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【レース感想】ツール・ド・フランス2022 第2ステージ

現役最強へ…

今大会最初のラインレースとなる第2ステージは、フィニッシュ直前に「グレート・ベルト・リンク」という全長18kmにも及ぶ海峡を渡る橋を通過する、デンマークでの目玉ステージ。

大会ディレクターのクリスティアン・プリュドム氏が「デンマークの山岳」と語るこの「山場」は、当然ながら強風による分断の危険性をかなり孕んでいる…。

果たして、総合争いは早くも動き出すのか。

そして、過酷な条件を経てのスプリント争いはどのような形になるのか。

 

アクチュアルスタート直後、アタックを仕掛けたのは地元デンマーク出身のマグナス・コルト(EFエデュケーション・イージーポスト)。

コルトの動きにスヴェンエリック・ビストラム(アンテルマルシェ・ワンティゴベールマテリオ)、ピエール・ローラン(B&Bホテルス・KTM)、シリル・バルト(B&B)の3人が追随して、そのまま逃げ集団が形成される流れに。

4人の狙いはコース序盤に設定された3つの4級山岳、つまり…この日の山岳賞だ。

 

1つ目の山岳では、B&Bの2人がかなり早めの動きで揺さぶりを試みたけれども、結局はスプリント力に勝るコルトが先頭通過に成功。

そして、意外にもそのままコルトとビストラムの2人が先行、B&Bの2人は離されての追走と言う格好に…。

2つ目の山岳では、頂上直前のコーナーでコルトとビストラムがサイドバイサイドで激しく競り合い、これまたコルトが先着に成功した事で、コルトはこの日の山岳賞獲得を決定させる。

そして3つ目の山岳ポイントもコルトが先着、先程と違ってかなりの余裕をもって先頭通過したコルトは、地元の熱い声援にガッツポーズで応えるという素晴らしいファンサービス!

これぞ、ロードレース最大のイベントであるツール・ド・フランスの盛り上がり!

地元でツールが開催され、そしてそこで活躍するのは一体どれだけ気持ち良い事だろうか…!

 

一方のメイン集団は、強風の為に緊張感が高まる瞬間が何度かあったけれども、なんとか横風分断は起こらないまま、残り30km以上を残して逃げを全て吸収。

そして、残り20.5kmからはいよいよグレート・ベルト・リンクへと突入していく。

 

前日と違って晴れ渡った空が広がるデンマーク、まずはグレート・ベルト・リンクと海が描き出す風景のなんと素晴らしい事か!

CGかと思うような空撮…なんて思っていたら、いきなり落車が発生!?

マイヨジョーヌのイヴ・ランパールト(クイックステップ・アルファヴィニル)やこの日の優勝候補であるファビオ・ヤコブセンクイックステップ)なんかが巻き込まれているけれども、なんとか集団復帰に成功。

その後、風向きが横風ではなく向かい風基調だった事もあり、分断なんかは起こらないままなんとか橋を渡り切る事に。

 

さあ残すはあと僅か、ここから集団スプリントへ…と思った矢先、残り2.3kmで大規模な落車が発生!!

残り3km以内なのでタイム差が付かない救済措置圏内、そしてどうやら大きなケガ人がいなかったのは不幸中の幸いか…。

そして、ステージ勝利を争う主役級のスプリンターは大多数が生き残りスプリント体勢へ、ただやはり落車の影響で少し混沌とした様子だ。

残り1.5km、先頭を牽引するのはクイックステップ、エースのヤコブセンを含めて5人の選手が生き残っているか。

残り1km、チーム・ユンボ・ヴィスマはクリストフ・ラポルトがワウト・ファンアールトを引き連れて、アンテルマルシェもアンドレア・パスクアロンがアレクサンダー・クリストフを従えて位置を上げて来る。

先程まで良い形だったクイックステップの隊列は少し崩れ気味、その隙をついてトレック・セガフレードはジャスパー・ストゥイヴェンがマッズ・ピーダスンを前方へと導いている。

残り700mの直角コーナーを抜けて先頭はランパールト、ただしその背後にはトレックの2人が張り付いている格好。

単騎で位置を上げて来るのはダニー・ファンポッペル(ボーラ・ハンスグローエ)とカレブ・ユアン(ロット・スーダル)。

残り400mを切って下り基調の緩やかなカーブ、先頭はピーダスンを従えたストゥイヴェン、その横にはユンボのトレインもしっかり付いていっている。

真っ先に発射したのはピーダスン、そしてそこにファンアールトが反応して背中に飛び乗る!

その背後ではペテル・サガントタルエネルジー)とヤコブセンが激しい位置取り争い!

ファンアールトがインからピーダスンを抜き去る一方、アウトからはヤコブセンがもの凄い勢いで伸びてくる…!!

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ヤコブセンが差し切った!!

ヤコブセン、初出場のツールでいきなりのステージ勝利!!

少し混沌とした展開の中、最終盤は単騎での位置取り争いをしっかりとこなし、そしてとんでもない勢いでのラストスパート!

流石は最強のスプリントチーム、クイックステップのエース…!

もう「奇跡の復活」という枕詞は必要ない。

「世界最強のスプリンター」という称号を名乗る資質は、充分にある。

今大会でその称号を自分のものにしたって、何ら不思議ではない。

 

その一方、2日続けての2位となったファンアールトは、悔しさを滲ませながらもポイント賞トップでマイヨヴェールをキープ、そしてフィニッシュのボーナスタイム6秒のおかげマイヨジョーヌを獲得!

さらっと「2日連続の2位」って書いたけれども、個人タイムトライアルにスプリントと、違うカテゴリーでこのリザルトは…相変わらずちょっと意味が分からない。

ただ、ヤコブセンとのポイント差は僅か1pt。

ポイント賞争い、相当面白くなりそうだ。