイーンステージ。

なんだけれども、ログリッチが圧倒的過ぎて、すでに総合争いの趨勢は決まってしまった感もある中、自分の予想がこちら。

グリッチは誰も止められないというか、総合上位陣に純粋な登坂力でログリッチに勝てるメンバーがいなくないか…?

 

この日の逃げは13人、山岳ポイント稼ぎのペレス、中間スプリントポイント稼ぎのサム・ベネット(!)、そして逃げ切り狙い多数、「逃げ王」デヘント、2日連続逃げのエリッソンド、エースを失い解き放たれたイネオスのアンドレイ・アマドールとローランド・デプルスなどなど、多士済々なメンバー。

ペレスはこの日もしっかりとポイント回収に成功、サム・ベネットも残り31kmの中間スプリントをトップ通過と、逃げ集団はそれぞれの目的を果たしながら、最後のコルミアーヌ峠の登坂を開始。

その長く厳しい登りに続々と脱落者が出る中、残り4.7kmで先頭はジーノ・マーダー(バーレーン)単独に。

一方のメイン集団は、オマール・フライレ(アスタナ)の牽引が終了すると、ジョージ・ベネットが集団の先頭へ出て、ユンボがガッチリとコントロール

残り3km辺りでジョージ・ベネットからステフェン・クライスヴァイクに牽引が切り替わり、相変わらずユンボ支配下にあるメイン集団。

脱落者が続出するハイペースでの牽引の末にクライスヴァイクが仕事を終えると、満を持してユンボのエースが登場。

リーダージャージを着用するログリッチがアタックを仕掛ける。

この時点で残り1.6km、先頭とのタイム差は24秒ほど。

このログリッチのアタックにはシャフマンやベノートなどがしっかり反応し、そしてシャフマンがすぐさまカウンターアタックを仕掛けるも、これは決まらず。

この時点で先頭はログリッチ、シャフマン、ベノート、ウラソフ、ルーカス・ハミルトン(バイクエクスチェンジ)の5人に。

残り1km、ベノートの加速に被せてログリッチが再びアタック!!

しかしシャフマンが意地で食らいつき、ログリッチも無理せず一旦ペースダウン。

そう、総合で大幅にリードしているログリッチは別に無理する必要はなく、シャフマン(と他のライバル)に負けさえしなければ、マーダーは逃がしてもいいはず。

ペースが緩んだことでベノート、ウラソフ、ハミルトンも追いつき、これはマーダーの逃げ切りが決まったかと思ったその瞬間。

残り250mで、ログリッチがこの日3度目のアタックを仕掛ける!!

4人のライバルを置き去りにして、そして残り30mでマーダーも抜き去り、そのままフィニッシュ!!

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グリッチが2日連続、そして今大会3勝目となる圧巻の勝利!!

これで総合2位シャフマンとのタイム差は52秒に!

昨年のツールでは、「守りに入った」事が逆転負けを喫した要因の一つとも言われたログリッチが、貪欲に勝利を狙うその姿。

「容赦がない」ようにも見えるその姿勢は、ある意味では王者の正しい姿とも言える。

何せ、翌日の第8ステージで何が起こるかなど誰にも分からないのだ。

不調、落車、メカトラ…、タイムを大きく失う可能性はいくらでもある。

今年こそツールの頂点に立つための、ログリッチの強い意志が感じられるような勝利に見えた。

 

惜しくも、本当に残り僅かの地点で勝利を逃してしまったマーダーは、あのタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)が総合優勝した2018年のツール・ド・ラヴニールでステージ2勝を挙げている有望株。

この日見せた登坂力は、きっとすぐ大きな勝利を掴むチャンスがやって来る、そう期待するのに十分なものだったので、これからも注目していきたい。

 

第8ステージ

前日に続きコース変更があり、周回コースで2級山岳を3回登り最後は緩い登りでのフィニッシュとなる、92.7kmと短い最終ステージ。

 

中継開始直前、ログリッチとゴデュが落車、ログリッチは復帰するもゴデュはそのままリタイアという情報が入ってくる。

そしてJ SPORTSでの中継開始。

映し出されるのは、レースパンツが左太ももから臀部にかけて大きく破れ、擦過傷の痕が痛々しいログリッチの姿。

解説の辻さんも「最後の勝負に響くかも」とコメントするように、これは大丈夫なのか…。

 

レース展開としては、ルッチ、デクレルク、エドワード・トゥーンス(トレック)、スヴェンエリック・ビストラム(UAE)の4人が逃げ、追走のボル、ワレン・バルギル(アルケア)、ステファノ・オルダーニ(ロット)がその逃げに合流しそうな形。

そんな中、残り48kmでルツェンコが落車し、かなり痛がっている様子。

今大会、落車が多すぎないか…。

その直後、追走が逃げに追いつき、そしてメイン集団から飛び出したデプルスも一気に先頭に合流する。

更に、ルイスレオン・サンチェスの動きをきっかけにマシューズやマッテオ・トレンティン(UAE)やディラン・トゥーンス(バーレーン)といった強力な選手が入った10人弱の追走集団が形成される。

 

残り25km、ここで大事件が発生。

なんと、メイン集団からログリッチが遅れている!?
映像では捉えていなかったけれども再び落車してしまったらしく、レースパンツの右側も破れている上に、更にはバイクもスペアに交換している。

もちろんチームメイトが下りてきて、ログリッチの集団復帰の為に全力で牽引をするも、このタイミングでメイン集団も猛然とペースアップを開始!?

