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【レース感想】ボルタ・ア・ラ・コムニタ・バレンシアナ2022

開幕から熱い!!

ヨーロッパでのステージレースの本格開幕を告げるレースの一つ、UCIプロシリーズのボルタ・ア・ラ・コムニタ・バレンシアナ。

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今大会は総合勢もスプリンターも、かなり豪華なメンバーが集合している!

ジロ・デ・イタリアブエルタ・ア・エスパーニャのメンバーと言われたら信じそうなぐらい、かなり熱いメンバーな気がするぞ…!

 

第1ステージ

一応「丘陵」カテゴリーらしいけれども、フィニッシュ直前に配置された難易度高めな2級山岳の影響で、総合勢の争いが勃発しそうなレイアウト。

 

件の2級山岳に突入する前に逃げは全て吸収されて、メイン集団をコントロールしているのはクイックステップ

そこから、バーレーン・ヴィクトリアス、モビスターと主導権は交代していき、その間に集団はどんどん小さくなっていく。

残り5kmを切り更に人数が絞られたタイミングで、アントワン・トールク(トレック・セガフレード)がアタック!

この動きに追随したのはフルサンのみで、直後にはロドリゲスが積極的な牽きを見せて2人を吸収。

そして、一瞬お見合いのようになったこのタイミングで、エヴェネプールが強烈なアタックを披露!!

独走力自慢のエヴェネプールは後ろを振り返らずに踏み続け、その差を一気に広げに掛かる!!

後続からはウラソフが唯一飛び出して差を詰めようと試みるけれども、この形に持ち込んだエヴェネプールは止めようがない…!!

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圧倒的な独走劇、これぞエヴェネプール!!

山岳ステージだろうと独走で勝利を掴み取る!!

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最後は余裕のフィニッシュ!!

いや~、分かってはいたけれども、相変わらずえエグい勝ち方を見せてくれる!

今シーズンはブエルタに参戦予定らしいけれども、総合優勝しても全く驚かないぞ、これは。

 

エヴェネプールの規格外の走りの前に敗れはしてけれども、2位に入ったウラソフの果敢な走り、そして3位に入ったロドリゲスの年齢以上に安定感を見せる走りは、こちらのポジティブな期待に応えてくれる素晴らしいものだったので、この2人も楽しみだ。

 

第2ステージ

カテゴリー山岳は5つあるけれども、あまり難易度が高くないので集団スプリントになる可能性が高そうなレイアウト。

 

ワールドチーム以外の選手による6人の逃げは残り20km辺りでメイン集団に吸収され、直後にディラン・トゥーンス(バーレーン)がアタック、ダウンヒルでの独走を試みる。

残り13km、ダウンヒルのコーナーでダヴィド・デッケル(チーム・ユンボ・ヴィスマ)がオーバーラン、なんと崖下の藪に突っ込んでしまう…!

一瞬言葉を失うようなショッキングな映像だったけれども、幸いにも上手く木に引っ掛かったのか転落は免れたようで、大事には至らず。

普通に自分の脚で歩いてコースに戻り、そのままレースにも復帰していった。

いやぁ…しかし、ゾッとしたよ…。

もう、落車や事故は勘弁してくれ…。

 

単独で抜け出していたトゥーンスも残り10km辺りでメイン集団に吸収され、残すは集団スプリント。

メイン集団を先頭で牽引するのはクイックステップ、相変わらず盤石のトレインだ。

残り2.5km付近、ライアン・ギボンズUAE)が落車、これはUAEにとって大きな痛手…。

残り2km辺りから、クイックステップはリーダージャージのエヴェネプールが牽引。

残り1kmでエヴェネプールの牽引が終了すると、主導権を握ったのは意外にもアンテルマルシェの隊列。

アンテルマルシェのトレイン最後尾はクリストフ。

約5%の登り傾斜の中、先頭はアンドレア・パスクアロン(アンテルマルシェ)、クイックステップはファビオ・ヤコブセンがアシストを失いながらもいい位置、イネオスもベン・スウィフトがヴィヴィアーニを引き上げ、ギボンズを失っているUAEはモラノで勝負だ!

パスクアロンが牽引を終えると、その背中から真っ先に飛び出したのはヤコブセン

ライバル達が登り傾斜に苦しみスピードが上がらない中、ヤコブセンだけは力強く前へと進む!

最後は勝利を確信して余裕のフィニッシュ!!

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ヤコブセン、力の違いを見せつける圧倒的な勝利!!

クイックステップの新エースという看板は伊達じゃない!!

