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【初心者向け用語解説 Vol.9】モニュメント

緊迫の一発勝負!

複数日で行われるステージレースと違い、その名の通り1日で決着をつけるのがワンデーレースです。

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このワンデーレースの中でも歴史の古いものは「クラシック」と呼び格式の高いレースとして扱われていて、その中でも特に別格の扱いを受けているのが「モニュメント」と呼ばれる以下の5つのレースです。

ワンデーレースを狙う選手にとって最大の目標であるこれらのレースでは、世界最高峰のワンデーレーサーが集まり、ヒリヒリとした緊張感の漂う激戦を繰り広げます。

 

今回は、一発勝負の魅力が凝縮された「モニュメント」について、それぞれの特徴を解説していきたいと思います。

 

ミラノ~サンレモ

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・初開催:1907年

・開催時期:3月

・別名:「スプリンターズ・クラシック」又は「ラ・プリマヴェーラ(春)」

・直近3年の優勝者

 ・2019:ジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ

 ・2018:ヴィンチェンツォ・ニバリ(バーレン・メリダ

 ・2017::ミハウ・クフィアトコフスキー(チーム・スカイ)

 

「ラ・プリマヴェーラ(春)」の異名の通り、春のクラシック・シーズンの幕開けを告げるのがこの「ミラノ~サンレモ」です。

レースの特徴としては、コース全長が約300kmと全てのワンデーレースの中で最長である事と、コースに大きな起伏が無いためスプリンターに有利な事が挙げられます。

そのため「スプリンターズ・クラシック」とも呼ばれ、このレースで勝利する事はツール・ド・フランスの最終ステージ(シャンゼリゼでのスプリント)での勝利と並びスプリンターにとって最大の目標となっています。

そんな平坦なレイアウトですが、残り約27km地点の「チプレッサ」と残り約9km地点の「ポッジョ・ディ・サンレモ」という、勝負を分ける要因になる起伏が2つあります。

この2か所で集団の絞り込みの為のペースアップや逃げ切りを狙う飛び出しが図られる事が多く、250km以上走ってから迎える勝負所でのアタックは仕掛ける側も対応する側もかなり消耗した状態のため、例年とても見応えのある勝負が繰り広がられます。

フィニッシュ地点でのスプリントと共にレースの見どころと言えるでしょう。

 

ロンド・ファン・フラーンデレン

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・初開催:1913年

・開催時期:3月下旬~4月上旬

・別名:「クラシックの王」

・直近3年の優勝者

 ・2019:アルベルト・ベッティオール(EFエデュケーションファースト)

 ・2018:ニキ・テレプストラ(クイックステップ・フロアーズ)

 ・2017:フィリップ・ジルベールクイックステップ・フロアーズ)

 

フランス語の「ツール・デ・フランドル」という呼び方でも知られるのがこのロンド・ファン・フラーンデレンです。

近年も何度かレイアウトが大きく変更されているこのレースですが、「ミュール(壁の意味)」と呼ばれる激坂と「パヴェ(石畳)」の組み合わせという、とても凶悪で難易度の高いコース設定が特徴です。

単純に登るのも苦労するような急勾配な激坂だけでも大変なのに、舗装路と比べ凹凸が激しい上に滑りやすい石畳となると、その難易度はとても跳ね上がります。

ミュールは道幅がとても狭い部分も多く、集団で突入した結果渋滞を起こしてスピードが落ちてしまい、自転車から降りて押しながら登る場面も毎年のように見られるほどです。

そんな状態で集団の後方にいればあっという間に前方との差が広がってしまうため、ミュール手前での集団内の位置取りはかなり激しく行われます。

現在、特に勝負所として重要な部分としては「クルイスベルグ」「オウデ・クワレモント」「パテルベルグ」の3か所が挙げられ、例年勝負を決定づける動きが発生しています。

ロードレース熱の高いベルギーの中でも特に熱狂的なファンが多い事で有名なフラーンデレン地方最大のレースとあって、勝負所での盛り上がりは画面越しにも伝わってくるほど熱狂的です。

 

パリ~ルーベ

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・初開催:1896年

・開催時期:4月上旬~4月中旬

・別名:「クラシックの女王」又は「北の地獄」

・直近3年の優勝者

 ・2019:フィリップ・ジルベール(ドゥクーニンク・クイックステップ

 ・2018:ペテル・サガン(ボーラ・ハンスグローエ)

 ・2017:グレッグ・ファンアーヴェルマート(BMCレーシングチーム

 

その荒れたパヴェ(石畳)の過酷さから「北の地獄」と恐れられいるのがこの「パリ~ルーベ」です。

約30セクター設定されるパヴェの総延長は約50kmにも及び、凹凸による振動ももちろんですが、その荒れた路面が落車やメカトラブルを誘発して選手たちを苦しめます。

その厳しさは、このパヴェを攻略する為にサスペンションなどの入った専用の自転車を用いるほどです。

各セクターにはそれぞれ難易度が設定されていて、最高難易度である5つ星は「アランベール」「モンサン=ペヴェル」「カルフール・ド・ラルブル」の3か所あり、落車やメカトラブルが多発する最重要ポイントになっています。

