はっきり言って強すぎる
アルデンヌクラシックの初戦、絶え間ないアップダウンと「1000のコーナー」が特徴のアムステルゴールドレース。
今回、圧倒的に突き抜けた優勝候補と評価されていたのは、現役最強のオールラウンダーであるタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)。
2019年に初めてこのレースを走った際には体調不良でリタイアしたけれども、世界最強の選手となった今、どれだけの走りを見せてくれるのか注目が集まっていた。
一応他にも、昨年の1位~3位であるミハウ・クフィアトコフスキ(イネオス・グレナディアーズ)、ブノワ・コスヌフロワ(AG2Rシトロエン)、ティシュ・ベノート(ユンボ・ヴィスマ)や、トム・ピドコック(イネオス)、マテイ・モホリッチ(バーレーン・ヴィクトリアス)、アレクセイ・ルツェンコ(アスタナ・カザクスタンチーム)など、有力候補はそれなりにいるけれども、果たしてどれだけ抗えるか…。
GCN+での中継が始まり、画面に映し出されたのは…残り90kmを切った辺りでいきなり割れている集団。
先行しているのは20人弱、そしてその中には、なんとポガチャルもいる。
他にはイネオスがピドコックとマグナス・シェフィールドという強力な2人を送り込む事に成功。
あとはグルパマFDJ、チーム・ジェイコ・アルウラー、ロット・デスティニーが複数人を前方に乗せているけれども、正直なところメンバー的にどれだけ戦えるかは微妙なところ。
一方、後方に取り残されたメイン集団は15秒程のタイム差での追走に。
これは…まだ距離があるとは言え、後ろは早くも「黄色信号」ではないか…?
メイン集団(…もはや追走集団と呼んだ方が適切か?)を牽引するのは、前に選手を乗せられなかったバーレーンやユンボ…なんだけれども、今すぐ追いつこうとペースを上げる雰囲気にはあまり見えない。
「さてどの辺りでペースを上げに行くのか、あまり泳がせすぎると手遅れに…」なんて思いながら見ていると、メイン集団で落車が発生。
この落車で牽くべき人員を複数失ってしまったメイン集団は、マッテオ・トレンティン(UAE)による絶妙なローテーション阻害もあり、徐々にそのタイム差を離されていってしまう…。
そんなメイン集団を尻目に協調しながらハイペースを刻む先頭集団では、アシストを引き連れていないポガチャルが、登り区間で容赦なくペースを上げている…。
登坂力に不安のある選手が徐々に脱落していく、なんだかこちらはこちらで過酷な展開だ…。
残り39km、ポガチャルがパンクの為にバイクを交換。
ポガチャルはそんなトラブルの影響は一切感じさせずに速やかに集団に戻ると、直後に始まる「アイセルボス(登坂距離0.9km・平均勾配9.3%)でアタック!
ピドコックはすぐさま反応、そしてベン・ヒーリー(EFエデュケーション・イージーポスト)がなんとか追いつくけれども、他の選手は完全に置き去りに…!
ルツェンコとアンドレアス・クロン(ロット)の2人が10秒程遅れて追いかけるけれども、タイム差はなかなか縮まらない。
これは…早くも先頭の3人に絞られたか。
残り28km、「クーテンベルグ(登坂距離1.1km・平均勾配6.8%)」に入ると、またしてもポガチャルが腰を上げて加速!
たまらずヒーリーは千切られ、そしてなんとか粘っているように見えたピドコックも、坂の中腹で離され始める…!!
ピドコックを突き放し、それでもなおペースが一切衰えないポガチャル!!
つ…強すぎる…。
これまでも何度も見せつけてきた、「登坂で一気に突き放して独走」という、ポガチャルの必勝パターン。
こうなってしまったら、もう誰も追いつける訳がない。
一応、合流したピドコックとヒーリーが追走はしているけれども…。
こうなると、新たに注目すべきはピドコックとヒーリーによる2位争いや、その後ろから追走するルツェンコとクロンを絡めた表彰台争い。
2位争いで仕掛けたのは、先ほどは苦しそうだったヒーリー!
残り13.5km辺りでアタックすると、ピドコックが離される…!?
もしかして、ピドコックは先ほどポガチャルを追いかけようとしたのがオーバーペースだったのか…?
そして疲弊が見えるピドコックと、追走する2人のタイム差は…表示されない状態が続く。
…まさか、3位争いで波乱が起こる可能性も?
そんな後方の「喧騒」を一切意に介さず、王は王らしく悠々とフィニッシュ地点へと到着。
残り500mで一応後方を振り返って確認するけれども、そこには誰もいない。
無線でチームメイトに何か声を掛け、直後に天を指差して「この日も自分が1番だったと」と、誇らしげな表情でフィニッシュへと近づいていく。
最後は大きく腕を広げ、そして雄叫びを上げながらフィニッシュ!!
またしても圧倒的な独走劇…!!
ポガチャルがあまりにも強すぎる勝ち方でのアムステルゴールドレース制覇!!
ありきたりな表現だけれども、「分かっていても止められない」その強さ。
「登りが絡んだレースは全て勝ってしまうのではないか?」と言いたくなる。
そして次に狙うは、ラ・フレーシュ・ワロンヌとリエージュ~バストーニュ~リエージュ。
アルデンヌクラシック3戦全勝は、もはや挑戦ではなく、余裕で手の届く位置にあるかもしれない。
ポガチャルから38秒遅れて2位に入ったのは、プロ2年目、弱冠22歳のヒーリー!
ポガチャルに可能な限り食らいつき、そしてスプリントではピドコックに対して不利だと判断すると自ら仕掛け、一発で突き放す強さを見せてそ掴んだこの順位!
脚も判断もガッツも、本当に素晴らしかった!
アイルランド期待の新鋭、この先がかなり楽しみだ!
そしてヒーリーから…え?1分30秒も遅れて?…ピドコックが最終ストレートに姿を現すと、その少し後方にはルツェンコとクロンの姿が!!
明らかに限界を超え失速しているピドコック、しかしルツェンコとクロンもお互いにまともに牽けないほど疲弊、それでもその差は徐々に縮まっていく…!
若干の牽制を挟みながら後方から迫る2人、ピドコックはフラフラになりながらも最後の力を振り絞る…!!
3位争いを制したのは…ピドコック!
辛くも逃げ切った…!
いや~、良く粘ったなぁ…。
これでピドコックは、2021年の2位に続く2度目の表彰台。
やはりこのレースへの適正はあるので、またチャンスはありそうだ。
分かっていても止められないどうしようもなさ
いや~、強い。
ここまで強いと、もはや「なんも言えねぇ」状態。
拮抗した争いが見たい気持ちも多少ありつつ、これは間違いなく特別な瞬間、特別な選手を見ているという実感もある。
結局のところ今後もポガチャルには、らしさ全開で走り続けて欲しいと思う次第。
それでは、また!
おまけ
レース前後の「ポガ毛」の比較
・スタート前
・フィニッシュ時
…レース途中で飛び出している!?
一体どういう理屈でそうなるのだろうか…?