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【レース感想】ティレーノ~アドリアティコ2021

超人たちの祭典

イタリア半島を西から東へと横断する、「2つの海を結ぶレース」ティレーノ~アドリアティコ。

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今年は驚くほど豪華なメンバーが集まっていて…

直近3年のツール・ド・フランス覇者

世界選手権優勝者

シクロクロス界から殴り込んできた怪物

  • マチュー・ファンデルプール(シクロクロス世界世界選手権優勝4回、アルペシン・フェニックス)
  • ワウト・ファンアールト(シクロクロス世界選手権優勝3回、チーム・ユンボ・ヴィスマ)

これらの選手以外にも強力な選手が紹介しきれないぐらい集まり、とてもパリ~ニースと並行開催とは思えないほど。

※事前の注目選手紹介はこちら

www.kiwaroadrace.com

 

そしてとりあえず、自分の総合争いの予想がこちら。

ベルナルとポガチャルどちらを本命にするか迷いつつ、と言うか「自分が推しのベルナルと迷っている時点で、ポガチャルが優勢なのは分かっている…」と思いながらも、それでもベルナルを本命に据える…。

ベルナルはケガ明けとはいえ、直前のストラーデ・ビアンケでの走りが良かったから(【レース感想】ストラーデ・ビアンケ 2021 - 初心者ロードレース観戦日和)、願望込みで期待してしまうのはファンならば仕方がない、そうでしょ?

 

そんな自分の予想はともかく、熱戦間違いなしの7日間がスタート!

 

第1ステージ

序盤に3つの起伏がありつつも後半はほぼオールフラット、集団スプリント間違いなしの第1ステージ。

 

この日の逃げは6人で、その内2人(ヴィンチェンツォ・アルバネーゼとサミュエーレ・リヴィ)はこのレースのタイトルスポンサーでもあるエオロ社がスポンサードするエオロ・コメタの選手。

アルバネーゼは3つの山岳ポイントの内2つを先頭通過して初日の山岳賞ジャージ獲得と、その役割をきっちりと果たす。

その後特に大きな動きはなく、終盤まで粘っていた逃げも残り10km程で全てメイン集団に吸収されて、海岸沿いの一直線な道にあるフィニッシュ地点に向かってレースは加速していく。

 

広すぎる道幅になかなかカオスな状況になりながら、コース左端からユンボのトレインがロット・スーダルのトレインを追い越して、残り3km辺りで集団の先頭を確保。

そのまま先頭を牽き続けるのかと思いきや、残り1kmを切るとユンボのアシストは全員力を使い果たして後方へ下がってしまい、その隙にUAEのトレインがフェルナンド・ガビリアを引き連れて先頭に躍り出る。

しかし、ファンアールトはそのUAEトレインの後ろに上手く張り付き、そのままUAEのリードアウトを利用してガビリアとほぼ同時にスプリントを開始!

ファンアールトが圧倒的な加速を見せて、あっという間にガビリアを引き離す!

このままファンアールトの圧勝かと思いきや、後方からカレブ・ユアン(ロット)がもの凄い伸びを見せて追い縋る!

ユアンが迫る、ファンアールトも勢いを失わずに踏み続ける…!

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大迫力のスプリントを制したのは、ファンアールト!!

圧倒的な出足の良さ、そしてそのスピードを継続する能力は、やはり普通のスプリンターとは一線を画している!
直前のストラーデ・ビアンケでは「体がロードレース仕様に戻り切っていない」みたいなコメントをしていたはずだけれども、それで勝つんだからやっぱり少しおかしいよ、この人(誉め言葉)。

 

敗れはしたものの、ファンアールトに唯一迫ったユアンの伸びも、明らかに他の選手とは異なるスピードだった。

やはり、スプリントの純粋なトップスピードでは現役最強クラスなのは間違いないと、改めて認識。

 

ちなみに、この日の自分の予想はこんな感じ。

「位置取りが上手くいかなかったユアン」はそれでも相当強かったけど、いい発射ができたファンアールト相手は流石に厳しかった。

 