勝負を決めるアタックのポイントとしても重要ですが、トラブルに巻き込まれて遅れないかどうかが大きなポイントになるので、ロンド・ファン・フラーンデレンと同様でパヴェ突入前の位置取りがとても大事になってきます。

そして、フィニッシュ地点がヴェロドローム自転車競技場)となっているのも大きな特徴で、集団で最終局面を迎えた場合は、トラック競技さながらのバンク(傾斜)を用いた駆け引きが繰り広げられます。

 

リエージュ~バストーニュ~リエージュ

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・初開催:1892年

・開催時期:4月下旬

・別名:「ラ・ドワイエンヌ(最古参)」

・直近3年の優勝者

 ・2019:ヤコブ・フルサン(アスタナ・プロチーム)

 ・2018:ボブ・ユンゲルス(クイックステップ・フロアーズ)

 ・2017:アレハンドロ・バルベルデ(モビスター・チーム)

 

現存するどのクラシックレースよりも歴史が古く、「ラ・ドワイエンヌ(最古参)」と呼ばれるのがこのリエージュ~バストーニュ~リエージュです。

細かい起伏の多いアルデンヌ地方の「アルデンヌ・クラシック」と呼ばれるレース群の中でも特にアップダウンの連続が厳しく、その総獲得標高は約4000mにもなります。

そのため、パンチャーが活躍する事が多い他のアルデンヌ・クラシックと比べ、クライマーやオールラウンダーが活躍しやすい傾向があります。

2019年のコースレイアウトの変更により、フィニッシュ直前の勝負所だった「コート・ド・ラ・ロッシュ・オ・フォーコン」の登りが残り約15km地点へ移り、残りの区間は平坦な道のりとなりました。

これにより、アルデンヌ・クラシックらしい「最終盤でのアタック合戦」や「小集団でのスプリント」というレース展開ではなく、「残り15kmでの抜け出しによる独走」という展開になりやすいと予想されています(実際、2019年はそういう展開でした)。

また、このレースをもって春のクラシック・シーズンは終了するため、ワンデーレーサーたちがシーズン前半の締めくくりとして臨むレースとなっています。

 

イル・ロンバルディア

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・初開催:1905年

・開催時期:9月下旬~10月上旬

・別名:「クライマーズ・クラシック」又は「落ち葉のクラシック」

・直近3年の優勝者

 ・2019:バウケ・モレマ(トレック・セガフレード

 ・2018:ティボー・ピノ(グルパマ・FDJ)

 ・2017:ヴィンチェンツォ・ニバリ(バーレン・メリダ

 

クラシックらしからぬ厳しい登りが設定されたレイアウトのために「クライマーズ・クラシック」と呼ばれているのがイル・ロンバルディア(旧名ジロ・ディ・ロンバルディア)」です。

その登りの厳しさは総獲得標高が4000mに迫る事にも表れていますが、何といっても激坂「ムーロ・ディ・ソルマーノ(ソルマーノの壁)」の厳しさでしょう。

距離は2km弱と短いながら平均勾配15%以上・最大勾配27%(!)というそのとんでもない傾斜は、「世界で最も過酷な自転車道」「不可能の怪物」等と形容されるほどで、問答無用で弱者を振り落とすとても厳しいものになっています。

ただし、ここでの獲得標高は僅か300mであり、残りの3000m以上の獲得標高は他の部分での登りによるものです。

「ソルマーノの壁をクリアする激坂適正」と「長い距離の登坂をこなすタフなクライミング能力」の両方が求められる、正にクライマーのためのクラシックと言っていいでしょう。

 

1日に懸ける熱量と駆け引き

ワンデーレースに特化した選手を「ワンデーレーサー」や「クラシックスペシャリスト」と呼んだりしますが、モニュメントにはそんな選手の中でも特別に強い選手達が出場して鎬を削り合います。

そんな最高峰の選手達の一発勝負に懸ける熱量と緊張感、そして勝利を掴むための駆け引きとプライドのぶつかり合いは、毎度激熱な展開を生み出してくれます。

一発勝負だからこそ生まれる最高のレース展開を、観る側も熱くなりながら楽しんでいきましょう!

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※コロナウィルスの影響で開催すら危ぶまれた2020年のモニュメントですが、日程を後ろ倒しにする事で開催される予定となっています。

ミラノ~サンレモ:8/8

イル・ロンバルディア:8/15

リエージュ~バストーニュ~リエージュ:10/4

ロンド・ファン・フラーンデレン:10/18

パリ~ルーベ:10/25

本当に開催できるのかどうかまだ不安もありますが、無事開催されることを祈っています。