初心者ロードレース観戦日和

初心者でもいいじゃない!ロードレース観戦を楽しもう!

【選手紹介Vol.9】ニルス・ポリッツ

覚醒間近の石畳巧者

Embed from Getty Images

選手名:ニルス・ポリッツ(Nils Politt)

所属チーム:ボーラ・ハンスグローエ

国籍:ドイツ

生年月日:1994年3月6日

脚質:ルーラー

 

主な戦歴

ツール・ド・フランス

 ステージ1勝(2021)

・パリ~ルーベ

 2位(2019)、7位(2018)

ロンド・ファン・フラーンデレン

 5位(2019)

・E3 ビンクバンク・クラシック

 6位(2019)

・ドイツ・ツアー

 総合優勝(2021)、総合2位(2018)、ステージ通算2勝(2018、2021)

ドイツ国内選手権 個人タイムトライアル

 2位(2019)、3位(2016、2017)、4位(2021)

ドイツ国内選手権 ロードレース

 4位(2017、2019)

 

どんな選手?

石畳の上で輝きを発揮する、長身のタイムトライアル(TT)巧者。

 

U23(23歳以下)カテゴリーの頃はドイツ国内では別格の存在で、U23のドイツ選手権では個人TTで2013年2位、2014年1位、2015年2位、ロードレースでも2015年に1位と圧倒的なリザルトを残す。

2015年の途中からワールド・チームのカチューシャ・アルペシンのトレーニー(練習生)としてレースに出場していたが、その実績が評価されて2016年からは正式契約を勝ち取る。

契約初年度の2016年は勝利こそなかったものの、22歳ながらエリート(全年齢)カテゴリーで出場したドイツ選手権の個人TTでは3位に入賞と、その能力はトップクラスにあると証明する事に成功して、世界選手権のチームTTのドイツ代表メンバーにも選出された。

2017年はドイツ選手権の個人TTで2年連続の3位のみならず、個人ロードレースでも4位の好成績、2018年はドイツ・ツアーの最終ステージで念願のプロ初勝利を飾るなど着実に力を付けてきた。

 

そして2019年、その能力がフランドル地方の過酷な石畳の上で行われる「フランドル・クラシック」で開花する。

フランドル・クラシック(又は北のクラシック)は、フランドル地方の荒れた石畳の上を走るクラシックレースの総称で、その悪条件な路面の影響で高難度のレースとして名高く、これまで数々の名勝負が繰り広げられてきた。

また、ロンド・ファン・フラーンデレンとパリ~ルーベという2つのモニュメント(ワンデーレースの最高峰と言われる5つのレース)を含む事も相まって、とても高い人気を誇っている。

この注目度の高いレース群で、決して戦力に恵まれている訳では無いカチューシャというチームに所属しながらもポリッツは孤軍奮闘を見せる。

 

まずはロンド・ファン・フラーンデレンの前哨戦とも言える3/29のE3 ビンクバンク・クラシックで6位の好成績を残すと、続く4/7のロンド・ファン・フラーンデレンでも5位と安定した成績を残す。

そして4/14、「北の地獄」ことパリ~ルーベでは、優勝候補と言われたペテル・サガンやワウト・ファンアールトさえも脱落するような過酷なレース展開の中を生き残り、現役屈指のクラシックスペシャリストであるフィリップ・ジルベールと優勝争いを演じる。

最後は経験の差もあり惜しくも2位に終わるが、相手を考えればそれは致し方のない部分もあるだろう。

その力走は多くの人にインパクトを残しただけではなく、E3やロンドでも成績を残したその安定した力は、ポリッツが本物のクラシックライダーとしての能力を備えている事を証明するものだった。

 

2020年シーズンはカチューシャの消滅(というか実質吸収合併)により、ワールドチームへと新規昇格を果たしたイスラエル・スタートアップネーションと契約。

新天地ではもちろん、北のクラシックを中心としたワンデーレースでの大黒柱としての活躍が期待されている。

ポリッツ本人も2019年シーズンに躍進したとはいえ、実は勝利は挙げられないまま終わってしまった1年間ではあった。

2019年をキャリアのハイライトにする訳にはいかないのは本人も勿論理解しているだろうし、ファンも期待をしている。

新たな時代の石畳の王者として、本当の覚醒の時はきっと来るはずだ。

Embed from Getty Images

 

※2021年1月2日追記

パリ~ルーベ準優勝という実績を引っ提げて、新生イスラエル・スタートアップネーションにおけるワンデーレースでのエース格として期待された2020年のポリッツ。

3月のパリ~ニースでは第1ステージ6位、第2ステージ4位とまずまずの走りを見せて、直後に控える「春のクラシックシーズン」に期待を抱かせてくれた。

しかし、新型コロナウィルス感染拡大の影響により、パリ~ニース以降のレースは一旦全てキャンセルとなってしまう。

 