第2ステージ

中盤からアップダウンの連続、そして緩めの登りフィニッシュという事で、スプリンターには厳しく、そして総合勢には大きな影響がなさそうな第2ステージ。

この日の自分の予想がこちら。

ファンアールトの登坂力ならこのぐらいは全く問題ないけど、ファンデルプールが生き残るかは…結構微妙な気がしていた。

 

この日の逃げは6人、そしてその中には山岳賞ジャージを着用するアルバネーゼの姿が。

2日連続の逃げと言う積極的な動きで、山岳賞に向けて意欲満々といったところか。

 

しかし、この日最初の山岳ポイント(残り30.6km地点)への登坂で、メイン集団がイネオスの牽引によってペースアップして、無情にも逃げを飲み込んでしまう。

残り34km、ミハウ・クフィアトコフスキ(イネオス)が牽引する集団から飛び出したのは、なんと総合優勝候補の1人であるベルナル!?

この驚きのアタックに反応したのはカスパー・アスグリーン(ドゥクーニンク)とジャスパー・デブイスト(ロット)の2人、更にはマルク・ソレル(モビスター・チーム)やセルジオイギータ(EFエデュケーション・NIPPO)やティム・ウェレンスもこの動きに乗じてメイン集団から飛び出すも、先行していた3人も含めてメイン集団が全て吸収する。

しかし、その直後にメイン集団からアタックを仕方のは、これまたイネオスのパヴェル・シヴァコフ。

この動きにサイモン・イエーツ(チーム・バイクエクスチェンジ)、ジョアン・アルメイダ(ドゥクーニンク)、ミケル・ランダ(バーレーン・ヴィクトリアス)が同調して、4人の先頭集団を形成。

メイン集団は総合リーダーを抱えるユンボが牽引するも、アシストがすでにトビアス・フォスとティモ・ローセンの2人しか残っておらず、タイム差は最大で30秒を超える程までに広がっていく。

 

フィニッシュに向かう緩い登りに入ると、流石にユンボに代わってUAEチームエミレーツが集団牽引を開始。

残り2km辺りで先頭からサイモン・イエーツが遅れ、そして直後にシヴァコフがアタックするもこれは封じられ、そのカウンターで今度はアルメイダがアタックを仕掛けて抜け出しに成功!

約10秒離されているメイン集団はイネオスのトーマスが猛牽引を見せ、アルメイダを射程圏に捉える!

そしてこのタイミングでメイン集団から飛び出したのは、アルメイダの逃げ切りが厳しいと判断したアラフィリップ!

抜け出したアラフィリップはフィニッシュ間近、しかし後方からはファンデルプールとファンアールトが猛然と迫って来る…!

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アラフィリップが両手を広げて余裕のフィニッシュ!

というか、相変わらずガッツポーズをするのが早いって!

危うくファンデルプールに抜かれるところだったぞ…(汗

「やらかし」の前科(【レース感想】リエージュ~バストーニュ~リエージュ 2020 - 初心者ロードレース観戦日和)があるのだから、ホント気を付けてくれよな…!

ただ、アルメイダが厳しいと見るや飛び出した辺りは、本当に素晴らしい判断としか言いようがない。

色々と「アラフィリップらしさ」が爆発したフィニッシュシーンだった。

 

第3ステージ

前日のコースをマイルドにしたような、若干の起伏と緩めの登りフィニッシュというレイアウトの、これまたスプリンターには少し厳しくパンチャー向けなステージ。

 

自分の予想がこちら。

前日は勾配の厳しさにポジションを下げてしまい後方からのスプリントとなったファンデルプール、この日はいけそうな予感。

 

中継開始直後、第1ステージで2位に入っていたユアンが1人で集団から遅れる姿が映し出されている。

どうやら胃腸系のトラブルのようで、そのままリタイアとなってしまった。

トップスプリンターであるユアンのリタイアは残念で仕方がない…。

 

この日の逃げは5人、メイン集団とのタイム差は最大で9分にまで広がっている。

「もしかしたら逃げ切りもあり得る?」と少し思ったりもしたけれども、ドゥクーニンクやアルペシンが牽引する集団はじわじわとペースを上げていき、残り20km地点でタイム差は1分強にまで縮まってくる。

 

残り3.5km、そろそろ逃げが捕まりそうというこのタイミングで、メイン集団の比較的前方で落車が発生してしまう。

残り3km以内に入っていないから、離れたらタイム差が付いてしまうという状況で、ベルナルを含むイネオスの選手が数人足止めを食らっている…!