珍しく最終盤でトレインが機能しない中、自ら最適な位置をしっかりと確保し、そして登りスプリントでライバルを完全制圧。

本当に、ただただ強かった。

そして、クイックステップはこれでステージ2連勝。

ウルフパックの快進撃は、今年も止まりそうにない。

 

第3ステージ

登坂距離9.9km・平均勾配7.5%の1級山岳へとフィニッシュする、今大会のクイーンステージ。

申し分ない難易度の1級山岳というだけでなく、なんとフィニッシュの直前には2kmほどの未舗装路区間が登場という、なかなかの極悪仕様なレイアウト。

果たして、総合争いはどのような展開になるか。

 

1級山岳の手前にある3級山岳で、逃げ集団からヤン・トラトニック(バーレーン)が飛び出して独走を開始。

トラトニックはメイン集団とのタイム差を少し広げ、1級山岳突入時のタイム差は2分20秒。

モビスターが牽引してペースを上げるメイン集団に対し、トラトニックも単独で粘るけれども…、残り3kmを切り未舗装路区間に突入した直後にトラトニックは捕まる。

この時点でメイン集団に残るのは、エヴェネプール、ウラソフ、ロドリゲス、マス、バルベルデ、フルサン、アユソ、ジュリオ・チッコーネ(トレック)など、流石に猛者ばかり。

この最大の勝負所で仕掛けたのは、総合2位のウラソフ。

残り1.6kmで加速すると、ライバルを置き去りに!

総合首位のエヴェネプールはこの動きを見逃してはいけない筈だけれども、ペースを上げられない…!

ウラソフは未舗装路を抜けて残り1km、軽快に踏み続ける!

対するエヴェネプールは…何と失速しているぞ!?

総合3位のロドリゲスが集団から抜け出してウラソフを追いかけるけれども、その差は縮まらない!!

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見事なアタックで山頂を制したウラソフ、エヴェネプールを逆転して総合首位に!!

未舗装路で真っ先に仕掛ける積極性、一発で決め切るアタックのキレ、最後まで勢いを失わない独走力と、本当に素晴らしい走りだった!

残す2ステージは平坦ステージ、そして総合2位のエヴェネプールとの差は32秒と、トラブルさえなければ総合優勝がほぼ確定だ。

 

ステージ2位に入ったロドリゲスは、エヴェネプールに僅か4秒届かずに総合順位は3位のままだったけれども、実績のあるライバル達を引き離してのフィニッシュはお見事!

これでまだ21歳。

なんと恐ろしい才能だ…。

 

そして、失速してしまったエヴェネプールは、41秒遅れのステージ8位でフィニッシュ。

失速の瞬間に受けた印象からすると、良く粘って総合2位を守ったと言うべきか。

昨年のジロでも未舗装路区間に苦しんでいたので、これは一つ明確な苦手分野かもしれないし、もしかしたら長い登りへの適正が低いという可能性も、無くはないかな…?

今後、今回と同等以上の登坂難易度で未舗装路が登場しないレイアウトを走る機会があれば、注目してみたい。

 

第4ステージ

第2ステージに続いての集団スプリントになるであろう、難易度の低い平坦ステージ。

 

5人いた逃げ集団は残り20km辺りでメイン集団に飲み込まれ、レースは問題なく集団スプリントの展開に。

残り5km、集団の先頭を牽引するのはやはりこの日もクイックステップの隊列。

残り4.5km過ぎからトレックが一旦先頭を奪うけれども、残り3km辺りからはまたクイックステップが主導権を握る。

先頭を牽くのは、ヤングライダージャージを着用するエヴェネプール。

アンテルマルシェが被せて来てもエヴェネプールは再度先頭を奪い返し…と思ったら、エヴェネプールの直後にいたはずのクイックステップの隊列がはぐれてしまっているぞ…?

そのまま、エヴェネプールの背後にアンテルマルシェの選手が3人並ぶ格好で残り1kmを通過。

はぐれてしまっていたヤコブセンが何とか位置を上げて来るけれども、エヴェネプールが牽引を終えると先頭はクリストフを従えたアンドレア・パスクアロン(アンテルマルシェ)、そしてその背後にはUAEの選手も2人。

ヤコブセンのリードアウト役であるミケル・モルコフも無理やり前方へ出てくるが、タイミングが合わずにあまり仕事が出来ずに後退していく…。

最終コーナーを抜けて残り200m、先頭にいたパスクアロンが仕事を終えるとクリストフがスプリントを開始!

その直後、フェンス際から勢いよく伸びてきたのはマッテオ・モスケッティ(トレック)!!

モスケッティはそのまま勢いよくフィニッシュまで突き進む!!

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モスケッティ、2年ぶりの勝利を挙げて会心のガッツポーズ!!

2年の前の落車で骨盤や肩甲骨を骨折して以降勝利に恵まれていなかったモスケッティにとって、この勝利の意義は大きい!

大怪我をする以前は次世代を担うスプリンターとして期待されていた25歳、本領発揮はこれからだ!!

 

第5ステージ

最終日はカテゴリー山岳が登場しないまさにド平坦なレイアウトで、しかも僅か92kmの距離しかないショートステージ。

 

この日の4人の逃げには、なんとヴィンチェンツォ・ニバリ(アスタナ・カザクスタンチーム)が入っている!

