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【レース感想】ラ・フレーシュ・ワロンヌ2022

新たな「激坂王」の誕生

名物激坂「ユイの壁」で白熱の登坂バトルが繰り広げられる、アルデンヌ・クラシック第2戦ラ・フレーシュ・ワロンヌ。

今年も激坂ハンターや登坂力自慢が集結!

また、イネオス・グレナディアーズはトム・ピドコック、ミハウ・クフィアトコフスキ、ダニエル・マルティネス、バーレーン・ヴィクトリアスはワウト・プールス、ダミアーノ・カルーゾ、ディラン・トゥーンスと、誰がエースか分からない強力な布陣を揃えてきている。

そんな中、自分の予想はこちら。

今シーズン登坂で無双状態のポガチャルと迷いつつ、激坂王アラフィリップを信じる…!

 

この日は序盤なかなか逃げが決まらなかったようで、10人の逃げが形成されたのは60kmほど走ってから。

メイン集団はUAE、イネオス、クイックステップ辺りが牽引役を担い、逃げに与えたリードは3分ほど。

ユイの壁を3回登る周回コースに入るまでは、特に大きな動きも無いままレースは進んでいく。

 

1度目のユイの壁で、いきなり予想外の選手が脱落する。

なんと、前年6位のピドコックがユイの壁で集団のペースに付いていけず、そのままリタイアしてしまった。

今シーズン、シクロクロスからの調整の遅れや胃腸炎で苦しみながらも、ドワーズ・ドール・フラーンデレンで3位など一定の結果を出していただけに、これはかなり意外…というか残念だ…。

コンディションが上がらないのなら、一旦しっかりと休むのも一つの手な気がする。

 

2周目に入ると、メイン集団はバーレーンが積極的にコントロール(というか、ペースアップ?)。

バーレーンとしては、レースを厳しくした先に、しっかりと意図があるという事なのだろうか…?

そんな中、ユイの壁の手前にある「コート・ド・シュラーヴ(距離1.4km・平均勾配7.8%)」では、サイモン・カー(EFエデュケーション・イージーポスト)がメイン集団からの抜け出しに成功。

カーは3周目に入ってから逃げと合流して、残り20km地点で再びアタックを仕掛ける。

反応したヴァランタン・フェロン(トタルエネルジー)と2人で抜け出す格好になるけれども、メイン集団はもう30秒ほど後方に迫ってきている。

 

残り9.2km、先頭を走っていた2人もメイン集団に吸収され、レースはいよいよ佳境に近づいてきた。

残り7km、3度目のコート・ド・シュラーヴで、コフィディスがトレインを組んでレミ・ロシャスを発射!

ロシャスは追い縋るマウリ・ファンセヴェネントを振り払った…と思ったら、ファンセヴェネントは驚異の粘りでロシャスに近づいていく。

残り6km、メイン集団から抜け出しの名手セーアン・クラーウアナスン(チームDSM)が飛び出して、一気に先頭まで合流!

クラーウアナスンはそのままペースを上げ、ロシャスを置き去りにしてファンセヴェネント共に逃避行!

ただ、メイン集団は「ユイの壁で追いつける」といった感じで、あまり慌てた様子はない。

集団を引っ張るイネオスは牽引役をゲラント・トーマスからミハウ・クフィアトコフスキにスイッチと、やはりアシスト陣がとんでもなく豪華だ。

残り3kmでタイム差は15秒。

これはユイの壁に入ったらすぐに追いつきそうだ。

 

残り1km、メイン集団の先頭はカルロス・ベローナ(モビスター・チーム)、そしてイネオスやクイックステップなんかも前方の良い位置にいる。

残り900mで逃げていた2人を吸収すると、モビスターはベローナからエンリク・マスへと牽引役を交代。

その後ろに張り付くのはトゥーンス、アレクサンドル・ウラソフ、ティシュ・ベノート(チーム・ユンボ・ヴィスマ)、マルティネス、バルベルデ辺り。

アラフィリップ、ポガチャルはまだ少し後方で待機しているぞ…?

勾配が厳しくなる区間に入ってもマスの牽引は続き、そしてその背中にはバルベルデがしっかりと控えている!

残り300mを切って、隊列は先頭からマス、バルベルデ、ウラソフ、トゥーンス、ポガチャル、マルティネス、アラフィリップといった感じ。

残り250m、バルベルデとウラソフがほぼ同時に加速して先頭に出たと思ったら、2人の間からトゥーンスが抜け出していく!!

バルベルデとウラソフはすぐさまその背中に飛び乗るけれども、ポガチャルが少し離される!?

そしてポガチャルの後ろにいたアラフィリップとマルティネスはそのギャップを埋めなければいけない厳しい流れに…!

残り100m、バルベルデが少し加速すると、ウラソフがその背中から剥がれる!

残すは緩斜面区間バルベルデはそのままトゥーンスの横に並びかけるけれども、ここで急に脚が止まってしまう!?

対するトゥーンスは、勢いが全く衰えずにフィニッシュへと向かっていく!!

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地元ベルギー人のトゥーンス、ユイの壁で最後まで強さを維持して見事優勝!!

残り250mというユイの壁にしては早すぎる位置で飛び出しながら、最後まで先頭を譲らないとは…!!

2019年のツール・ド・フランスではラ・プランシュ・デ・ベルフィーユの激坂フィニッシュも制しているトゥーンス、これは完全に激坂強者だな…。

そしてトゥーンスは、意外にもこれがワンデーレース初勝利!

今シーズン、ロンド・ファン・フラーンデレン6位、アムステルゴールドレース10位と調子が良いだけに、30歳にしてここからワンデーレーサーとしての覚醒もあるのかも?

 

後続は、そのままバルベルデとウラソフが2位と3位でフィニッシュ。

今シーズン限りで引退、そして5日後に42歳になるバルベルデ、恐ろしすぎる…!

…本当に引退するの?

もう少し続けてくれても、ロードレースファンとしては一向に構わんよ?

何はともあれ、4/24(日)のリエージュ~バストーニュ~リエージュでも、また元気な姿を見せて欲しい。

 

もはや伝統芸能

いや~しかし、「最後のユイの壁で全てが決まる」と分かっていながら、どうしてラ・フレーシュ・ワロンヌはこんなにも面白いのか!

ある意味、究極の様式美であり、もはや伝統芸能的なものにすら思えてくる。

一般人では自転車で登る事すら不可能なとんでもない勾配でしのぎを削り合う選手たちに敬意と感謝を払いながら、来年以降もきっと名勝負となるであろうこのレースを楽しみにしていたい。

 

それでは、また!!

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