どうやら落車はしていないようだけれども、このままではメイン集団と離されてしまう、そしてタイム差が付いてしまうぞ…。

 

残り3km辺りで逃げを飲み込んだメイン集団は主導権が激しく入れ替わり、残り1kmで先頭を走るのはドゥクーニンクのゼネク・スティバル、そしてその後ろにはアラフィリップとエーススプリンターのダヴィデ・バッレリーニがしっかりと控えている。

ここで、先頭のスティバルがアタック…と同時に2番手のアラフィリップがわざとペースダウン!
ドゥクーニンクの作戦が上手く決まり、スティバルは一気に5m以上のリードを作る!

この動きに即座に反応したのはファンアールト。

このファンアールトの追い上げは凄まじく、スティバルとの差をあっという間に詰めて残り250mでキャッチ、そして最終コーナーを抜けてそのままスプリントを開始!

残り150m、ファンアールトの後方に位置取りしていてほぼ同時にスプリントを仕掛けたファンデルプールが横に並ぶ!

10年来のライバル同士による直接対決となったスプリント!

前に出たのは…ファンデルプール!!

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腕組みパフォーマンス、そして雄たけびを上げてのガッツポーズ!

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というか、動画で見て欲しい。

もの凄くかっこいいから。

この腕組みフィニッシュはどうやら「モトGPのライダーの真似」との事。

いや~、かっこよかった。

 

敗れて2位となったファンアールトは、なんだかファンデルプールのアシスト(先行したスティバルを捕まえてからのリードアウト)のような形になってしまった…。

今回のスティバルのように終盤で1人抜け出した際に、後方から誰も追いかけたがらずにお見合いになる理由が、改めてよく分かった。

最初に追いかける選手は明らかに不利になる。

ただ、そうなると分かっていながらも自分の力を信じて追いかけたファンアールトの動きは、個人的には素晴らしかったとも思う。

 

そして落車による足止めを食らっていたイネオス勢は、ベルナル(18秒)、トーマス(19秒)、シヴァコフ(20秒)と、エース候補の3人がタイム差を背負ってしまう結果に…。

あと数百mだけでもフィニッシュ地点に近ければ、3km救済措置の範囲内だったのに…。

自分がベルナルのファンだからとか関係なく、こういったトラブルで総合争いに水を差されるのは、例えどのチームに不利に働いたとしても残念…。

 

第4ステージ

総合争い最大の山場、超級山岳フィニッシュとなるクイーンステージ!

そんな超重要な第4ステージ、自分の予想がこちら。

相変わらずベルナルへの期待と願望が抑えきれていないTweetである。

 

この日の逃げは5人、メイン集団とのタイム差は最大で9分ほど。

メイン集団はUAEバーレーンが牽引していたみたいだけれども、最後の超級山岳の入り口でもタイム差はまだ4分も残っている。

 

最後の登坂に入ると、イネオスがチーム全員でトレインを組んで集団の牽引を開始。

改めて「サルバトーレ・プッチョ→フィリッポ・ガンナ→ジョナタン・カストロビエホ→クフィアトコフスキ→ベルナル→トーマス→シヴァコフ」という並びを見ると、なんとも豪華だなぁ。

このイネオスの牽引にファンデルプールのような登れない選手はもちろん早々に遅れていくし、なんなら調子が上がっていない様子のクフィアトコフスキやシヴァコフも仕事ができない内に遅れていくほどの高速牽引は、容赦なくメイン集団を小さくしていく。

 

残り8km辺り、ベルナルが早めのアタックを仕掛ける!

