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【レース感想】ツール・ド・フランス2021 第7ステージ

あ、あなた方が逃げるんですか…

今大会最長の249.1km、最終盤にボーナスタイムが設定された激坂の2級山岳を擁する丘陵ステージ。

 

逃げ向きかな?

いやいや、ボーナスタイムを目指した総合勢がそのまま勝ってしまうかな?

それとも、好調の登れるスプリンターが生き残ったりするのかな?

…なんて考えていたんだけれども、アタック合戦の末に出来上がった逃げメンバーに、まぁ驚いた。

マチュー・ファンデルプール(アルペシン・フェニックス)とワウト・ファンアールト(チーム・ユンボ・ヴィスマ)が逃げるなんて聞いてないぞ!?

いやいやいやファンデルプール、マイヨジョーヌが何をやってるの!?

ファンアールトも30秒遅れの総合3位でしょ!?

しかもこの2人、「逃げに乗る」というか「逃げを形成した首謀者」だという…。

「俺たちにロードレースの常識なんて通用しないぜ!」とばかりにツールでも暴れ回る、規格外にもほどがあるシクロクロス出身の2人。

しかも、この2人以外の逃げメンバーも、驚くほど強力。

ヴィンチェンツォ・ニバリ(トレック・セガフレード、総合2分55秒遅れ)、カスパー・アスグリーン(ドゥクーニンク・クイックステップ、総合1分49秒遅れ)、マーク・カヴェンディッシュ(ドゥクーニンク、ポイント賞首位)といった各ジャージ争いに大きく影響しそうな選手もいれば、フィリップ・ジルベール(ロット・スーダル)、サイモン・イェーツ(チーム・バイクエクスチェンジ)、セーアン・クラーウアナスン(チーム・DSM)、マテイ・モホリッチ(バーレーン・ヴィクトリアス)といった、超一流のステージハンター達もぞろぞろと…。

 

こんな超強力な29人の逃げがガンガン協調して逃げる一方、メイン集団で牽引の責任を負わされたのは、総合2位のタデイ・ポガチャルを抱えるUAEチームエミレーツ

トタルエナジーズが積極的に手伝ってくれたりはしたけれども、この超厳しい展開に…流石に途中で匙を投げて、逃げに追いつくのは諦めモードに移行。

先頭とメイン集団のタイム差はあっという間に6分以上にまで広がり、早くも逃げ切りが「確定」する展開に。

 

残り133.7kmの中間スプリントポイントではカヴェンディッシュが危なげなく先頭通過して20ptを獲得。

10年ぶりのマイヨヴェール獲得に向けて、着実にリードを築いていく。

 

また、この日は今大会で初めて2級山岳(最大で5pt獲得)が登場し、その他にも3級山岳と4級山岳が2つずつ存在するので、山岳賞も大きく動き得る…というか、現在山岳賞首位のイーデ・スヘリンフ(ボーラ・ハンスグローエ、山岳ポイント5pt所持)が逃げに乗らなかった事で、山岳賞の首位が入れ替わる事が実質確定。

山岳賞ジャージ獲得という栄誉に向けて、激しい争いが繰り広げられる事に。

 

1つ目の3級山岳で真っ先に山頂目指して飛び出したのは、第4ステージで惜しくも逃げ切りに失敗したブレント・ファンムール(ロット)。

しかし、即座に反応したモホリッチがそのままファンムールを抜いて先頭通過、そしてそのまま2人で逃げ始める。

続いて登場した4級山岳もモホリッチが先頭で通過してポイントを獲得、そして先頭の2人にジャスパー・ストゥイヴェン(トレック)とヴィクトル・カンペナールツ(チーム・クベカ・ネクストハッシュ)が追いついてきて、先頭は4人に。

4人になってもモホリッチの優位は変わらず、次の3級山岳もモホリッチが先頭通過、2位通過はストゥイベン。

この時点でモホリッチは山岳ポイントを5ptまで積み上げて、スヘリンフに並ぶことに成功。

 

そしていよいよ、最大勾配18%を誇る2級山岳へ突入。

後半の急勾配区間でライバルを突き放したのは…モホリッチ!

単独先頭で山頂通過して山岳賞を確定させると、そのままステージ勝利に向けて独走を開始!

モホリッチはそのまま順調に4級山岳も超えて、フィニッシュに向けてひた走る!

 

一方のメイン集団も、2級山岳でかなり大きな動きが起こる。

まずは、ユンボのエースであるプリモシュ・ログリッチが、なんと集団から遅れてしまう…!?

第3ステージでの落車によるダメージは、残念ながら回復しきっていなかった…。

そして、遅れていくログリッチユンボのアシスト陣は助けない。

チームとしては、ログリッチのダメージが厳しい事をもちろん把握していて、「遅れても助けない」という方針が事前に定められていたという事か…。

昨年総合2位のログリッチ、今年のツールはここで一旦終戦となってしまった。

 

頂上付近では、また新たな動きが巻き起こる。

1分44秒遅れの総合9位、リチャル・カラパス(イネオス・グレナディアーズ)が切れのあるアタックで抜け出しに成功!!

更には逃げに乗っていたディラン・ファンバーレとの「前待ち」も見事に決まる!!

第5ステージの個人TTではタイムを失ったカラパス、これは総合タイムを挽回する大きなチャンスか!?

 

先頭を独走していたモホリッチはダウンヒルも危なげなくこなし、最終的に後続のストゥイベンに1分20秒もの差を付けてフィニッシュ地点に到着!

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ツール初勝利となるモホリッチ、これで全グランツールでのステージ勝利達成!!

若手のファンムールには格の違いを見せつけ、追いついてきたストゥイベンとカンペナールツという実力者も登坂力で突き放すという、圧倒的な走り!

先日のジロ・デ・イタリアでは頭から落ちる危険な落車でリタイアしていたので心配していたけれども、無事戻ってきて…というか早速強さを見せつけてくれて、本当によかった!

 

モホリッチのフィニッシュから約5分後、フィニッシュ地点の定点カメラが最終コーナーを抜けてきたカラパスの姿を捉える!

「お、無事に逃げ切ったか!」と一瞬思ったら…なんと数秒遅れてメイン集団もやってきているぞ!?

カラパスはそのまま集団に捕まり、同タイムフィニッシュ…!

2級山岳からの約18kmは、カラパスには少し長すぎたか…。

ただ、イネオスは今後もこうやって積極的な走りを見せてくれそうであり、期待が出来そうだ。

現状、総合争いでは実質ポガチャルが有利な立ち位置なのは変わらないけれども、ツールはまだ序盤も序盤、翌日の第8ステージからやっと山岳ステージが始まる。

熱い戦いが繰り広げられる事を期待したい!