長い中断期間を経て、8月にようやくレースは再開。

ポリッツはツール・ド・ラン、クリテリウム・デュ・ドーフィネ、ツール・ド・フランス、ビンクバンク・ツアーと、立て続けにステージレースに出場するも、ステージで上位に入る事もなく、特に目立たないままステージレース連戦を終了。

 

ステージレースでは元気が無かったが、ワンデーレースでこそ本領発揮と思いきや、こちらも振るわない。

ヘント~ウェヴェルヘムは52位、前年は5位だったロンド・ファン・フラーンデレンでも19位、デ・パンネ3日間(ステージレースだった時代のの名残で「3日間」という名前のワンデーレース)は途中リタイアと、結果が出ないどころか、勝負に絡む事さえできないままシーズンが終了してしまった。

 

何も残せないまま2020年シーズンを終えてしまったポリッツだが、2021年シーズンからは地元ドイツ籍のチームであるボーラ・ハンスグローエへと移籍が決定。

ここ数年は絶対的エースのペテル・サガンに依存する態勢からの脱却を図り、地元ドイツ色を強めつつも結果を残しているこのチームで、周囲の期待に応えるような走りを見せたいところ。

あのジルベールを追いつめた男の実力は、こんなものでは無いはずだ。

新天地で、その才能が開花する事を期待したい。

 

※2021年12月8日追記

ボーラに加入したポリッツではあったが、ボーラのフランドル・クラシックのエースは当然ながら、過去にロンド・ファン・フラーンデレンとパリ~ルーベで優勝と圧倒的な実績を誇るピーター・サガンである。

そのため、ポリッツはサガンのアシスト、もしくはサブエースとしての出場が見込まれていた。

ところが、サガンはシーズンイン直前に新型コロナウィルスに感染してしまい調整が遅れ、ロンド・ファン・フラーンデレン以外のフランドル・クラシックを欠場する事になる(パリ~ルーベは10月に延期)。

こうなるとポリッツに期待したくなるところだったが、歯車はうまくかみ合わない。

なんと、フランドル・クラシック初戦のE3・サクソバンク・クラシックの直前、ボーラは出場を予定していたマシュー・ウォールズが新型コロナウィルス陽性となってしまい、チームとして出場を取りやめる事態に。

ボーラは続くヘント~ウェベルヘムも同様に出場を取りやめ、そして翌週のロンド・ファン・フラーンデレンではサガンが復帰と、結局ポリッツはエースとして走る機会をほぼ失う格好となってしまった。

そんな状況下で出場したロンド・ファン・フラーンデレンは、サガンが15位にポリッツが22位と、ボーラとしては結果が残せずに終える事となった。

 

春のクラシックシーズンが終わりグランツールシーズンに突入すると、ポリッツはその牽引力を買われて、サガンのアシストとしてツール・ド・フランスに出場する事に。

またしても自由に走る機会がなさそうにも思えたポリッツだったが、コロナに振り回された春先とは打って変わり、ポリッツに追い風が吹いてくる。

なんと、2年ぶりのポイント賞獲得が目標だったはずのサガンが、落車の影響で第12ステージ出走前にリタイアする事となったのだ。

もちろん、これはチームにとっては大きな痛手ではあったが、ポリッツはこの機を逃さず、第12ステージで早速逃げに乗ってステージ勝利を狙いに行く。

13人いた逃げが3人にまで削られる厳しい展開の中、ポリッツは残り12km地点でキレのあるアタックを繰り出し、そしてそのままフィニッシュまで逃げ切りに成功。

Embed from Getty Images

厳しい展開を耐え抜くタフさ、絶妙のタイミングでアタックを仕掛ける巧みさ、そして元々定評のあった独走力と、その強さを存分に見せつけるワールドツアー初勝利となった。

 

これまでは「実力はあるのに勝てない」と評される事も多かったポリッツだったが、ツールの勝利で一気に勝ち癖を身につけたのか、8月のドイツ・ツアーでもステージ1勝に総合優勝と結果を残す事に成功する。

9月の世界選手権でも、ドイツのエースとしてレースを積極的に動かそうしていて、その堂々とした走りは、これからの更なる飛躍を予感させるには十分すぎるほどのものだった。

2022年シーズンは、チームの象徴だったサガンが移籍する事もあり、チームからの期待はより一層大きくなるはずだ。

その期待に応えるだけの実力は既に備わっている。

是非、ワンデーレースを中心に大暴れして欲しい。