これにはポガチャルがしっかり反応して、メイン集団もファンアールトのペース走法で2人に追いつく。

その直後、イネオスから今度はトーマスがアタック!

一度は防がれるも再度アタックしたトーマスは抜け出しに成功する。

残り5kmの中間スプリントポイント(ボーナスタイムあり)、先頭通過は未だ逃げているマッズ・ウルツシュミット、続いてメイン集団から飛び出したトーマス、そして3番手は中間スプリント手前でアタックを仕掛けたポガチャル!

ポガチャルはそのままトーマスに追いつくとそのまま軽々と抜き去っていき、更にはウルツシュミットも躱して先頭で独走を開始!

ポガチャルの独走を許すまいとメイン集団から飛び出したのは、第2ステージでは2分以上遅れてしまったサイモン・イエーツ。

持ち味のキレのある加速でポガチャルに追いつこうと試みる!

 

そして相変わらずファンアールトが牽引を続けるメイン集団から、なんとベルナルが脱落してしまう。

ベルナルは未だ全快ではないという事か、それとも痛みが再発したのかと心配になってくる…。

というか、「ファンアールトの牽きでベルナルが遅れる」というのは、昨年ツールのトラウマ(【レース感想】ツール・ド・フランス2020 第15ステージ - 初心者ロードレース観戦日和)が蘇ってくる…。

 

先頭で独走を続けるポガチャル、そしてそれに唯一迫って来るサイモン・イエーツ。

サイモン・イェーツのキレは「2日前の遅れは何だったんだ…」と思わせるぐらい素晴らしいもので、バイクカメラの映像ではポガチャルとサイモン・イェーツを同じ画面に捉える程まで近づいてきた。

それでも、ポガチャルは最後までペースを落とさずに登り続ける!

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これぞ王者の走り!

ポガチャルがクイーンステージで堂々たる走りを見せつける勝利!

既に貫禄すら漂い始めている若き王者が、その登坂力でライバルを全て蹴散らして総合首位に立つことになった。

 

この日までリーダージャージを着用していたファンアールトは、ポガチャルから45秒遅れてステージ9位でフィニッシュ。

いやいや、第1ステージで集団スプリントを制した選手がこの位置にいるのは、ポガチャルとは別の意味で凄すぎないか!?

このクイーンステージを終えての総合成績はポガチャルと35秒差の2位と、まるで総合系ライダーのような順位に。

まさに「脚質ファンアールト」、恐るべし…。

 

第5ステージ

激坂が登場するこのレース恒例の「壁ステージ」。

今年は中盤以降の周回コースを4周、つまり最大勾配19%のヴィア・ヴァッレ・オスキューロを含む激坂の連続を4周する、かなり厳しいレイアウト。

自分の予想がこちら。

直観ではなく直感なので、全くアテにはならない模様。

 

アタックの連続によって最初の1時間の平均速度が約55km/hという高速の展開から、最終的に形成された逃げは5人。

ガンナが逃げているのは、これはイネオスが何か仕掛けるつもり?

それとも…?

 

しばらくは大きな展開の無いまま周回コースに突入。

冷たい雨の降る中、2周回目で仕掛けたのはファンデルプール。

そして集団も割れている状況下で、なんとこの日の優勝候補であるアラフィリップがポジションを下げていく。

メカトラなのかよく分からない不思議な下がり方だったアラフィリップは、この時点でこの日の勝負権を失う事に。

 

ファンデルプールのペースアップに付いていけたのは、ポガチャル、ファンアールト、ベルナル、イギータなどの有力選手を含む10人強ほど。

ハイペースを刻むこの追走集団は、そのまま残り57km辺りで逃げも吸収してしまう。

そしてその直後にアタックを仕掛けたのは、なんと前日は遅れる姿もあったベルナル。

この動きに付いてきたのはファンデルプール、ポガチャル、ファンアールト、イギータの4人。

「なんだかワンデーレースのような有力選手同士の削り合いの様相を呈してきたな」なんて思っていたら、残り52km地点でまたしてもファンデルプールがアタック!