もちろん、この日は逃げて勝利を狙えるようなステージではないけれども、古巣に復帰した大ベテランの積極的な走りを見ると、なんだか少しテンションが上がってくる。

そのまま特に変わった展開は無いまま進み、逃げ集団は残り13km辺りでメイン集団に吸収。

いよいよ、今大会を締めくくる集団スプリントへとレースは進んでいく。

 

残り5km辺り、この日もクイックステップの隊列が位置を上げて来る。

アンテルマルシェやボーラの選手が割り込んではいるけれども、主導権を握るのは明らかにクイックステップだ。

残り3.5kmでマッテア・カッタネオの牽引が終了すると、クイックステップはここでエヴェネプールを投入。

総合2位のエヴェネプール、相変わらずもの凄い牽引力だ…!

前日はその凄まじい出力が故にチームメイトが離れてしまう場面もあったけれども、この日は連携もバッチリ!

後ろにイヴ・ランパールト、モルコフ、ヤコブセンと、完璧な隊列を維持したまま、エヴェネプールは残り1kmまで牽引!

残り1kmを切り、先頭はクイックステップの3人、その背後にはベン・スウィフトがヴィヴィアーニを引き連れて上がってくる!

ランパールトが仕事を終えて交代すると同時にスウィフトが位置を上げようと踏むけれども、ヴィヴィアーニはそこには付いていかずにヤコブセンの背後というポジションを選択。

モルコフの背中からヤコブセンが飛び出してスプリントを開始すると、逆サイドからヴィヴィアーニも反応!

先行したヤコブセン、追いかけるヴィヴィアーニ!

その差は…詰まらない!!

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理想通りの展開から繰り出される、盤石のスプリント!!

圧倒的な完成度で、ヤコブセンが今大会2勝目!!

集団の先頭に陣取り、高速牽引によってライバルの動きを封じ、最後は完璧な形でエースがその力を発揮という、まさに教科書通りな展開を見せたクイックステップ

やはり、このチームの強さは頭一つ抜けている!

 

ヤコブセンに及ばずステージ2位となったヴィヴィアーニは、もしイーブンな条件でスプリントを開始出来ていたら、ひょっとしたら勝てたかもと思わせるぐらい、素晴らしい伸びを見せていた。

イネオスというスプリントに注力しないチームで、今大会は第2ステージ3位、第4ステージ4位、そしてこの日のステージ2位と、惜しい勝負を連発したヴィヴィアーニ。

直近2年の大不振から、もしかしたら抜け出しているのかもしれない。

 

やっぱり、ステージレースはテンションが上がる

改めて、最終成績を確認。

 

  • 総合優勝:アレクサンドル・ウラソフ(ボーラ・ハンスグローエ)
  • 総合2位:レムコ・エヴェネプール(クイックステップ・アルファヴィニル)
  • 総合3位:カルロス・ロドリゲス(イネオス・グレナディアーズ

 

総合優勝は、クイーンステージで圧倒的な走りを見せたウラソフ!

新しく移籍したボーラというチームで、総合エースとして充分に力があるという事を改めて証明してくれた!

昨年のジロ・デ・イタリア総合4位を超えるようなリザルト、つまり…グランツール総合表彰台も、決して夢ではないはずだ。

 

総合2位となったエヴェネプールは、ウラソフと対照的に第3ステージでは苦しんでしまった。

それでも、第1ステージで見せた鮮やかな独走に加えて、その牽引力でヤコブセンのスプリント2勝にも多大な貢献をしていたのは、本当に凄かった!

今シーズンも、昨年同様の暴れ回りっぷりが見られそうだ。

 

総合3位に入ったロドリゲスは、その21歳らしからぬ安定した走りで遂に頭角を現してきた!

はっきり言って、既にグランツールで山岳アシストが務まるぐらいの力は充分にあると思う。

エガン・ベルナルの長期離脱で苦しい戦いを強いられるはずのイネオスにとって、救世主となれるか注目だ!

 

総合争い以外では、やはりステージ2勝を挙げたヤコブセンのスプリント力が、そしてクイックステップの抜きん出たチーム力が際立つ格好になった印象がある。

2020年の大怪我から復帰したヤコブセン、ウルフパックの新たなスプリントエースとして勝利を積み重ねるのは想像に難くない。

 

ステージレースの本格的な開幕を告げるボルタ・ア・ラ・コムニタ・バレンシアナ、5日間どのステージも、幕開けに相応しい面白さだった!

総合もスプリントも役者が揃っていた上に、多くの選手、多くのチームが積極的な走りを見せてくれていたと思う。

タイム差の為にしのぎを削り合う総合争いと、最後の数百mで全力を出し尽くして勝利を目指すスプリント争い。

そのどちらも別種の熱さを持っていて、本当に面白い。

ステージレースは、本当に面白い!

今シーズンも、熱い戦いが繰り広げられる事を期待したい!!

 

それでは、また!

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