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【レース感想】アムステルゴールドレース2022

今年も写真判定の大接戦!!

アルデンヌ・クラシックの開幕戦、細かいアップダウンを絶えず繰り返すアムステルゴールドレース

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今年はフランス大統領選の影響で、パリ~ルーベと順序が入れ替わる変則日程での開催に。

そんな状況下で出場する主な有力選手は以下の通り。

  • 2度目のロンド・ファン・フラーンデレン制覇と好調、2019年にはこのレースで衝撃的な勝ち方を披露した「怪物」マチュー・ファンデルプール(アルペシン・フェニックス)
  • 昨年2位、登坂力とスプリント力を兼ね備えたイギリスの若き天才トム・ピドコック(イネオス・グレナディアーズ
  • 通算9回出場でトップ10フィニッシュが5回と抜群の相性の良さを誇る、2015年の覇者ミハウ・クフィアトコフスキ(イネオス・グレナディアーズ
  • 移籍でその才能が更に開花、万能型の脚質を持つティシュ・ベノート(チーム・ユンボ・ヴィスマ)
  • 手負いの狼集団のエース、今回が意外にも初出場のカスパー・アスグリーン(クイックステップ・アルファヴィニル)
  • ケガから復調傾向、万能型パンチャーのマルク・ヒルシ(UAEチームエミレーツ

ファンデルプールが大本命と目される中、自分の予想がこちら。

つまらない予想だとは思いつつ、ファンデルプールを本命から外す事は難しかった…。

クイックステップからは、アスグリーンよりもパンチャータイプのアンドレア・バジョーリをチョイスしてみる。

 

突き抜けるような晴天の下でレースはスタート!

この日の逃げは7人、ヴィクトル・カンペナールツ(ロット・スーダル)という独走力自慢の実力者や、ユンボの重要なアシストであるネイサン・ファンホーイドンクなんかが入っている。

メイン集団の牽引は、中盤以降はイネオスが担う流れに。

改めてイネオスのメンバーを確認してみると、前述のピドコックとクフィアトコフスキの他に、ローレンス・デプルス、ルーク・ロウ、マグナス・シェフィールド、ベン・ターナー、ディラン・ファンバーレと、かなりいい布陣だ。

 

残り45km辺りから始まる「クルイスベルグ」で、イネオスはターナーによる牽引で強烈な絞り込みを敢行!

プロ1年目の22歳ターナー、かなり強いとは思っていたけれども、ここまで強烈な牽引を見せるとは…!

ターナーの牽引は約15kmにも渡り、メイン集団の人数をかなり削ると共に、逃げを全て吸収してしまった。

 

残り35kmから始まる「ケウテンベルグ」でアタックを仕掛けてのはベノート!

この動きで形成された精鋭11人の集団は以下の通り。

  • ベノート
  • ピドコック
  • クフィアトコフスキ
  • ファンデルプール
  • スグリーン
  • ヒル
  • マイケル・マシューズ(チーム・バイクエクスチェンジ・ジェイコ)
  • シュテファン・キュング(グルパマFDJ)
  • ディラン・トゥーンス(バーレーン・ヴィクトリアス
  • ブノワ・コスヌフロワ(AG2Rシトロエン
  • アレクサンダー・カンプ(トレック・セガフレード

おお、いいメンバーだ…。

20秒程後方に10人の追走集団もいるけれども、この時点で勝負権は先頭の11人に絞られた感はある。

 

ヒリヒリするような緊張感が漂う中、レースを動かしてきたのは唯一先頭に2人を送り込んでいたイネオス。

残り22km、最終周回に入る直前にクフィアトコフスキが飛び出す!

クフィアトコフスキはあっという間に10秒以上のリードを作る事に成功。

残り19km、コスヌフロワが単身でクフィアトコフスキにブリッジして、2人で協調して逃げ始める。

対する後方の9人は、散発的なアタックが繰り出されるような状況になり、ペースが上がらない…!

誰もが爆発的なスプリント力を誇るファンデルプールを警戒して牽制、更にはピドコックがしっかりとローテーションを阻害して…先頭との差はなかなか縮まらない!

残り10km、タイム差は27秒。

残り5km、タイム差は22秒。

残り3km、タイム差は21秒。

残り2km、…タイム差は19秒。

これは追いつくのは厳しいかと思った瞬間、ファンデルプールが猛加速!

ただ、「2019年の衝撃すぎる逆転劇」の再現を目指したいファンデルプールだったけれども、あの時のように牽き続ける余力はないようで、そして周りのライバルも協力してくれない…。

残り1km、タイム差は15秒。

先頭が牽制でよほど極端なペースダウンをしない限り、これは追いつかないタイム差だ!

先頭の2人は後ろを頻繁に確認しながら、最後のスプリントに備える。

クフィアトコフスキはコスヌフロワの後方に張り付く事を選択、そしてコスヌフロワもそれを割とあっさりと受け入れて、あまりペースを落とさずに前を牽いている。

後方からはベノートが単身で飛び出して距離を縮めてくるけれども、やはり追いつくのは厳しそうだ。

残り200m、示し合わせたかのように2人がほぼ同時にスプリントを開始!

コスヌフロワの後ろで力を溜めたクフィアトコフスキが残り50m辺りから前に出ようともう一段加速!

スプリントの実績もあるクフィアトコフスキがそのまま抜き去るかと思っていたら、コスヌフロワも粘る!!

2人は横並びのままフィニッシュ!!

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…どっちだ!?

写真判定の結果…クフィアトコフスキが差し切った!!

その差、僅か8cm!!

2017年のミラノ~サンレモもその絶妙なハンドル投げで制したクフィアトコフスキ、その抜群の勝負勘はお見事!!

 

惜しくも2位に終わったコスヌフロワ、レース直後に一旦ラジオツール(レース主催側からチームへ流れる無線)で「コスヌフロワの勝利」という速報が流れたらしくて、喜んでいたんだけれども…。

と言うか、なんで写真判定の前に速報が流れるのさ。

まさに天国から地獄、ちょっとこれはコスヌフロワが可哀そうすぎる…。

ただ、敗れたとはいえ、クフィアトコフスキの抜け出しに単身で飛び乗ったその判断と積極性は、今後にかなり期待が出来るようなものだったと思う。

是非、また別の機会でビッグタイトルを掴み取って欲しい。

 

イネオス復権の狼煙となるか

チーム一丸となって中盤以降のレースを作り、積極的な仕掛けで決定的な動きを生み出し、そしてエースが抜群の勝負勘で勝利を掴み取る。

まさに完璧なレース展開でアムステルゴールドレースを制したイネオス。

ここ2年ほど、ツール・ド・フランスで敗れてその威厳が失墜したとも揶揄される2010年代の絶対王者は、この日のようにワンデーレースでもその支配力を発揮する、今までとは違う力を身につけているようにも見える。

果たして、この新たな流れはツール・ド・フランスに繋がるものなのか。

王者が目指す新たな強さ、その結実を楽しみにしていたい。

 

それでは、また!!

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