レース後のインタビューによると「寒かったから早めに仕掛けた」との事。

残された4人は前日の山岳で大きく遅れているファンデルプールを無理に追う必要はないため、ファンデルプールは完全に独走状態に突入する。

 

無理してペースを上げない追走集団には後方から数人の選手が追いつき、更には残り50km地点でポガチャルにメカトラが発生。

総合リーダーをトラブルで置き去りには出来ず更にペースを落とす追走集団を尻目に、ファンデルプールはタイム差をどんどん広げていき、残り40km地点で追走との差は1分、その後もタイム差は緩やかに広がっていく。

 

残り25km辺りでファビオ・フェリーネ(アスタナ・プレミアテック)、マルク・ソレル(モビスター・チーム)、アレッサンドロ・デマルキ(イスラエル・スタートアップネーション)の3人が追走集団から飛び出して30秒程のリードを作るも、約3分離れているファンデルプールに届くのは厳しいように思える。

もうこのまま終わりかなと思っていたら残り18km、激坂でポガチャルが追走集団から飛び出した!

もちろんファンアールトはこれを追いかける、他の選手が付いてこれないような加速で追いかけるが…、ポガチャルは更に速いペースで逃げる!!

ポガチャルはそのまま前方の3人に追いつき、そして残り15km辺りで3人を突き放してファンデルプール目掛けて追走を開始!

ただ、残り10km地点でファンデルプールとのタイム差は2分10秒強あり、ポガチャルのペースが後方のファンアールトも追いつけないぐらい速いとしても、さすがに厳しいか。

そんな事を思っていたら、ポガチャルはそこから更にペースを上げて後方のファンアールトとの差を開き、そして前を逃げるファンデルプールとの差がもの凄い勢いで縮まっていくではないか…!

先頭で逃げるファンデルプールは、明らかにペースが落ちているというか、少し様子がおかしい。

あぁ、2年前の世界選手権の時と同様にファンデルプールはハンガーノックだ…。

そういえば、あの時も冷たい雨が降る中での過酷なサバイバルレースだったな…。

 

後ろからはポガチャルがもの凄いペースで迫ってきている。

残り4km、タイム差は1分10秒。

残り3km、タイム差は53秒。

残り2km、タイム差は28秒!

残り1km、タイム差は16秒!!

ポガチャルの前方にはファンデルプールの背中が見えている!!

 

軽快に踏み続けるポガチャル、そして喘ぎ苦しみながらもなんとか踏み続けるファンデルプール!

フラフラになりながらもファンデルプールは粘り続ける!

そして最後の坂を、なんとか1人で登り切った!!

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ガッツポーズできない、顔も上げられない、そんな限界状態でのファンデルプールのフィニッシュ…!

そしてファンデルプールはそのまま倒れこみ、しばらく立ち上がれない。

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文字通り全てを出し尽くしたファンデルプール。

まるで敗者のようにうずくまる勝者の姿、己の全てを出し切った男の姿は、とても美しく思えた。

 

そしてファンデルプールの10秒後、ケロリとした表情でポガチャルがフィニッシュ。

後方のファンアールトに39秒の差を付け、総合優勝をぐっと引き寄せた形に。

しかし、あれだけの走りを見せて、この余裕の姿…。

ちょっとタフすぎやしないかい?

