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【レース感想】ジロ・デ・イタリア2022 第6ステージ

「トンネルを抜ける」とはこういう事か

イタリア半島の海岸線沿いをひたすら北上する、最序盤の4級山岳以外はほぼフラットなステージ。

フィニッシュの前レイアウトがテクニカルだった前日とは違い、最後は長い直線。

トレインの力と、個のスプリント力のぶつかり合いになりそうだ。

 

アクチュアルスタート後、「この日もドローンホッパー・アンドローニジョカトリの選手が逃げるのかな?」なんて思っていたら、なんと誰も逃げない…?

確かに、逃げ切りはまず間違いなく不可能なだけでなく、山岳ポイントもほとんど稼げない、逃げるうま味が少ないステージではあるけれども…。

とりあえず、観る側としてはただでさえ退屈になりがちな平坦ステージの道中がさらに退屈になってしまうから、この展開は避けてほしいというのが本音だけれども…。

そんな気持ちを汲み取ってくれた訳では無いだろうけれども、30kmほど走った辺りでディエゴ・ローザ(エオーロ・コメタ)が単独逃げを敢行。

ワールドチームでの経験も豊富なベテランが、プロチームらしい積極的な逃げを見せる姿、とても素晴らしいぞ。

 

一方のメイン集団は、中間スプリントもそんなに争わず、完全に空気が緩んだ「サイクリングモード」。

ローザを残り28.5kmで捕まえるまで、落車などのトラブルもない平穏な道中だった。

 

それでも、フィニッシュ地点が近づいて来ると、集団スプリントに向けて空気が一変。

スプリントチームが隊列を組んで横に並ぶ、臨戦態勢に。

残り5km、集団前方で良いトレインを作れているのは、グルパマFDJ、クイックステップ・アルファヴィニル、ロット・スーダル、UAEチームエミレーツイスラエル・スタートアップネーション辺り。

大きなラウンドアバウトを越えて残り3km、アンテルマルシェ・ワンティゴベールマテリオのトレインが集団の先頭に上がって来るけれども、グルパマのイグナタス・コノヴァロヴァスが素晴らしい牽きを見せて主導権を奪う。

コノヴァロヴァスの後ろには、マイルズ・スコットソン、ラモン・シンケルダム、ジャコポ・グアルニエーリ、そしてエースのアルノー・デマールが控える、盤石の態勢だ。

残り2.3km、コノヴァロヴァスが仕事を終えて下がると、イスラエルのトレインが先頭に上がってくる。

残り2km、ダヴィデ・バッレリーニ、ベルト・ファンレルベルフ、ミケル・モルコフ、マーク・カヴェンディッシュと、グルパマと双璧を成す強力なメンバーで構成されるクイックステップの隊列が、ファンレルベルフとモルコフの間で一旦分断してしまう。

それでも、モルコフがしっかりとカヴェンディッシュを引き連れながら位置を上げて、再度ファンレルベルフと連結。

しれっと普通にやっているけれども、モルコフの職人っぷりは相変わらず凄まじい。

残り1kmを切ると、やはり先頭でしのぎを削り合うのはグルパマとクイックステップ

ただ、クイックステップコフィディスの選手の動きによりファンレルベルフが思った以上に早く剥がれてしまい、一旦位置を下げる。

一方のグルパマは、シンケルダムが前日に続き素晴らしい牽引を見せ、主導権をガッチリと掴みに行く!

しかし、ここからが「世界最高のリードアウター」モルコフの真骨頂。

一旦位置を下げていたのも関わらず、カヴェンディッシュを連れながら徐々に位置を上げ、残り300mでグルパマから先頭を奪う!

モルコフはそのままデマールの進路を狭めつつ、少し早めのタイミングでカヴェンディッシュが発射!

そのカヴェンディッシュの背中を捉えているのは、ここまで息をひそめていたカレブ・ユアン(ロット)だ!

カヴェンディッシュはやはり仕掛けが早すぎたのか少し失速、ユアンがこのまま差し切って勝利…かと思ったら、行き場を失っていたデマールがユアンの後方から逆サイドへと回り込み、もの凄い加速を見せている!!

ユアンとデマール、ほぼ横並びでのフィニッシュ!!

どっちだ…!?

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写真判定でもその差は僅か、紙一重の激戦を制したのは…デマール!!

前日に約2年ぶりのワールドツアー勝利を挙げたデマール、完全にトンネルから抜け出して2連勝!!

行き場を失って万事休すかと思いきや、反対側に回り込んでそのまま差し切るとは…!!

ここ最近の不調は何だったのかと言いたくなるような、もの凄い強い勝ち方だった。

アシスト陣の働きも前日に引き続き本当にお見事、そしてエースのデマールが絶好調となると、現段階ではポイント賞の最有力候補ではないか?

長いトンネルから抜け出したデマール、勝利数をどこまで増やすか、そしてどれだけポイントを稼ぐか注目だ。