プロチームらしからぬ強さと振る舞い
第2ステージは、ブエルタにしては珍しい「カテゴリー山岳の存在しない平坦ステージ」。
レースの展開も「波乱のブエルタ」らしくないというか、プロチームの選手が逃げるという至極まっとうなグランツールの平坦ステージの流れを踏襲する形になる。
ただ、ブルゴスBH、カハルラル・セグロスRGA、エウスカルテル・エウスカディという3つのプロチームが1人ずつ逃げに送り込む中、「最強のプロチーム」ことアルペシン・フェニックスだけは誰も逃げに乗らない。
と言うか、逃げに送り込まないどころか、メイン集団を牽いている場面すらある。
「そんなプロチームがあってたまるか」と言いたいところだけれども、実力も実績もその行動に相応しいだけのものがある、つまり「グランツールでワールドチームに真正面からスプリント勝負を挑んで勝てる」という、なんとも恐ろしいプロチームのアルペシン。
エーススプリンターにジャスパー・フィリプセンという実力者を据えて、果たしてジロ・デ・イタリアとツール・ド・フランスに続いての、「グランツール最初のスプリントステージ勝利」達成なるか。
メイン集団を牽引するのは、総合リーダーを抱えるチーム・ユンボ・ヴィスマ、スプリント勝利を狙うドゥクーニンク・クイックステップ、グルパマFDJ、そして前述のようにアルペシン。
適度に逃げを泳がせつつ、事前に警戒されていた横風もこの日は大きな影響は与えず、平穏な展開のままレースは距離を減らしていく。
残り35km辺りでメイン集団と逃げのギャップが30秒辺りまで縮まってくると、逃げ集団からブルゴスのディエゴ・ルビオが単独で抜け出し、1人で逃げ続ける展開に。
しかし、ボーナスタイムも獲得できる中間スプリントポイントを目指して加速したメイン集団は、ルビオを易々と捕まえてしまう。
メイン集団の前方で主導権を主張するのは、6秒差の総合2位につけるアレックス・アランブルを擁するアスタナ・プレミアテック。
中間スプリントポイントとフィニッシュ地点でのボーナスタイムを獲得して、なんとかマイヨ・ロホを獲得しようと試みる。
そのアスタナのトレインより強かったのは、ドゥクーニンク。
ドゥクーニンクはそのままファビオ・ヤコブセンを先頭で通過させることに成功して、アランブルは2位通過で2秒のタイムを獲得する事に。
レースはそのままフィニッシュのスプリントに向かって緊張感が高まってくる。
グルパマ、ドゥクーニンク、アスタナ、UAEチームエミレーツ、チームDSM辺りが集団先頭でペースを上げていく中、残り4.3kmで落車が発生!
まだ残り3kmを切っていない、つまりタイムの救済措置が適用されない位置での落車に、総合系の選手が数人巻き込まれている模様…。
残り3kmを切り、危険回避の為に前にいたイネオスとユンボが集団後方へ下がっていくと、代わって前に出てきたのはドゥクーニンクとアルペシン。
グルパマは…少し位置を下げてしまっている。
残り1.5kmの最終コーナーを抜け、スピードはさらに上がり集団は一列棒状に。
前からドゥクーニンク、アルペシン、UAEがそれぞれ隊列を作り、そしてグルパマもやっと前方に上がってきた…けれども、エースのアルノー・デマールは…いない?
残り800m、先頭はドゥクーニンク、その背後にはアルペシンが人数を揃え、更にその後ろにはアランブルやマイケル・マシューズ(チーム・バイクエクスチェンジ)が身を隠している!
そして逆サイドからはUAEのマッテオ・トレンティンがフアン・モラノを引き連れて無理やり位置を上げ、そしてそのまま先頭でレースを引っ張る形に!
残り200m、真っ先にスプリントを開始したのはモラノ!
その背中にマシューズが飛び乗り、その後ろにはヤコブセンとフィリプセンが横並びになっている!
残り100m、マシューズがモラノの背中から飛び出しスプリントを開始すると、直後にヤコブセンとフィリプセンは互いに逆サイドから大外を回ってのスプリントを仕掛ける!
残り30m地点では4人が横並びの状態だけれども、後ろから飛び出した2人、ヤコブセンとフィリプセンのスピードがいい!
そのままヤコブセンとフィリプセンが前に出る!
2人の勝負、これは結構際どいぞ…!
手に汗握るスプリント、勝ったのはフィリプセン!!
ツールでは2位と3位が3回ずつという悔しい結果が続いていたフィリプセン、これで2年続けてのブエルタステージ勝利!
そして、アルペシンはプロチームながら「全グランツールで最初のスプリントステージ勝利」という、もの凄い快挙を達成!
その走りも、そして残した結果も、完全にワールドチーム級。
本当に、とんでもないチームだ。
惜しくも2位に終わったヤコブセンだけれども、昨年の大事故を乗り越えてブエルタでのステージ2位は、素晴らしい結果と言ってもいいはず!
本当に、第一線に戻って来れてよかった!
まだまだスプリントステージは残っているから、是非2年ぶりのグランツールでの勝利を挙げて欲しい!
そして、ボーナスタイム獲得を目指していたであろうアランブルは5位でフィニッシュし、ここでのボーナスタイムは逃す事に。
ただ、スプリントポイントはしっかり獲得に成功。
これによって、なんとアランブル、フィリプセン、ヤコブセンの3人全員が、スプリントポイント50点で並ぶというまさかの事態が発生!
一応、順位付けとしてはスプリントステージで勝利したフィリプセンがポイント賞の首位となり、ポイント賞ジャージを着用する形に。
今大会のポイント賞争い、とんでもなく熱くなりそうだ!
総合勢では、落車の影響でタイムを失ってしまった選手が数人。
アダム・イェーツ(イネオス・グレナディアーズ)が31秒、ヒュー・カーシー(EFエデュケーション・NIPPO)が38秒、そしてマクシミリアン・シャフマン(ボーラ・ハンスグローエ)は2分53秒も失ってしまう事に…。
アダム・イェーツもカーシーも嫌なタイムだけれども、シャフマンは一気に厳しい展開になってしまった…。
とにかく、今後のステージでは落車などのトラブルが無いことを祈るしかない。