 

第6ステージ

少し起伏はありながらも集団スプリントが予想される平坦なステージ。

自分の予想がこちら。

ユアンが去り、ファンアールトは前日消耗していそうという事で、バッレリーニをチョイス。

 

前日と違って穏やかな晴天の下、逃げた6人は最大で6分30秒ほどのタイム差を稼ぐ。

そしてメイン集団はUAEが牽引して先頭とのタイム差を徐々に縮めていく…けれども、その縮まり方はかなり緩やか。

残り30kmで3分強、残り20kmで2分45秒、そして残り10kmで2分強。

これは流石に逃げ切りが確定だ。

先頭に残っている5人でのステージ勝利争いに。

  • ウルツシュミット
  • ブレント・ファンムール(ロット)
  • ネルソン・オリヴェイラ(モビスター)
  • ヤン・バークランツ(アンテルマルシェ・ワンティゴベールマテリオ)
  • シモーネ・ヴェラスコ(ガスプロム・ルスヴェロ)

 

5人は残り1kmを切ると、スプリントに向けた牽制状態に。

そして残り500m、テクニカルな連続コーナーに突入、先頭はオリヴェイラ、2番手にはウルツシュミット。

コーナーを抜けても隊列は変わらず、そして3番手のバークランツがスプリントの為に腰を上げると、ほぼ同時にウルツシュミットが良い加速を見せて先頭へ!

そのまま踏む続けるウルツシュミット、後方からファンムールも迫って来る!

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小集団スプリントを制したのは、繰り下げで山岳賞ジャージを着用するウルツシュミット!!

第4ステージでも積極的に逃げていたウルツシュミット、その頑張りが報われるワールドツアー初勝利!

更には5年振りの勝利と言う事で、フィニッシュ後には涙を流す姿も。

ワールドチーム登録2年目のイスラエル、ここまでは大型補強ばかりが目立っていた感もあるけれども、着実に力を付けてきているのかもしれない。

 

第7ステージ

起伏もコーナーも少なく、純粋な出力勝負になりそうな個人TTステージ。

 

この日の予想は…必要ある?

ガンナが直近の個人TT8連勝という手が付けられない状態の為、「はいはい、またガンナでしょ」みたいな予想。

でも、正直なところ自分だけでなく多くの人がこう思っていたはず。

そしてポガチャルvsファンアールトは、今回の逆転はトラブル以外ではありえないけど、今後「タイムトライアルが勝負を分ける」ような状況になった際の参考になるはず。

そしてベルナルvsランダは、ベルナルが好調でいいタイム、そしてランダがバットデイなら、逆転もあり得なくは無い…気もする。

 

ガンナの出走直前、昨年の世界選手権で3位に入っていたシュテファン・キュング(グルパマFDJ)がスタート。

これがかなりいい走りで、それまでのトップタイムを12秒も上回って暫定トップに。

ガンナの数少ない対抗馬として挙げる人も多かったキュング、その期待に応える好走を見せてくれた。

 

そして、大本命であるガンナの登場。

殆どの人がその勝利を疑わない中、中間計測のタイムはキュングから4秒遅れている。

Twitterのタイムラインが少しざわつくも、それども多くの人はここからタイムを上げるだろうとまだ信じていたはずだ。

しかし、ここからガンナのタイムが伸びない。

決して悪い走りでは無かったけれども、最終的にキュングから5秒遅れの暫定2位でフィニッシュ。

これで個人TTの連勝は8でストップする事に。

まぁ、連勝なんて当たり前だけれどもどこかで止まるものだし、ガンナも人の子、そしてまだ24歳の若者だ。

また次に期待したい。

 

キュングのタイムが更新されないどころか、なかなか肉薄するようなタイムを出す選手が現れないまま、後は総合上位勢の出走を待つ事に。

 

まず良いタイムを出したのは、総合7位で個人TTに定評のある、そして個人TTでタイムを稼ぎたいアルメイダ。

キュングから18秒遅れの暫定5位のタイムをマークし、総合順位を一つ上げる結果に。

昨年のジロで大ブレイクしたアルメイダは、もう完全に「TTでタイムを稼ぐ系の総合選手」としての地位を確立したと言っていいでしょ。

 

そして個人的に楽しみにしていたベルナルは…残念ながらあんまり調子が良くなかったようで後半に失速してしまう。

ランダよりは14秒速かったけれども、TTが苦手なランダと比べてそのタイムは、イマイチだったと言わざるを得ない。

まぁ、第4ステージでは得意の登りでも失速したように、まだまだケガ明けからの調整段階という事かな(と信じたい)。

 

そして、総合2位のファンアールトが出走。

昨年の世界選手権でガンナに次ぐタイムをマークしたファンアールトの走りは、序盤から快調そのもの。

中間計測でキュングのタイムを1秒上回り、そして後半もペースを落とさず踏み続ける!

