完全復活!!
「横風が猛威を振るうかも…」と囁かれる、160.6kmの平坦ステージ。
アクチュアルスタート直後に形成された逃げは8人…って、なんだこのメンバー!?
トーマス・デヘント(ロット・スーダル)、カスパー・アスグリーン(ドゥクーニンク・クイックステップ)、ニルス・ポリッツ(ボーラ・ハンスグローエ)、グレッグ・ファンアーベルマート(AG2Rシトロエン)、セーアン・クラーウアナスン(チームDSM)、トムス・スクインシュ(トレック・セガフレード)、ゲオルク・ツィマーマン(アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)、ヨナス・リッカールト(アルペシン・フェニックス)という、超強力なメンバー。
流石にメンバーが豪華すぎる事と、そして総合で1分49秒遅れのアスグリーンがいるという事で、メイン集団も本気で追走してこれを捕まえに掛かる。
ここで、捕まるのを嫌がったファンアーベルマートが単身で抜け出し、更にはメイン集団から新たに飛び出したロジャー・クルーゲ(ロット)が合流し、新しい逃げ集団を形成。
メイン集団もこの2人の先行を容認してようやく落ち着き、懸念されていた横風の影響もなく、スプリントステージらしい平穏な雰囲気でレースは進んでいく。
残り56.3km地点の中間スプリントポイントは、ファンアーベルマートが先頭通過。
そして3位通過を争うメイン集団は、ミケル・モルコフ(ドゥクーニンク・クイックステップ)のリードアウトに導かれたマーク・カヴェンディッシュが獲るかと思いきや、ソンニ・コルブレッリ(バーレーン・ヴィクトリアス)が先着に成功する。
大きなタイム差は許されない(最大でも1分ぐらい?)ながらもかなり粘っていた2人の逃げも、残り5kmで20秒を切るぐらいまで迫られて、流石にこれは厳しい展開。
ペースを上げているメイン集団は、残り3.3km地点でアルノー・デマール(グルパマFDJ)の発射台であるジャコポ・グアルニエールが落車するというアクシデントはありつつ、直後に逃げを吸収する。
激しく位置取り争いが行われているメイン集団、主導権を主張して前に出てきているのはドゥクーニンクとアルペシンのトレイン。
先頭で引っ張るのはそれぞれジュリアン・アラフィリップとマチュー・ファンデルプールという、豪華すぎる2人!
残り2kmを切るとアルペシンのトレインは一旦ポジションを下げてトレックやDSMのトレインが上がってくるけれども、残り800m辺りからファンデルプールが再びアルペシンのトレインを力技で引っ張り上げる!
最強のスプリントチームであるドゥクーニンクのトレインと、マイヨジョーヌのファンデルプールが率いるアルペシンのトレインが両サイドに展開するという、もの凄い展開だ!!
ドゥクーニンクは前からダヴィデ・バッレリーニ、モルコフ、カヴェンディッシュの3人、アルペシンはファンデルプール、ヨナス・リッカールト、ティム・メルリール、ジャスパー・フィリプセンの4人!
残り350m、リッカールトが仕事を終えて下がると、メルリールとフィリプセンというエース級2人のアルペシンがやや前に出る!
しかし、カヴェンディッシュはこのままでは形成が不利と見るや、すぐさまフィリプセンの後ろに乗り換える!
メルリールの後ろからフィリプセンが飛び出すとほぼ同時に、逆サイドからカヴェンディッシュも飛び出す!!
カヴェンディッシュがやや先行、フィリプセンの外からナセル・ブアニ(アルケア・サムシック)も並びかけてくるけれども、カヴェンディッシュは前を譲らない!!
抜群の勝負勘と最後まで伸びる力強いスプリントで、カヴェンディッシュが今ツール2勝目!!
モルコフの背中からフィリプセンに乗り換える咄嗟の判断力は、痺れるほどのカッコ良さ…!!
そして完璧なタイミングでの飛び出しと、純粋に力強いスプリントも本当にお見事!
全盛期のカヴェンディッシュをリアルタイムでは知らないので、この表現が適切か少し自信が無いけれども、敢えてこう言いたい。
マーク・カヴェンディッシュ、完全復活!
これでツール通算32勝目。
エディ・メルクスの34勝まで、あと2つ。
そしてカヴェンディッシュは、1つ勝つと手が付けられないような「爆発力」に定評がある。
これは…ひょっとしたら今大会中にも見えてくる…?
そして、10年ぶりとなるマイヨヴェール獲得も、充分にあり得るぞ!
復活した「マン島の超特急」、その終着駅はどこになるのか楽しみにしていたい!