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【レース感想】ブエルタ・ア・エスパーニャ2022 第7ステージ

変わったレイアウトでの鬼ごっこ

序盤は平坦基調、中盤に1級山岳(登坂距離22.4km・平均勾配5.5%)、そこからあまり下らずにまた平坦基調と、あまり見た事がないパターンのレイアウト。

1級山岳でスプリンターが生き残れるのか、脱落した場合に長いダウンヒルがないので果たして追いつけるのか、そしてそもそも逃げを捕まえられるのか、ちょっと展開が読みにくい…。

 

この日の逃げは6人。

レッド・ライトバーレーン・ヴィクトリアス)、ヘスス・エラダ(コフィディス)、サミュエーレ・バティステッラ(アスタナ・カザクスタン・チーム)、ハリー・スウェニー(ロット・スーダル)、オメル・ゴールドスタイン(イスラエル・プレミアテック)、ジミー・ヤンセンス(アルペシン・ドゥクーニンク)と、なかなか強力なメンバー。

メイン集団から3分以上のリードで1級山岳に突入すると、ゴールドスタインが脱落して先頭は5人に。

一方のメイン集団は、スプリント力と登坂力を兼ね備えたマッズ・ピーダスン擁するトレック・セガフレードが、ピュアスプリンターをふるい落とそうとペースアップを敢行。

トレックは目論見通り、サム・ベネット(ボーラ・ハンスグローエ)、ティム・メルリール(アルペシン)、パスカル・アッカーマン(UAEチームエミレーツ)といった重量級スプリンターを一旦脱落させることに成功。

ただ、その後の平坦区間サム・ベネットはなんとか集団に復帰してくる。

 

こうなってくると、問題は逃げを捕まえられるかどうか。

残り50km、サム・ベネットが集団復帰したタイミングで先頭とのタイム差は2分30秒ほど。

登りではトレックがメイン集団を牽引していたけれども、この辺りでクイックステップ・アルファヴィニルが牽引を開始。

…総合系のチームが牽引を開始という事は、もうスプリントチームに牽くだけの力が残っていないという事か?

残り40km、タイム差は変わらず2分30秒前後。

集団先頭にはアルケア・サムシックやチーム・バイクエクスチェンジ・ジェイコというスプリンターを抱えたチームが出てきている。

残り30km、タイム差は2分強、集団を引っ張るのは依然アルケアとバイクエクスチェンジ。

タイム差の減少が緩やかな事もあってか、残り24km辺りからはボーラも牽引に参加。

ただ、それでもタイム差はあまり縮んでいかず、残り20kmで1分40秒ほど。

「20kmで1分40秒」なら追いつきそうな気もするけれども、このままのペースでは結構危ういような…。

改めてトレックも集団を引っ張り始めるけれども、タイム差は思うように縮まっていかない。

残り15km、タイム差は1分20秒。

残り10km、タイム差はちょうど1分!

「10km・1分の法則」的にはギリギリ追いつく可能性もあるけれども…ここまではそのペースを明らかに下回っている。

残り5km、タイム差は…まだ50秒も残っている!!

これはまず追いつかない…!!

完全な協調体制で逃げ続けた5人が、ステージ勝利を争う権利を掴み取った!!

 

残り1kmを切ると、先頭の5人もステージ勝利に向けた駆け引きを開始。

最終コーナーの手前、先頭に「出された」のはスプリント力では明らかに優位に立つライト。

第5ステージでもそのスプリント力を警戒されて同じような格好になり、そこから脚を使うのを嫌がり牽制合戦に付き合ってしまったために先頭のマルク・ソレル(UAE)を逃がしてしまったライト、この日はここから全く真逆の選択をする。

ライトは残り300mという早い段階で、風を受ける先頭に立たされているにも関わらず無理やりスプリントを開始!!

ライトの加速はかなり力強く、背後にいたヤンセンスは少し離されてしまう!

ヤンセンスに代わってライトの背中を捉えたのはエラダ、しかしライトは驚異の粘りを見せて前を譲ろうとしない!!

それでも残り50m、エラダがライトの横に並ぶ!

後方からはバティステッラも伸びてくる!!

最後は3人でのハンドル投げ争い!!

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激戦を制したのは…エラダ!!

エラダは3年振り2度目のブエルタステージ勝利!!

先行されても慌てずにギリギリまでライトの後方で力を溜め、最後の最後で差し切ったその判断は素晴らしかった!!

そしてフィニッシュ後に見せた男泣き…!

いや~、道中の展開、そして激戦の小集団スプリントからエモーションなシーンと、いいレースだった!

 

そして、この日も惜しくも敗れてしまったライト。

ツールでも積極的に動き回り、このブエルタでも既にステージ3位が2回。

間違いなく、力はある。

既にライバルからマークされて「前に出される」ぐらい、力はある。

それでもなかなか勝てないのが、ロードレースの難しい部分であり、面白い部分でもある。

個人的には、消極的な判断で勝ちを逃した第5ステージを経て、この第7ステージでは逆に真っ先にスプリントを仕掛けたのは、かなり好感を抱いた。

23歳の若者らしく、自分の力を信じ、力ずくで勝利を掴みに行ったその意気やよし。

ここから経験を積んで「上手さ」も身につけて、もっともっと良い選手になってくれる事を期待したい。