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【レース感想】ジロ・デ・イタリア2021 第5ステージ

事故は付き物と言えども…

第5ステージは、カテゴリー山岳の存在しないド平坦なスプリンター向けのステージ。

 

この日はフィリッポ・タリアーニ(アンドローニジョカトリ・シデルメク)とウンベルト・マレンゴ(バルディアーニCSF・ファイザネ)の2人がスタート直後に逃げを打ち、メイン集団とのタイム差を最大で5分ほどにまで広げる。

「プロチームの選手による勝つ見込みのない逃げ」という、よくあるスプリントステージの光景と思いきや、残り107km地点にある中間スプリントポイントに向けてメイン集団が加速して、逃げとのギャップが急激に縮まっていく。

なんとか中間ポイントはタリアーニ、マレンゴの順で通過するけれども、直後に2人はメイン集団に飲み込まれ、残り100km以上を残してレースは振り出しに戻るという意外な展開に。

 

しばらくはそのまま「逃げがいない」状態でレースが進行していたけれども、残り70kmを切った辺りでシモン・ペロー(アンドローニジョカトリ・シデルメク)とダヴィデ・ガッブロ(バルディアーニCSF・ファイザネ)の2人が飛び出して、新たな逃げを形成。

ただ、メイン集団にあまり大きなタイム差を付けることは無く(最大で1分強)、残り22km辺りでアレクシー・グジャール(AG2Rシトロエン)が加わって3人での逃げになるものの、スプリントを狙うチームの牽引でペースを上げるメイン集団はすぐ後ろに迫ってきている。

 

スプリントに向けたペースアップと位置取り争いによって緊張が高まるメイン集団で、起こって欲しくなかったトラブルが連続で発生してしまう。

残り15.8km辺り、集団の前方でオフィシャルモトから「スピードを落とせ」という指示があった直後、前方が詰まってしまい行き場を失うような形となったパヴェル・シヴァコフ(イネオス・グレナディアーズ)が落車。

シヴァコフはなんとかレースに復帰するけれども、レース後の検査で鎖骨を骨折していたことが判明してリタイアとなってしまい、イネオスはセカンドエース兼山岳アシストという重要な駒を失う事に。

 

更に、残り5kmを切った辺り、中央分離帯付近で複数の選手が激しく落車。

前日の第4ステージで勝利してマリア・アッズーラを着用するジョセフロイド・ドンブロウスキー(UAEチーム・エミレーツ)、そしてバーレーン・ビクトリアスのエースであるミケル・ランダが倒れている…!?

ランダは立ち上がる事すらできないほどのダメージを負ってしまい、そのまま救急車で搬送されてもちろんリタイア、ドンブロウスキーはなんとかフィニッシュまでは走るも、レース後に脳震盪と診断されてやはりリタイアとなってしまった。

ランダは前日のステージでの登坂で調子のいい様子を見せていて、総合表彰台も十分狙えるように思っていただけに、本当に残念としか言いようがない…。

レースに落車は付き物かもしれないけれども、この先はできるだけ落車が起きない事を願いたい…。

 

逃げを残り3kmで吸収したメイン集団は、連続する直角コーナーを抜けて残すは約1kmの直線のみ。

残り500m、コフィディスのトレインがエースのエリア・ヴィヴィアーニを前方まで引き上げて、残り200mを切るとヴィヴィアーニが発射!

しかし、その反対側から単身で位置を上げてきたジャコモ・ニッツォーロ(チーム・クベカ・アソス)が勢いよく駆け上がり、すぐさまヴィヴィアーニから先頭を奪う!

ニッツォーロが先頭に立ったと思ったその瞬間、ヴィヴィアーニの背後に上手く隠れていたカレブ・ユアン(ロット・スーダル)がもの凄い勢い(そしてもの凄い軌道!)で飛び出して、前を行く2人のイタリア人を一気に抜き去る!!

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圧倒的な加速力でぶち抜いて行ったユアン、渾身のガッツポーズ!!

ユアンの「吠える」ガッツポーズ、相変わらずカッコいい~!

大事なところまでしっかり「隠れる」上手さ、そして好機と見るや一気に飛び出す爆発的な加速力と自由自在な軌道は、やはり現役随一のスプリンターであると改めて証明してくれた!

…と言うか、純粋なスプリント力では「世界一」と言っていいと、個人的には思っている。

ここまで、マリア・チクラミーノに興味を示していない(つまり、ツール・ド・フランスへの調整を優先してジロを途中リタイアする可能性が高い)ユアンだけれども、残りのステージで一体何勝するのか楽しみだ!