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【レース感想】ツール・ド・フランス2020 第15ステージ

グラン・コロンビエール

2週目の最終日である第15ステージは、2つの1級山岳を通過してから最後は超級グラン・コロンビエールの山頂フィニッシュとなる超難関ステージ!

 

アクチュアルスタート直後から、序盤の中間スプリントポイントを目掛け、もしくは大逃げを決めるため、多くの選手がアタックを試みては吸収される、激しいレース展開に。

サム・ベネットとの差を縮める為に中間ポイントを稼ぎたいペテル・サガンも積極的に逃げに乗ろうとする!

しかしこれはベネット本人が張り付く事でしっかりと防がれてしまい、最終的にマッテオ・トレンティン、ピエール・ロラン、ミヒャエル・ゴグルなど8人の逃げ集団が形成される。

そして中間スプリント、メイン集団はこの日もベネット、ミケル・モルコフ、サガンの順で通過し、サガンは苦しい展開が続く事に。

まだ3週目もあるので分からないけれども、いよいよベネットのマイヨヴェール獲得が現実味を帯びてきたか…?

 

連続する2つの1級山岳は急勾配区間も含み、その厳しさに逃げ集団はいくつかに分裂してしまい、超級山岳突入時には先頭はロランとゴグルの2人のみになっている。

その一方メイン集団は、この日もユンボ・ヴィスマが猛烈な牽引を見せ、気づけば先頭との差は1分半ほど。

グラン・コロンビエールに突入してもその牽引は変わらず、ライバルたちのアタックを封じる高速ペースで山を駆け上がっていく。

っていうか、先頭牽いてるの、またファンアールトだよ…。

平坦牽引役でありながらスプリントステージで2勝、そして超級山岳でも高速牽引とか、控えめに言って頭おかしすぎる。

「パワーがある=体重がある=登りは弱い」という図式が成り立っていない…と思って調べたら、187cmで73kgしかないのか。

逆になんであれだけのパワーが出るんだろう…?

謎は深まるばかり…。

 

そんな事を考えながら見ていたら、メイン集団から遅れていく選手が2名。

え?

ナイロ・キンタナが遅れていく!?

前々日の落車の影響か!?

マジか…。

…で、もう1人はチーム・イネオスのジャージ…?

っていうかあの背格好はまさか…!

嘘だろ、おい…!?

エガン・ベルナルがついていけない…!?

超級山岳グラン・コロンビエールで、コロンビアが誇る2人のクライマー、キンタナとベルナルが脱落するという、大事件が発生!!

…かろうじて、キンタナはまだ理解できる。

前々日に落車しているし、ここ数年は調子の波も激しかったから、まだ分かる。

しかし、だ。

ベルナルがこんな風に遅れるなんて、一体誰が想像できただろうか?

確かに、ツール前から調子はイマイチだったけれども、第13ステージで少し遅れた以外はプリモシュ・ログリッチと同タイムでゴールし続けていたのに。

もしかしたら、この日もフィニッシュ手前でログリッチやタデイ・ポガチャルのアタックに付いていけずに、少しタイムを失うかもとは思っていた。

けれども、山頂のフィニッシュ地点まで13km以上も残して、まだ他のチームのアシストも数人ずつ残っているような段階で、こんな遅れ方をしてしまうとは全く想像していなかった…。

集団から離れていくキンタナの、そのさらに後方でベルナルは全くペースを上げられない…。

あっという間に1分以上、そしてそのままズルズルとタイム差が広がり続ける…。

この遅れ方は「少し調子が悪い」とか、そんな次元ではない…。

まさかの、特大の「バッド・デイ」。

それがこの勝負所、グラン・コロンビエールと重なってしまっては、どうしようもない…。

ベルナルの2連覇の望みが絶たれ、そしてチーム・イネオスの前身、チーム・スカイ時代から続くツール・ド・フランス連覇が5で止まった瞬間だった。

 

2人の強力なライバルを突き放してなお、圧巻のユンボ列車の進行は止まらない。

ファンアールト、ロベルト・ヘーシンク、そして、2017ジロ覇者トム・デュムランという豪華な陣容による超強烈な牽きに対して、抵抗の意志を見せてアタックを仕掛けたのはアダム・イェーツただ1人。

そのイェーツのアタックもデュムランに封じられ、そしてデュムランは緩斜面区間でその世界一にも輝いたTT能力を遺憾なく発揮し、残り600mまで鬼の形相でペダルを踏み続ける。

あとはログリッチがスプリントで蹴散らすのみかと思われたが、残されたライバルたちも意地を見せる。

リッチー・ポートが持ち前のアタック力で早めに仕掛け、そして残り150mからはポガチャルが猛然とアタック!

もちろんログリッチもこれに反応するが僅かに届かず、ポガチャルが1着でフィニッシュ!

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再びログリッチを押さえてのステージ2勝目!!

フィニッシュ直前の登りスプリントはログリッチの得意分野のはずで、それを抑えて勝利するとは…!

ポガチャルのポテンシャル、恐るべし。

 

結局ベルナルは、先頭から7分20秒遅れでフィニッシュし、総合3位から11位へと一気に転落。

ポガチャルがボーナスタイムの分だけログリッチとの差を縮めて、40秒差の2位。

3位には1分34秒遅れのリゴベルト・ウランが浮上するも、この日の序盤に重要なアシストであるセルヒオ・イギータが落車によってリタイヤしまったのはかなりの痛手となりそう。

そしてマイヨ・ジョーヌはもちろん、「現役最強の総合系ライダー」と呼んで差し支えないであろうログリッチがガッチリとキープ。

最大の対抗勢力であったはずのチーム・イネオスが沈んだ今、ユンボ・ヴィスマのチーム力の高さもあり、圧倒的優位は揺るぎようがない。

同郷の驚異の新星、いや、「新星」などと呼ぶのが失礼なほどの実力者へと成長したポガチャルは、その若さと勢いを武器にどのように挑むのか。

はたまた、第17ステージに控える超級ラ・ロズ峠、この2000m越えの「天空の地」でコロンビア勢の巻き返しがあるのか。

総合争い、残る3週目も熱い戦いを期待したい!

 

そして、ベルナルとチーム・イネオスも、まだツール・ド・フランスが終わったわけではない!

ミハウ・クフィアトコフスキー、リチャル・カラパス、ジョナタン・カストロビエホ、そしてケガから復調してきたパヴェル・シヴァコフ辺りには、またとないステージ狙いのチャンスのはず。

普段はアシストに徹している彼らにも、ぜひ暴れまわって欲しい!

ベルナルだって、それこそ第17ステージの高地での登坂は一番の得意分野のはずだ。

休息日でしっかり調子を整え、度肝を抜くような圧倒的なクライミングを披露して、前年王者の実力と矜持を示してくれたら、嬉しいなぁ。

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