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【レース感想】ブエルタ・ア・エスパーニャ2022 第6ステージ

期待を上回るその強さ

第6ステージは、いよいよブエルタ開幕といった感じの山岳ステージ。

残り35km地点の1級山岳コラーダ・デ・ブレネス(登坂距離6.8㎞・平均勾配8.2%)を越えて、1級山岳ピコ・ハノ(登坂距離12.6㎞、平均勾配6.55%)へとフィニッシュする、総合争いのゴングが鳴るには充分なレイアウトだ。

 

この日の逃げは10人、メイン集団から与えられたタイム差は4分ほど。

雨の降る1級山岳コラーダ・デ・ブレネスに突入すると、先頭集団からマーク・パデュン(EFエデュケーション・イージーポスト)が単独での飛び出しを敢行。

一方のメイン集団は、まずはイネオス・グレナディアーズが積極的にペースアップを行い、そして途中からクイックステップ・アルファヴィニルのアラフィリップが前に出て牽引を開始。

アルカンシェルを身に纏ったアラフィリップがここでこれだけ牽いているという事は…どこか早い段階でレムコ・エヴェネプールが仕掛けるのかとも思ったけれども、ひとまず大きな動きはなく山頂を通過していく。

 

先頭のパデュンは雨のダウンヒルでライン取りに苦労する様子も見せながら、メイン集団に対して約1分のリードをもって1級山岳ピコ・ハノに突入。

ルーベン・フェルナンデス(コフィディス)やファウスト・マスナダ(クイックステップ)といったパデュンを追いかけていた選手は既にメイン集団に吸収され、マスナダはそのままメイン集団を牽引している。

残り10km、メイン集団から飛び出したのはジェイ・ヴァイン(アルペシン・ドゥクーニンク)。

ヴァインは同じタイミングで飛び出した他の選手を置き去りにして、単独でパデュンを追いかける。

残り9.3km、メイン集団からスルスルっと加速したのは…なんとサイモン・イェーツ(チーム・バイクエクスチェンジ・ジェイコ)。

さすがにこの動きはイネオスがすぐさま吸収したけれども、なんだか早くもメイン集団のテンションが上がってきた…?

残り8.6km、エヴェネプールがアタックを見せ、ここにはプリモシュ・ログリッチ(チーム・ユンボ・ヴィスマ)が反応して吸収…したんだけれども、エヴェネプールはそのままあまりペースを落とさない。

この厳しい展開にメイン集団は縦に引き伸ばされ、後方ではミケル・ランダ(バーレーン・ヴィクトリアス)といった有力選手も零れ落ちていく。

…と言うか、メイン集団千切れている?

エヴェネプールのペースに付いていけているのは、ログリッチ、エンリク・マス(モビスター・チーム)、パヴェル・シヴァコフ(イネオス)、ベン・オコーナー(AG2Rシトロエン)、ジャイ・ヒンドレー(ボーラ・ハンスグローエ)、サイモン・イェーツのみ。

一応、霧で見えにくいけどそのすぐ後方に10人弱はいる感じか。

続いて中継に映し出されたのは、総合優勝候補の1人であるリチャル・カラパス(イネオス)の遅れる姿。

まだ残り7.8km、ここで遅れるのはかなりまずいのでは…。

映像がエヴェネプールの集団に切り替わると、あっと言う間に人数が減っていて、付いていけているのはマス、シヴァコフ、ログリッチ…だけ!?

残り7.5km、ここでシヴァコフと共にディフェンディングチャンピオンのログリッチも突き放される!?

これは…早めに仕掛けて高速ペース走という、エヴェネプールの得意パターンが炸裂か!!

多少予想してはいたけれども、マジで山岳でもこのパターンで仕掛けてきた…!

逆に、ログリッチは後方の選手に追いつかれるほどペースが落ちている…。

やはり、コンディションは万全ではなかったのか。

 

残り6.7km、かなり良いペースで走っていたヴァインが先頭のパデュンに追いつき…いや、追い抜いていき、単独先頭に。

エヴェネプールとマスは20秒ほど後方に迫っているけれども、ヴァインの走りもかなり良い。

その頃、ログリッチ達の追走集団からはフアン・アユソ(UAEチームエミレーツ)が抜け出しに成功。

スペイン期待の星は、そのポテンシャルの高さをしっかり見せつけてくれている。

 

エヴェネプールはマスが背中に張り付いている事を全く意に介さず、ただひたすら前のみを見て淡々とペースを刻む。

後方集団との差がじわじわと広がっていく、そのペース走の異常さ。

マスがここに付いていけているのが何気に凄いのではないかと思うぐらい、エヴェネプールが強い。

そして、同様に驚くほど強いのが、先頭をひた走るヴァイン。

ズイフトアカデミー出身と言う異色の経歴を持つプロ2年目の26歳は、昨年ブエルタの第14ステージで惜しくも逃したステージ勝利に向けて、必死の形相で逃げ続ける!!

20秒前後のリードを保ちながら、フィニッシュまでの距離は着実に縮まっていく!!

かなり深い霧の中、残り500mでもタイム差は20秒のまま…、これは逃げ切り確定だ!!

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今大会最初の山頂フィニッシュを制したのはヴァイン!!

果敢な飛び出しと見事な独走で、プロ初勝利をブエルタという大舞台で飾って見せた!!

昨年ブエルタの第14ステージ、途中でチームカーとの接触による落車と言うアクシデントに見舞われながら、最終的にステージ3位に入ったそのガッツとポテンシャルは、確かに印象的だった。

しかし、まさかフィニッシュに設定された1級山岳でメイン集団から飛び出して逃げ切るとは!!

つまり、この山岳に限っては最も速く登ったのはヴァインな訳で…。

このまま、他のステージや山岳賞を狙ってみても面白そうだ。

 

ヴァインの15秒後、エヴェネプールが最後はマスに1秒差を付けてフィニッシュ。

そしてグリッチのグループは…エヴェネプールから1分22秒後のフィニッシュに。

エヴェネプールは強烈なアタックを繰り出した訳では無い。

ただ、自分の出せる最高のペースで走り切っただけ。

マス以外の選手を全て置き去りにした、驚異のペース走。

総合首位に立った神童エヴェネプール、その快進撃はこの先も続くのか。

ただ、ログリッチとの総合タイム差はまだ1分1秒、その他の有力選手も多くが1分30秒~2分ほどの差で追いかけている。

総合争い、かなり面白くなりそうだ。