どうやら、逃げ集団とのタイム差が1分45秒ほどまで広がったため、逃げ集団にいる総合17位バルギル(総合2分50秒遅れ、総合2位のシャフマンとのタイム差は1分58秒)を放置する訳にはいかないボーラ、そして総合3位のウラソフと総合4位のヨン・イサギレを抱えるアスタナが中心となって、逃げとの差を詰めるためにペースアップを図っている模様。

 

人数を揃えるメイン集団に対して、ログリッチはジョージ・ベネット、サム・オーメン、クライスヴァイクの3人のアシストも早々に使い果たしてしまい、既に単独でメイン集団に追いつこうとしているような状況。

これは厳しい…。

そして落車から10kmほど、残り15km辺りで遂にログリッチはバーチャルで総合リーダーの座から滑り落ちる事に…。

痛めた体で、そしてアシストを失い、それでも一人で踏み続けるログリッチ

しかし、残酷にもメイン集団との差はどんどん広がっていく…。

盤石と思われたログリッチのトラブルによる総合首位陥落。

こんな事が起こるとは、一体誰が想像していただろうか…。

 

総合優勝はメイン集団内で争われる事となり、残り10km辺りでウラソフのアタック、残り5km辺りでヨン・イサギレのアタックなどはあったものの、逃げも飲み込んだメイン集団からは結局誰も抜け出せないままレースは進んでいく。

そしてハイペースなメイン集団に残った20人程のメンバーでのスプリント勝負となったフィニッシュ地点。

残り300m辺りで先頭に出てきたのはマグナス・コルト(EF)、そのまま200m辺りからスプリントを開始して、誰も寄せ付けない!!

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マグナス・コルト、登りも牽引もこなす万能型スプリンターの本領発揮の見事な勝利!

もはや果たしてスプリンターなのかよく分からないぐらい何でもこなせるのに、昨年のブエルタでも見せたようにこういうスプリントではキッチリ勝ち切るのは凄すぎる!

 

そして、しっかり先頭集団でフィニッシュしたシャフマンが、見事に連覇を達成!!

グリッチの陰に隠れる形にはなりながらも、第4ステージ2位に第7ステージ3位としっかり山岳ステージで上位に入り、そして個人TTでも13位に入った安定感は素晴らしかった!

おめでとう!!

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そしてメイン集団から約3分後、ログリッチがフィニッシュ地点へやってきた。

前日まで圧倒的な強さを披露して、そのままリードを守り切る事が確実視されながら落車によって総合15位まで転落した彼は、フィニッシュ後にまずシャフマンの元へと向かう。

勝者を讃え、祝福する為に。

絶望的な状況でも最後まで踏み続けたその姿。

そして勝者のシャフマンを祝福するその姿。

気高く美しいその姿を、我々ロードレースファンは絶対に忘れない。

 

筋書きの無いドラマ

改めて、総合順位を確認してみよう。

 

総合優勝:マクシミリアン・シャフマン(ボーラ・ハンスグローエ)

総合2位:アレクサンドル・ウラソフ(アスタナ・プレミアテック)

総合3位:ヨン・イサギレ(アスタナ・プレミアテック)

 

シャフマンが見事に2連覇を達成!!

昨年このレースで優勝するまでは総合系選手というイメージがあまりなかったシャフマンも、「パリ~ニース2連覇」という実績なら、もう誰にも文句は言わせない程の総合系ライダーだ!

 

アスタナは表彰台に2人送り込むというチーム層の厚さを披露。

特に、まだ24歳のウラソフは今後アスタナのエースとして大成する予感が漂ってきた!

 

そして、最終日にアクシデントで敗れてしまったログリッチ

今大会最強は、間違いなく彼だった。

どうやら落車の際に肩を脱臼していた(!?)なんて報道もあるみたいだけれども、まずは傷を癒して、また強く美しい姿を見せて欲しい。

 

「筋書きの無いドラマ」なんて表現はよく使われるけれども、ロードレースは本当に何が起こるのか分からないと、改めて実感させられるレースだった。

ただ、一つ気になったのは、今大会では落車が多いように感じた事。

変則日程による選手ごとの消化レース数の違いからくる「レース勘の差」によるものなのか、それとも何か別の要因があるのか…。

「ドラマ」は歓迎だけれども、「トラブル」は勘弁願いたいところ(ましてや、選手が傷つくようなトラブルはなおさら)。

グリッチを含め、ケガをした選手が早く良くなると嬉しいな。

 

何はともあれ、これでヨーロッパでの本格的なレースシーズンの幕が開けた訳だ。

ちょっとレースが多すぎて少し大変だけれども、しっかり楽しんでいくよ~!

それでは、また!!

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