最終的にはキュングのタイムを6秒更新して、見事ステージ優勝!!

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ファンアールトは第1ステージに続く今大会2勝目!

集団スプリントを制して、山岳ステージでもクライマーを振るい落として上位に食い込み、そして個人TTで勝利

控えめに言っても意味が分からない、本当にとんでもない脚質の持ち主だな…。

 

そして最終出走のポガチャルも、かなりの好走を見せる。

タイムトライアルスペシャリストに混じって、ファンアールトから11秒遅れのステージ4位という好タイムをマーク!

そしてもちろん、これまでのリードを守り切っての総合優勝!!

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おめでとう、ポガチャル!!

山岳での圧倒的な強さ、TTでもスペシャリストばりの走り、更には激坂のステージでも驚きの独走でタイムを稼ぎ、そして全く崩れる気配の無い安定感を備える。

まさに圧倒的。

UAEツアーでも見せてくれたその「王者の走り」は、今回も全く揺ぎ無かった。

もはや「強い」というか「化け物のように強い」

改めて、総合系の選手としての驚きの完成度を披露した1週間になったと思う。

 

「超人」「怪物」「化け物」…そんな選手が増えていない?

改めて、総合順位を確認してみる。

 

総合優勝:タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ

総合2位:ワウト・ファンアールト(チーム・ユンボ・ヴィスマ)

総合3位:ミケル・ランダ(バーレーン・ヴィクトリアス

 

ポガチャルが2位と1分3秒もの差を付けて、見事に総合優勝!

「昨年のツール覇者」なんていう肩書すら小さく見えるような、そのぐらい圧倒的で隙の無い走りを披露する22歳の若者…、末恐ろしすぎる。

自分はポガチャルの事を「その才能の天井がどこにあるのか」なんて書いたけれども(【選手紹介Vol.12】タデイ・ポガチャル - 初心者ロードレース観戦日和)、未だにその天井は見えてこない。

次は一体どんな走りを見せてくれるのだろうか。

 

総合2位のファンアールトも、ポガチャルとは別の方向性ながらこれもまた「異次元」の走りを披露!

超級山岳フィニッシュのあるステージレースで、スプリントで勝利を上げつつ総合2位とか、こうやって改めて書いてみても違和感しかない。

そのポテンシャルは現状でもグランツールの総合以外ならなんでも獲れる可能性があるように見えるし、果たして今後どんな方向に才能を磨いていくのか、楽しみであり、そして恐ろしくもある。

 

総合3位に入ったのはバーレーンのエース、ピュアクライマーのランダ!

単独エースとしての座を求めてたどり着いたこのチームで、最低限の走りは披露できたと言ったところか。

そろそろグランツールの総合表彰台に登りたいところ、ここからが正念場だろうから頑張って欲しい。

 

ポガチャル、ファンアールト、ファンデルプールという、あのアラフィリップが常人に思えてくるほど異質でとびぬけた才能を改めて披露した3人の「超人」。

この3人の今後の走りが楽しみであると共に、自分が期待しているのはそんな「超人」を相手にしたライバルが、果たしてどのように立ち回るかだ。

力を磨き真正面から勝負を挑むのか、チームとしての連携で立ち向かうのか、それとも自らも「超人」のような驚きの走りを披露するのか(ベルナルには2000m越えの山岳ステージで全てをひっくり返す圧倒的な登坂力で勝利という「超人」ぶりを期待したい!)。

ロードレースの奥深さがそこには詰まっていて、私たちをきっと楽しませてくれるはず!

すぐそこに控えている春のクラシックシーズンも楽しみだ!

 

それでは、また!

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