2人の勝者
第4ステージは、序盤・中盤・最終盤に1回ずつ2級山岳が登場する、今大会で初めての明確な「逃げ向き」ステージ。
レムコ・エヴェネプール(スーダル・クイックステップ)が総合リーダージャージを一旦手放したい意図を公言した事もあり、逃げ切りでのステージ勝利だけでなく、選手によっては逃げる事でのマリア・ローザ着用の可能性も高まっていた。
2つの大きなターゲットがあるという事で、レース開始直後から激しいアタック合戦が繰り広げられる流れに。
その結果、逆に逃げがなかなか決まらず、なんと最初の2級山岳を越えてもまだ先頭集団は形成されない。
直後のダウンヒルを経てやっと形成された逃げ集団は、以下の7人。
- アンドレアス・レックネスン(チームDSM)
- オレリアン・パレパントル(AG2Rシトロエン)
- ニコラ・コンチ(アルペシン・ドゥクーニンク)
- ワレン・バルギル(アルケアサムシック)
- トムス・スクインシュ(トレック・セガフレード)
- アマヌエル・ゲブレイグザビエル(トレック)
- ヴィンチェンツォ・アルバネーゼ(エオーロ・コメタ)
これは…かなり良いメンバーの逃げ!
メイン集団をコントロールするスーダルは、この7人の逃げ切り、そしてマリア・ローザ明け渡しを視野に入れて、最大で5分強のタイム差を容認。
そこからは大きな動きが無いまま、先頭集団とメイン集団は4分強というタイム差で最後の2級山岳に突入していく事に。
残り7.2km、先頭で真っ先に仕掛けたのはコンチ。
静かに加速したコンチを、他の選手は一旦静観。
あまり急激にペースが上がったようには見えなかったけれども、ここでまずバルギルが脱落。
その直後、スクインシュがブリッジを架けてコンチをキャッチし、コンチはその直後に遅れていってしまう。
残り5.6km、ここでペースを上げたのはレックネスン。
決して急激なアタックでは無かったけれども、アルバネーゼとスクインシュは少し離されてしまい、これで先頭はレックネスン、パレパントル、ゲブレイグザビエルの3人に。
一方その頃、メイン集団はスーダルがアシストを全員使い果たし、イネオス・グレナディアーズが牽引する流れに。
気が付けば先頭とのタイム差は2分40秒、逃げ切りによるステージ勝利はまず間違いなく大丈夫だけれども、レックネスン(+1分40秒)もしくはパレパントル(+2分13秒)がマリア・ローザを獲得できるかは、決して「青信号」とは言えなくなってきたかも…?
残り4.5km、レックネスンがまたもう一段階ペースを上げる!
たまらずゲブレイグザビエルはすぐさま千切られ、しばらくするとパレパントルも突き放される!
ステージ勝利、そしてマリア・ローザ獲得に向けて会心のアタックを決めたように思えたレックネスンだったけれども、勾配が緩んだ区間でパレパントルが息を吹き返し、なんとレックネスンに再合流!
レックネスンとパレパントルはそのまま2人で2級山岳を通過し、フィニッシュまで残すは2.9kmの下り基調。
メイン集団とのタイム差は2分30秒ほど、この調子ならレックネスンのマリア・ローザ獲得はほぼ確実、あとは先頭2人によるステージ勝利の行方がどうなるかだ。
意外にもパレパントルが律儀に先頭交代に加わった事もあって、ペースを維持したまま残り1kmを通過した先頭の2人。
流石にそこからはマリア・ローザ獲得確実であるレックネスンの先頭固定でフィニッシュまでの距離を消化していく。
残り150m、パレパントルが腰を上げてスプリントを開始!
レックネスンも合わせて踏み込むけれども、スピードはあまり上がらない…!
パレパントルは勝利を確信して、大きなガッツポーズを見せながらのフィニッシュ!!
パレパントル、粘り強さと冷静さを見せての逃げ切り勝利!!
そしてこれがプロ3勝目にして、嬉しいグランツール初勝利!!
一旦離された際は「このままレックネスンだな~」と思ったけれども、まさかあそこから追いつく粘りを見せるとは…!
お見事!
そして、惜しくもステージ勝利を逃したレックネスンは…無事総合首位に立ち、マリア・ローザを獲得!
ノルウェー期待の大器は、このリーダージャージをどこまでキープできるか。
この日の走りを見ればわかるように、そもそも力のある選手ではあるので、ひょっとしたら3年前のジョアン・アルメイダ(UAEチームエミレーツ)のように、意外と長く着用する可能性も…?
改めてステージ勝利を狙うのかどうかも含めて、注目していきたい。